第2話.教えと誓い
「僕はこうして蘇った」そして、諒が、第一の力『神通力』を理解し使えるようになる経緯を描きました!
会話がコメディー感満載の第2話。どうぞごゆっくりお楽しみください。
僕は生まれ変わった。それも、神様の力を持つ者に。
僕はあの後、3階にある入院者が使う病室の、テーブル付き3モーターベッドの上で目を覚ましたようだ。医者が言うには昏睡状態だったそうだ。
手足には擦り傷が意識は少しあったものの頭部からの出血がひどく死んでしまうのではと思われていたが、話とその時の僕の状態を推測してみるに、スサノオのおじさん達と話している間に出血が止まり、誰かと話しているかのように口をパクパクと開いていたという事だった。
恐らくあの時、何か特別な処置をして生き返らせてくれたんだと思う。
左肩が若木骨折だけで済み、2週間ほどの入院をしてもらうとの頼みがあったので、家族に下着や勉強道具などを持ってきてもらう事にした。広さは見た感じだと
「……はぁっ……神の力か」
スサノオのおじさんは神通力を僕に使ってきたよな?
だったら今の僕は力を使って同じ様なことができるはず。
夢じゃなければ。
「うっしゃ! やってみるか。でも、どうやってするんだろう」
受ける側の体験はしてるが、送る側はまだしたことがない。
ここは、スサノオのおじさんに手助けをもらうとするが、やり方がわからなければ当然会話することができない。一体どうすれば……
「お困りのようだな、坊主」
突然頭の中に、整った容姿を想像させるようなハリのある男性の声が響く。
「誰ですか、あなたは」
「じじい呼ばわりされたスサノオですが何か?」
「えっ」
老人特有のさびた声ではなくなったスサノオのおじさんに困惑してると、それに気づいたのか詳しく自分について話してくれる。
「お主が困惑するのも無理はない。若さが戻れば……と話したが、一応あれは人間の世界に行くときの姿である。本来は人間でいうところの20代前半の体で活動しているから、今後はスサノオさんとかスサお兄ちゃんとでも呼んでくれっ!」
「……あ、はい。それでですね」
「ガン無視っ!」
スサノオの後半部分は聞かなかったことにして、話を続ける。
「僕、神通力を使えるようになりたいんですっ! だから、教えてもらいたくて」
「お主何を言っている? もうすでに使っているではないか」
「えっと…… どういうことでしょうか?」
「お主が発言しているのはどこだ?」
「どこって……ん?」
僕は頭の中で会話している。それは相手も同じ。
つまりは、意思疎通ということか。
「そういうことだな。そして、神通力を発動することは相手の思考を読むことでもある。先を読むってところだな。使い方は、まず相手の顔をしっかりと目に焼き付けることから始める。そうすることで力を使う方向を間違わない。そして、自分の意識を相手に向ける。」
「意識を向けるって?」
「……それを口で説明するのはいいが、分からなければ自分で何とかしろよ?」
「はい」
それから十数分程、話を聞いた。
『意識を向ける』
それは、体を一切動かさないで出来る行為であり、この場合は相手に流れる気という不可視なものを自分の意識、つまり自分の気で感じ取る。
感じ方は人によって違うようだが、だが僕は正確には人ではない。神の力を持ち、人間として生きる者。
謂わば日本のヘラクレスといったところだ。
そして神の力を持つ場合は、視覚情報に黄色で、人間の体を包み込むモノとして映り込むようだ。この気の力が強いほど体は健康な状態であり、弱いほど不健康な状態であるという事。体力に比例して変わってくるようだ。
その力を利用し、いろんな術を使ったりする人間がいることも補足として教わった。
――成程。これは面白い力だな。
「念のために伝えておくが、悪用するなよ。我は言ったからな」
スサノオの忠告をしっかりと聞き、僕は分かったと答える。そこで会話は終わった。
まだ、親が物を持ってきてくれるまで時間がある。右利きな自分にとっては何かを書いたり、食べたりすることには支障はないが、例えば本を読むときに風で紙がバサッと捲れた時に戻そうとすると、更に風が吹いてメンドクサイことになるのがすごく嫌だ。
「入院している間、勉強するのもいいけど神の力について学ぶのもいいかな……」
誰もいない病室の中でポツンと呟く。
自分ひとりなのは寂しいし、とてもつらいが、その分の時間を何かで紛らわすことが今の僕にできること。
神通力のほかに何かいいものはないかと考慮しているところ、部屋の外から何者かに見られているような気がした。……いや、気がしているのではなく確実に見られている。
起き上がろうとするも、金縛りがかかったような体の重みがそんなことをさせないといわんばかりに圧をかける。
僕は事故で死にかけたんだ。しばらく動けなくても無理はない。
外を確認することもできず、結局あれは何なのか理解できずそのままで
外は日が沈み始めており、部屋の温度は少しずつ冷え始めていた。
学校の給食のような晩ごはんが届き、ベッドの頭部分にあるリモコンを使って背上げを行い、ゆっくりと咀嚼し今日を振り返る。
思い返すと、一日が面白く、充実して過ごせたのではないかと感じた。
異世界に転生することはなく、チート級の力を持つ人間としてこの地に生き、僕をこんな目に合わせた奴を、徹底的に処置して報告すること。
それが僕にとって一番しなければならないこと。
晩御飯を食べ終わり、ベッドを元に戻す。少し時間が経つと回収をする人が部屋に入ってきた。
将来の夢を叶えるために勉強しつつ、力を使いこなすために己の鍛錬もする。
そう胸に誓って目を閉じた。