暴風少女
今日1日は、本当に大変だった。有栖川がこんな滅茶苦茶なやつだったとは思わなかった…
あいつのおかげで授業が1日何も進まなかった。そこはありがたく思おう!
「…そう言えば篠原は?」
「ああ、たぶん保健室だろ。あいついっつもHRギリギリに来るから。騒ぎで存在が埋もれてたな。そして授業の途中からいなくなった」
じゃあ、行くしかないか。昨日手伝うって行ったし!とりあえず顔だけでも見に行こう。
…
「ここに来たってことは分かってるのよね」
「えっと…はい!協力致します!!」
「違う」
足を揃えて保健室のパイプ椅子に座る篠原は、まるで白衣を来たサディストにも見えた。
「あの転校生…有栖川美綛の能力よ」
「「能力!?」」
「気づいてなかったの?虎石くんも反応してたじゃない」
「え?虎石と何の接点が!?」
これは衝撃だった。え?知り合いなのか?サボり魔同士?てか、虎石って一体何者だ?
「…まだ言って無かったわね。生徒会についての」
ガラガラッ
「話は聞かせてもらったわ…」
急に開いたと思ったら、壁に寄りかかっている有栖川がまるで探偵風に言った。
「1回リアルで言ってみたかったのよねー!」
その瞬間、有栖川の顔つきがぱっと入れ替わる。
「…さて、この魔法のような能力を知っている人間がいるなんて」
Aliceの真剣な表情に、保健室にいる全員が息を呑む。まるで敵意むき出しで威嚇をしているような目でこっちを見た。
こいつ、やる気か?
「…この力について教えて貰おうかしら!」
…
「さ、流石ハリウッド女優…」
俺の一言に全員が息をついた。
有栖川はニコニコに変わったが、大智は白目を向いてるし、篠原はまったくの無表情で有栖川を見つめていた。
「あなたも、魔法使いなのね。歓迎するわ」
「うんうん!やっぱり知ってたのね。盗み聞きして良かった!便利だけど、不思議だったの!」
そうして篠原は、俺たちにしたこととまったく同じ説明をした。
マニュアルでもあるのかと思うほど同じ説明だった。
「うーん、それにしても、なんで篠原は有栖川の魔法に気づけたんだ?」
「そうね、それは大智くんも分かると思うけど」
「俺ぇ!?…記憶にございません」
「じゃあ、とりあえず有栖川さん、ここで魔法を使ってみせて」
「美綛、でオッケーよ?」
「有栖川さん、この人達に見せてあげて」
この馴れ合いにくさには、さすがの有栖川も1回黙った。それでもめげていなさそうだ。
「わかった!見せてあげるよ、わたしの魔法」
すると、大智が一応持ってきた砂の入った袋が突風によって突然空中へ巻き上げられた!
風だ。痛いほどに鋭い風が俺の頬の横を通った。
そして、虚しく中の土は大地の周りに降り積もった。
「ぶっ」
「テメエ…笑ってんじゃねえ…」
「篠原くん、片付けておいてね」
「はい…」
「さて、どうかしら?これがわたしの魔法。風を自由自在に操れるの」
「これでも見覚えないかしら?篠原くん」
涙目で土を操っている篠原は、相変わらず頭にハテナを出している。
「もー!じゃあ正解言っちゃうわよ!」
有栖川がビシッと大智に指を指す。
すると、風が大智を襲う。
その拍子に大智は驚いて浮かべた土を落としていた。
「あ゛ーーーー!!」
「思い出したのね、篠原くん。昨日のあなたが見たひとつだけ揺れるブランコの正体は有栖川さんよ」
いやいや、今のは土を落としたショックの叫び声で分かってないだろ絶対!
それでも大智は、わかったフリをして話を続けた。
「え!?なんでその事知ってんだ、未鈴ちゃん!?」
「私も現場に居たからよ」
ストレートで最もわかりやすい。
「あー、いたと言えば、教室にいたでかいやつもいた気がするわよ?あはは!3人もあたしの無差別恐怖ハザードに引っかかるなんてね!」
「驚いてたのは大智だけだけどな」
大地がくっそおと、こっちを見て睨んできたから笑い返した。こいつ、マジで怖いのかな?ちょっと気になってきた。
虎石の件も、俺たちは自然と納得した。
◆
「風に強い心を抱いた時?うーん、最近?」
「あー、そう言えば家族で旅行に行ったのよ!外国にね」
「そうしたら、あたし初めて見たわ。スーパーセルっていうの!?」
「心臓が止まるかと思った!」
「今思えば、それからかしらね。日本に戻って、高いところにあるものを落ちてほしいって思ったの、そしたら急に風が吹いて」
「それが落ちてきた!」
「そう、あのスーパーセルが始まり」
皆さんご観覧どうもありがとうございます。
有栖川さんは中々お気に入りのキャラだったのでやっと登場させることが出来てほっとしています。
これからもよろしくお願いします!