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カミラギ・ゼロ~神螺儀・零~  作者: Sin権現坂昇神
第一章 邂逅-かいこう-一番
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第9話 衣野 昂-コロモヤコウ-

衣野昂の企みは加速する。学校を支配するには、最も学校を悩ます根を自分の組織が摘みとらなくてはならない。そうすれば学校中が自分を称賛し、そして従順となるだろう・・・・彼の計画はどうなるだろう。

「やっと君も、僕らの仲間になりに来たかい?」

「・・・」


 犬太が今いる場所は、神螺(かみら)()小学校(しょうがっこう)のグラウンド場の中心部。時間は深夜(しんや)零時(れいじ)()ぎた。服はさらにボロボロに破け、体中には拷問(ごうもん)された痕跡(こんせき)(いた)る所に見える。この傷は明らかに無防備な犬太を集団で暴行した傷である。



挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)

犬太は一十三を病院送りにした主犯として、緊急(きんきゅう)の教員会議にかけられた。十分程度の一方的な決めつけにより、大原(おおばる)(けん)()は『(さくら)一十三(ひとみ)を学校外で暴行し、そのまま病院送りにした』ということに決定、動機は『新人いじめ』となった。

そして犬太の処分は『体育館の真ん中で、犬太の体をマットでぐるぐる巻きにした状態で、(なわ)天井(てんじょう)から宙吊(ちゅうづ)りした上で、更に『ごめんなさい』を百万回言うまで解放することを許さない』とのことだった。周りの人が犬太に何をしようが何の(つみ)もないことも追加した。ご飯は()げたパンを無理やり口に入れられ、トイレは下に無造作(むぞうさ)に置いてある洗面器に()れ流す。

まさに学校総出で行われる集団(しゅうだん)虐待(ぎゃくたい)である。

だがそれを非難する者はいない。いたとしても無視を決め込むしかない。もし犬太の味方だと(わか)れば、自分が二人目の犬太として同じ(ばつ)を受けるだろう。どんなに犬太を理解している人がいても、数が少なくてはそこに正義はない。正義は多い方にしか(かたむ)くことはないのだ。それがどんなに間違っていることでも同じことである。確かに犬太によって悲しいことになった人もいた。だが逆に助けられた人がいるのもまた事実。一十三もその一人だ。だが一十三以外の多くはそれを知らないし、知ろうともしなかった。


犬太は一十三を病院に送った後、複数の教員らに捕まり、午後四時からずっと宙吊りにされていた。犬太はどうせすぐ()めるだろうと思い、ぐっすりと宙吊り状態で気持ちよく眠っていた。だが犬太は翌日(よくじつ)の朝八時頃に目を覚ますと、(うわさ)を聞きつけた生徒や教員達が犬太の周りを取り囲んでいた。犬太は周りを見渡(みわた)して、最後に窓越(まどご)しに光り輝く太陽を見つめていた。そして一日中入れ替わり立ち代り、度重(たびかさ)なる暴行を受け、いつの間にか気を失っていた。


そしてすっきりした生徒達、教員達が消えると夜六時になっていた。犬太の(かた)から下はマットで(しば)られていて無傷だったが、顔は痛々(いたいた)しく側面が赤く(ただ)れ、目の周りの打撲(だぼく)(あと)が大きく()れ上がり、手の付けられないほどの大怪我(おおけが)を負った。こうなったのは言わずもがな神螺儀町にいる犬太嫌いか、ストレスの()け口か、(おも)(しろ)半分(はんぶん)か・・・思惑(おもわく)は様々であるが、(ろく)に調べもせず一方的な尺度で、教師が一番守らなければいけない生徒を傷物にし、(さら)には(さら)(もの)にするという行為(こうい)(とう)底許(ていゆる)されることではない。


犬太が(ようや)く目を覚ましたのは午後八時頃。ふと下を見ると、汚い字で『挑戦状(ちょうせんじょう)』と書かれた封筒(ふうとう)が無造作に置かれていた。

「!」

 犬太は意識がはっきりし出すと、異様な(にお)いが体育館中を支配していた。その(みなもと)は明らかに自分が出した排泄物(はいせつぶつ)であることは周知の事実であった。自分のあれ(・・)がここまで(くさ)いとは思わなかった犬太は(しばら)()せた。そしてやっとの思いで(にお)いに慣れ始めた頃、この宙吊り状態から脱出するために、更に一時間ほど体を(へび)の様にくねくねさせながら暴れた。犬太の日々(ひび)(きた)え上げられた肉体にとって、今の状態はそれほど難しくはなかった。

 そして時計の短針が九時を回る前にマットは(はじ)け飛び、犬太はそのまま汚物(おぶつ)の入った洗面器に落ちるところだったが、野生の反射神経を使い、(すん)でのところで前の方へ転がった。

「・・・これは」

 丁度落ちたところに挑戦状が置かれていたため、最初に目が入った。中を開くと、


〝明日、この神螺儀小を襲撃(しゅうげき)する!

神螺(かみら)()(しょう)を救いたければ一人で今日の深夜零時に

神螺儀小のグラウンドで待っている!

もし俺達の仲間になりたければ申し出よ!

                     恋の暴走ライダー不知火(しらぬい)より〟


 太くて汚い字。初め何を書いているのか理解不能だったが、犬太はこの字を知っていた。

「あいつらか」

 この文字の主は、今まで戦ってきたいじめの主犯(しゅはん)(かく)であり、この神螺儀小を牛耳(ぎゅうじ)る暴力集団【恋の暴走ライダー不知火】であった。『不知火』という字は、漢字が気に入ったので調べずにつけたらしい(子分談(こぶんだん))。学校の大体の悪行(あくぎょう)は、最近まで恋の暴走ライダー不知火が行っていた。そして犬太が神螺儀小学校に来たと同じ頃に、新たなるリーダーが誕生した。

挿絵(By みてみん)

名は【(ころも)()(こう)十一歳(じゅういちさい)、大企業の御曹司(おんぞうし)であり、父親の命令で神螺儀小にやってきた。



〝お前の(ちから)で、あの学校を支配(しはい)して見せろ〟


 父親が(こう)に命じた言葉である。昂はまず金の力で教師を先導し、【恋の暴走ライダー不知火】をこの学校の慈善(じぜん)活動隊(かつどうたい)ということにして、今までの悪行、そしてこれから行う悪行全てを、犬太一人に全て押し付けるという作戦だ。もし逆らえばどうなるかを、最初に学校全員を体育館に呼び出し、一人の女子生徒【(かわ)志野(しの)(いがみ)】八歳を、目の前で公開処刑(火炙(ひあぶ)りの刑)して見せた。これにより昂に逆らう者は誰一人いなくなり、その日から昂は父親の命令通りに、着実に学校を支配していくことになった。

 だが、犬太は(あらが)い続けた。最初に学校にやってきて、周りの皆が自分をまるで犯罪者を見るような目で(にら)みつけて、誰も寄り付こうともしない。初めは初対面だからだろうと思ったが、昂が直接犬太に言ったことで気づいた。

「君が僕の影武者(かげむしゃ)になってくれ。これは命令だ」

 昂にとって犬太は掃除機(そうじき)だ。都合(つごう)の悪いことはどんな場所でも、何でも吸い取ってくれる。だが、犬太は・・・

「無理だ。とっとと消えろ、(くず)が」

 昂が生まれて初めて悪口を言われた瞬間(しゅんかん)であった。初めての受けた屈辱(くつじょく)に、昂は初めて殺意を覚えた。今まで待ち望んでいた感情が、ようやく自分に根付いたことが、どれほど昂を興奮(こうふん)させただろうか。

その日から昂と犬太の壮絶(そうぜつ)な争いが始まったのだった。



そして今、一十三が転入してきたことで、昂は犬太の次に一十三を(ねら)おうと画策した。もう昂も五年生だ。自分を知らない生徒の割合が必然的に多くなった。それからからもう一度、公開処刑を始めようと適任者を探していた。そして都合よく現れた一十三を見て確信した。「こいつしかいない」・・・と。

 犬太は昂の(たくら)みをいち早く察知し、昂が狙うよりも先に、一十三を自分の近い場所で守ろうとした。そして偶然一十三が屋上に来て犬太と出会ったことで、自然と一十三と犬太の空間が出来た。昂がどう動こうが、犬太の存在により一十三を奪取(だっしゅ)することが出来なかった。昂は次はどの作戦で一十三を手に入れようと考えていたその最中(さなか)、犬太が一十三を保健室送りにした事を聞いて、昂はある作戦を(ひらめ)いた。


(この時を待っていた。利用できるのは今しかない!)


 そして犬太を的にして学校に閉じ込め、一十三がそれを見て一人でここに来るだろうと考えた。

 犬太は手紙を見て直感でそれを見抜(みぬ)いた。いつも昂と戦う中で、昂の考えていることが自然と頭に入っていった。そして今回。また関係のないやつが犠牲(ぎせい)になろうとしている。

「・・・(だれ)があいつの思い通りにさせるか・・・・!」

 犬太は手紙を握り(つぶ)すと、手紙の言う通りに走り出した。




・・・そしてグラウンド場。

 犬太が着いた時には、(すで)(こう)(ふく)めた大勢の集団が専用の服を着用し、バールのようなバットを(たずさ)え、一十三を今か今かと待ち構えていた。

「やあ、やっと僕らの仲間になりたくなった?」

 長時間宙吊りにされ、顔に多大なる攻撃を受けた犬太。ここまで辿(たど)り着くに至って、どれだけ蹌踉(よろ)めき転げ落ちてきたことか。体に蓄積(ちくせき)されたダメージを必死に(おさ)えてやってきた犬太は、今や満身(まんしん)創痍(そうい)であった。だが自分の体よりも怒りに満ちた眼光で昂を睨みつけると、自分の体を意地(いじ)()き動かして()き捨てるように言った。

「・・・うっせえ・・・・・さっさと用事済ませグハッ」

 言い終わる前に、瞬時(しゅんじ)に犬太に近づき、溝内(みぞうち)を一発食らわした昂。

「君の意見なんか聞く気ないんだよ。君は(おとり)なんだよ。君は!」

 昂は犬太の腕を(つか)むと、犬太を自分の目線まで持ち上げた。昂の(くちびる)から血が流れていた。昂にとって犬太は唇を()()()るほど(にく)い存在なのだろう。だが犬太もそれに対抗(たいこう)するかのように昂に笑いかけた。それを見た昂は周りの連中に命令した。

「おい、遊んでやれ」

「「「「「はい!」」」」」

 昂の声の(もと)一斉(いっせい)奮起(ふんき)した集団は、全員で犬太に(おそ)い掛かった。

 そして昂の主導の下、集団暴行が始まった。

絶体絶命の中、犬太はどうする?昂の思惑通り犬太は死んでしまうのか?犬太でさえ倒せない大量の下僕を操る昂の統率力をどう掻い潜るか。

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