美少女
「おいおいおーい!大変だ!聞いてくれ!!事件事件!!」
次の日の朝、なんでか大智の大声で目が覚めた。
「うわああ!!俺ん家に上がり込むのマジでやめろ!」
「親公認だぜ?」
部屋の外で母さんがピースしてる。何してくれてんだ!
「それよりやべえよ!手前公園あるだろ?そこで昨日の帰りさ!」
それにしても、昨日の最後の蔵野の笑顔は不意打ちだった。初めて見たし。
「そしたらそこにあるブランコが!!片方だけ揺れてんの!!」
でもその瞬間魔法で保健室まで飛ばされたから、学校サボったのバレないように遠回りして帰ったんだった。
「俺、なんか霊に囲まれてる気がしてさ!怖くて走って逃げちゃった!」
保健室からの夕日は綺麗だった。
昨日は半分蔵野に怯えながら登校したけど、友達になれたっぽいしもう大丈夫だな!
「よし、準備完了!張り切って学校に行こう!!」
「創!!聞いてねえだろ!!」
◇
教室につくと、俺たち二人はいきなり委員長に詰め寄られた。
「創くん!昨日は急に早退して、大丈夫だった?」
委員長とは前一緒のクラスで、名前は山本勇樹。見た目は完全な脳筋なのに勉強しかできない人間だ。
うんうん、俺と同類だな!
そして面倒見と人柄が良く、みんなに好かれている。
「あと、篠原くんだっけ。はじめまして。」
「おー、よろしく!大智でいいぜ」
ガラガラ
「…あ!虎石くんおはよう」
うおっ
教室に入ってきたのは、入学式の日に見た例の大男だった。
虎石、って言うのか。こいつが入ってきて空気が変わったのに、委員長だけは変わらないあいさつをした。
「…」
「あいつどっかで…?まあ委員長、いつかは心開いてくれると思うぜ」
「ありがとう…大智くん」
ガラガラッッ
続けて、教卓側の扉が大きく開かれる音がした。
「こらー!先に行くんじゃない!始業のチャイムまで待たんか!あとなんだその服装はー!!!」
「あら?いいのよ!最終的にどうせ会うんだから」
周りがざわめき始める。
悲鳴をあげる者もいた。
そしてその女がスラリと細く長い足を動かし、教卓に立った。
「初めましてーー、有栖川美綛よん!」
その風貌は、とんでもなく綺麗な顔に、大きなリボンを付けた金髪。黒インナーが丸見えの胸元が空いたシャツ、リボンも付けずにブレザーを羽織り、長いネックレスを付けている。
…おそらく学園史上最短のスカートを履いて…
そう、この女は、現在失踪中のハズだった超スーパーアイドル兼モデル兼女優のーー
『Alice』だ。
「うっ、うおおおおおおおおおおおおお!!」
大智から聞いたこともない声が上がる。
教室が今までにないくらい盛り上がっている。あの虎石さえも、驚きで目を見開いているほどだ。
「大智、録画してたもんな、ファンだったのか?」
「おお!!おおおお!おお!」
「会話出来なくなってる!?」
「おお…、この前テレビの再放送見てから、めっちゃ好き!!一目惚れ!曲とか知らねえけど!」
「そこは聞いとけよ!」
先生は呆れ返っているが、その頬は赤かった。『Alice』は満足そうに胸をはっている。
有栖川が本名なのか…なるほど、わかりやすい。
◇
授業中、というか授業はAliceトークで3時間連続で潰れている。
隣の大智から紙が回ってきた。
お前、どっち派?
返信を返す。
足です
すると、また返信が帰ってきた。
俺も
そこで俺達は、一時の強い友情を感じた。
紙はシュレッダーにかけて捨てた。
ご観覧ありがとうございます!
この女の子は、有栖川美綛ちゃんです。
きっと貧乳ですよ。
そしてクラス委員長は山本勇樹くんです。
今後ともよろしくおねがいします!