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カミラギ・ゼロ~神螺儀・零~  作者: Sin権現坂昇神
第三章 教師妖怪大決戦
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第ⅵ話 二人目、河童 前篇

二人目のターゲットは河童。そして別行動をとった舞が出会った相手とは……

「ぜえぜえ、はあはあ……」


現在、浩司(こうじ)たちは和子の案内の下、()てのない道を歩いていた。座敷童・和子(わこ)の嘆願にかかった時間は約三時間。その内一時間は温泉で残りはほとんど説教だったのだが。和子が知っているという誰かがいる場所はここからでは遥かに遠いらしく、自称神様・柘榴(ざくろ)の力を使って距離を一気に縮めることにした。

技名は【竹祝詞(たけのりと)欠欠直近(かくかくじかぢか)】。道を凝縮、どんなに遠くても数歩歩くだけで辿り着くことができる。しかし問題が一つ。道を無理やり凝縮させたことにより、高低差が極度に激しくなり、もし富士山やヒマラヤ山脈などの山を渡る時は、ゼロから真上の山頂へ、そこから真下の谷底へ降りることになる。距離が遠くければ遠いほど、距離間の高低差が激しければ激しいほど、浩司たちは地獄のロッククライミングで登っていかなくてはいけないのである。

人間業ではない。神様といわれる柘榴のなせる業である。人間の浩司は無我夢中で凝縮された道をせっせと上る。


「浩司少年よ、もう根を上げたのか」

 

和子(わこ)は浩司の金で買ってきた苺大福(いちごだいふく)(十個入り)を両手いっぱいに持って美味しそうに食べながら、傾斜角九十度レベル山を忍者のように飛び跳ねていく。一方和子の傍では、


「君はもう少し体力をつける努力をしたらどうだい、ハムハム美味い」

 

柘榴(ざくろ)が一緒に苺大福を頬張(ほおば)りながら、初めて食べるとのことで和子の倍の大福を両手に持っていた。柘榴の方は竹馬とサンダルを合体させたような靴「竹ダル」を()くことで、底の竹がバネのように衝撃を和らげ、飛ぶことなくスムーズな歩行を可能にしている。浩司は零れ落ちそうになるお菓子を美味しそうに食べる二人を見ると、本当に自分より何百倍も年上なのかと疑心を抱いてしまう。が、二人の絶壁をいとも容易く人間離れしたジャンプ力を見て、やっぱり人間ではないのだろうという気持ちが段々と大きくなっているのもまた事実。

浩司は辛そうな体を無理やり起こしながら言葉を(こぼ)す。


「いや……あんたらどんだけ凄いんだよ」

「あたいは(うれ)いているよ。最近の成人男子は貧弱すぎて。もっと鍛えんとな」

「いっぱい食べて、いっぱい働いて、いっぱい寝る。これが生き物の大切にしなきゃいけない三つの(ことわり)さ。……ねえ聞いてるかい?」


 ちらりと浩司を(うかが)いながら、少女二人は(あわれ)みの目を向けて言った。座敷童の和子の背中には(せい)がすやすやと眠っている。和子のジャンプは正にとって丁度いい心地よさなのだろう。

 それを他所に、浩司の疲労は限界をとうの昔に超えていた。浩司の意識は既に薄くなっており、足元が覚束(おぼつか)なくなってきている。このままではいつ転倒してもおかしくない。一度でも転倒すれば、どこかも解らぬ山の谷間へ真っ逆さまに――

 ゴキっ。浩司の右足首が生きよく(ひね)った。浩司の映る世界がぐるりと回転を始める。何故だろうか、元に戻る気力すら残されていない。

 そんな浩司の異変に気が付いたのは、和子であった。人間の限界を山ほど知っている和子は、いつ浩司が倒れるかと腹の底では心配していたのだ。そして、それは起きた。

 

「! ……おい、ちょっと待て」


 柘榴の掛け声とともに、和子が浩司の元へ駆けつける。だが遅い。浩司の転倒する地点はまさしく谷底ブラックホール。浩司はその谷の中へと吸い込まれていくのが解る。


「ここで落ちるな、死ぬぞ少年!」


 浩司は崩れ行く己をどうすれば戻せるかと考えた。だが、意識の低迷により思考力が格段に落ちる中、浩司はなんかもうどうでもいいや……と思うようになっていた。ここで死んだらどうなるか、正はどうなるか、(つよし)犬時(けんじ)はどうなるのか。浩司が当然として考えていた思考が欠けていく。ああ、もう世界が完全に真っ逆さまになってしまった。そうか、俺は落下しているのか……。浩司は死を悟った。

すると、浩司の手に柔らかい感触が伝わる。


「死ぬな少年! 大福あげるから!」


右手を掴んで必死の叫ぶ声は、和子だと解った。だが大福は別に浩司の好物ではない。和子が優しく大福をもう片方の手で渡そうとするが、浩司の気力を蘇らせることは叶わない。次いで柘榴も、左手を掴んで叫ぶ。


「大福十個でどうだ!」


いやだから……と、浩司は薄れゆく心の声を出そうとした。その瞬間。和子が更に続けた。


「正はどうする少年! 無駄死には許さんぞ」


和子は渾身の力で浩司を引っ張り上げると、柘榴も負けじと「和子には負けないよ!」といつしか柘榴と和子の綱引き対決となって、最終的に浩司を引き上げることに成功した。


浩司は助けられた。まあ大まかな原因は、人間である浩司が欠欠直近に対応できないことを念頭に置いていなかったことが問題であるが。体力の尽きた浩司に残りの大福と近くにあった飲み水を飲ませて復活させると、和子は正を、柘榴が浩司を引っ張っていく形で目的地に向かうことになった。






 その頃、和子に大切な炬燵(こたつ)を預けてほしいとの頼みを聞き入れた無意(むい)加舞(かまい)は、いつまでも降り続けるどこかの雪山に住んでいる雪女に会っていた。人気のない雪山で『かまくら(雪で作られた(かまど)型の家)』を作って、その中に隠れ住んでいるとの噂だったが、本当だったようだ。舞は長靴を履いたにもかかわらず、すっぽりと長靴を埋める積雪を何とか歩ききると、入口の戸を叩く。そこからひょっこりと柘榴より一センチほど高い少女が顔を出した。


「これが伝説の……」

「はい、これがあの座敷童子【彼岸歠(ひがんの)和子(わこ)】様の母【彼岸歠(ひがんの)眞子(まこ)】様の炬燵ですわ」


 雪のように白い髪をハリネズミのように左右に伸ばした少女は、羨望(せんぼう)の眼差しで炬燵を眺めている。雪女は(えり)(そで)がびりびりと破けたワンピースをいつも着ていて、魚が死んだような二重の目が元気のなさを(うかが)わせる。名前はまだない。雪女はかまくらの中で何百年も暮らしており、ゲーム好きな彼女は常日頃からゆったりと(くつろ)げる机が欲しい。という呟きを富士山に住む妖怪方から聞いていた舞は、和子の頼みに快く応じたのである。一応一旦預けるということなので、また取りに行くかもしれない旨を伝えると、雪女は別に構わないと答えた。

そういうわけで、雪女は炬燵を抱えると、舞と一緒にお気に入りの位置まで移動させ、炬燵の電源を付ける。そして炬燵の中に入ると……、


「ほぉおー!」


恍惚(こうこつ)な声を上げたのだった。改めて舞にぎこちないお礼をすると、舞と和子にぴったりのゲームソフトを渡した。お礼ということで、舞は笑顔で受け取った。雪女がリズムカルに鼻歌を奏で始める頃合いを見計らい、舞は玄関先にてこう告げた。


「感想も是非お(おし)えくださいませ!」

「うんうん!」


 と興奮気味に雪女が手を振ってくれた。舞は笑顔で手を振り返してかまくらを後にすると、ふと神社のとある在庫が足りないことを思い出した。


「今のうちに買っておきましょうか。柘榴様の大好物『果物入りバームクーヘン』がこの近くに出店しているはずですから……」


 そうと決まれば……と、舞は雪山での疲労を忘れてデザート店に足を運ぶのであった。






雪女の住む雪山から少し離れた盆地には、町一番のデザート店が存在する。普通のバームクーヘンに、果物の風味を加えた『特製パウダー』をかけただけで一つ五百円もするといわれる高級品だ。柘榴は最近それが大好きになり、舞にいつもせがんで買わせるのだ。その果物風味バームクーヘンのある『春風スイート』という店は五年前に開いていた。そして開店初日に爆発的に人気になって、各地に次々と春風スイートが誕生した。そしてこの雪山近くにある店がまさしく本店である。

雪山を下りると、すっかり人が支配する世界に迷い込んだ気持ちになる。雪山の静けさとは違い、この春風町は人の会話が絶えることがない。舞にとっては安心するが、それとは別に自分が住む神螺(かみら)()神社(じんじゃ)が恋しくなる。あの静けさと柘榴の存在は今の舞にとってかけがえのない日常なのだ。疲れた体を自販機で買ったミネラルウォーターで満たしつつ、手乗り扇風機で蒸れた巫女服の中の汗を少しでも冷ます。暑くなった体を冷たい風が柔肌を通り抜けるたびに、舞は歓喜の声を上げた。


(今どうしているでしょうか……柘榴様は……)


舞はそんなことを想いながら歩いていると、ふと前方に見覚えのある着ぐるみが行列に居並んだ客たちを先導している。あれは春風スイートのマスコットキャラクター『バ~ム君』である。ということはもう店はすぐそこだ。早めに買いに行って神社に持って帰らなければ……と、舞はつい小走りになった。その時、ボンっと何かに肩がぶつかった。舞が咄嗟(とっさ)に後ろを振り返る。


「ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 

感触はそこまで痛くはなかったが、ぶつかった拍子に相手のバックの中身が飛び出してしまった。相手は彼岸花柄の着物を着たご婦人のようだ。麦わら帽子がとてもベストマッチしている。ご婦人らしき人も「すみません!」と(あせ)った様子で落ちたバックの中身を急いで拾い始める。舞も一緒に拾おうとした。その時、


「あ」

 

婦人らしき人が袋詰めの四角い箱に手を伸ばそうとした瞬間、小さな手が先に箱に触れていた。四歳くらいの小さな男の子はひょいっと箱を手に取ると、くんくんと匂いをかいで言った。


「? ……これなあに? なんかおいしそうな匂いがする~」


 男の子はその細長い箱を手に取ると、その箱から発せられる甘い匂いに(ほお)が思わず緩む。その箱の持ち主である婦人は男の子に問いかけた。


「あれ、お母さんはどこかな?」


 お母さん。その言葉を耳にした男の子の顔は段々と紅葉し、ついに大粒の涙を流して泣き始めてしまった。母親と迷子になったのだろうか。舞は男の子の頭を()でながら優しい声で言った。婦人も舞に続いて、ハンカチをバックから取り出して子供にこう言った。


「これで涙ふこ?」

「……! お母さんは?」


 母親の顔を思い出すほど、男の子はひと際涙を流して、過呼吸のまま母の名を呼び続ける。子供にとって母親の存在はこれほどまでに大きく、男の子は泣くことしかできなくなっていた。舞は婦人と目を合わせると、ちらりと周りを見渡し、一番近くにあった公園を発見した。


「それではあっちの公園にいきましょう。そこで待っていれば会えるかもしれませんわ」

「そうね、そうしましょう」


 婦人も舞の提案に賛同した。男の子も泣きじゃくる中、震えた声で(うなず)いた。


 公園の醍醐味は遊具。砂場が広いだけで遊具が一、二個しかない公園など公園ではない!(S・G・N氏談)。春風(しゅんぷう)公園(こうえん)はブランコ、すべり台、シーソー、鉄棒、ジャングルジム、ターザンなりきりセットと豊富で、砂場も十分の広さを誇る。舞と婦人は春風公園に着くと、近くのベンチに座ることにした。男の子は漸く涙腺が少しだけ収まると、心に余裕が出来たのか甘い香りを漂わせる箱を見つめた。箱の柄をよく見ると、あの春風スイートが果物風味のバームクーヘンのためだけに作られた特別製の箱であった。


「これ食べていい?」

「……え!?」

 

直後、男の子のお腹からぐ~っと空腹の鐘が鳴った。婦人は困ったように悩むと、葛藤(かっとう)に葛藤を繰り返し、苦渋の決断をした。


「いいのよ、食べて。……はあ、また並ぶのか……」


 子供の手前平気な態度を取ってはいるが、婦人は残念そうに呟いた。それほどまでに待ち望んでいたのだろうか。舞はちらりとデザート店を向くと、未だに長蛇の列ができていた。


「いつまで並んでいらしたのですか?」


 舞の質問に婦人は一瞬驚いて答えた。


「というと……あなたもこれを買いに?」

「はい、ざk……子供が大好きで――」


 危ない危ない。舞は辛うじて子供で通すことにした。神様とは言えないもどかしさが舞の胸中をざわりと満たす。婦人は「そうなんですか……」と納得すると、視線を公園の遊具に移した。今は昼前。ブランコの周りに二、三人の子供が集まってじゃんけんゲームをしていた。どちらが二席のブランコの主導権を握るのかを競っているのだろう。婦人は頬を緩めて言った。


「私は、ちょっと嫌なことがあったので気晴らしにと……」


 ご婦人はどこかおかしそうに笑みを作った。舞はどうして笑ったのだろうかと首をかしげる中、男の子は美味しそうにバームクーヘンを頬張っていた。


「まだありますか? 果物の」

「あ、はい……あと五個くらい」

「! ……申し訳ありません、では」


舞はご婦人の言葉を聞くや、嵐のように長い行列の最後尾にダッシュしていった。婦人が舞の俊敏さに圧倒される中、男の子はバームクーヘンを全て食べきったのだった。

 





――それから十五分後。またも嵐のように現れた舞の衣服は至る所に飛び跳ねていた。特に長い黒髪は所々と(から)まっていた。


「はあ……はあ……限定品は残念でした。はあ……通常販売の残り……二箱しか買えません……でした……」


 舞は荒い息のまま、婦人の前に紙袋を掲げた。膝を付くほど走った結果は舞にとってはとても惜しかった。店側もできるだけ作っていたが、あの30人から50人ほどの列を裁くほどの量は用意していなかったようだ。だがそこで店側は急遽新作バームクーヘンを通常販売したのだ。その名も『野菜風バームクーヘン』。味が良ければ果物と合体したいとのことだが、舞は躊躇(ためら)う間もなく買った。そうしなければ何も買えなかった。しかも残り二個というギリギリの購入。舞は店の中で思わずガッツポーズをしたことは秘密だ。


 婦人は一瞬呼吸と体が止まった。そして目の前にある紙袋の中から漂う野菜たちの香りに全意識が再起動を始めた。


「い……いえ凄いじゃないですか! それにこの香り……早く食べちゃいたい気分」


 婦人の感極まった言葉に、舞は笑顔を取り戻すや、紙袋を開け、長方体の箱を一つ取り出し婦人の前に差し出した。婦人は首を(かし)げて聞いてみる。


「えっと……これは?」

「お子様や(わたくし)が食べるのだから、あなた様が食べられないのは不公平ですわ」


 ジン……。と、舞の言葉が婦人の胸を優しく包み見込んでいく。婦人は野菜風バームクーヘンの入った箱を受け取ると、舞はにっこりと笑ってこう言った。


「これで皆様ひと箱ずつ食べられますわ。嫌なこと、忘れられますか?」

「……はい」


 声が震える。箱をゆっくりと胸に引き寄せると、婦人の目から涙が流れた。この人はどうして見ず知らずの私にここまで優しいのだろうか。赤の他人というにはあまりにも温かく、友人というにはあまりにも浅い。ふと舞に視線が泳ぐ。舞は頬を赤く染めながら涙を流す婦人を見ていた。自分のことのように嬉しそうに笑いながら……。


そんな時、


「たっくん!」

「! ……お母……さん?」


 やっとの思いで公園に辿り着いた母親は、男の子・たっくんを見つけると、一気に走った。向かう先はたった一人の息子、たくや。たくやも母が駆け出すと同時に、椅子から飛び降り母の元へ駆けていった。抱き合う二人。それを見る舞と婦人は、心の底から笑顔になった。


「やっぱり子は親がいた方がいいですね」

「はい、そうですわね。……あの、今更で申し訳ありませんがお名前を聞かせてくださいませんか?」


 舞は(ようや)く聞きたかった質問を出すことが出来た。婦人も「あ……そうでした」と言うと、改めて頭を下げて、言った。


「……母狸(ははだぬき)の【龕之(こんの)満月(みつき)】。……巫女服を着ているあなたならお分かり……ですね」

「! ……あ、あなたがあのっ――」


挿絵(By みてみん)

 舞は驚きのあまり口を塞いで大きく目を見開いた。他人を指さすのは失礼と思いつつも、驚きすぎてそれどころではない。

……そう、名前は知っていた。だが、素顔を見るのは初めてだった。国内の人外の誰もがこの名を知らぬ者はいないと(おそ)れられる大妖怪の一人だ。なぜここまで有名になったかというと、あの最強の妖狐【九尾(きゅうび)】と渡り合った唯一の妖怪らしいのだ。どうやって戦ったかは本人たち以外誰も知らないが、大妖怪の【九尾】でさえ「もうごめんだ」と言わせたほどらしい。

 そして正を治す方法を知っているとされている候補の一人でもある。


「またいつか会えたらいいですね」


 満月は澄ました顔で舞に言った。


「……はい、またいつか」


 舞はにっこりと笑って一礼すると、満月は足早に公園を後にした。まさかこんなところで、彼女に会えるとは思っていなかった。舞はたくやとその母親にお礼の果物風味のバームクーヘンを一つもらい、そのまま神社に戻って野菜風バームクーヘンで体力を(たくわ)え、(かわ)志野(しの)浩司(こうじ)ご一行の元へ向かうのであった。






 浩司たちは漸く目的地に辿(たど)り着いた。『欠欠直近』の力が消え、元の距離へと戻っていく。鬱蒼(うっそう)と生い茂る木々、せせらぐ小川、人気が一切ないことからここが森の中だと気づくのに、そう時間はかからなかった。浩司は目の前に流れる一本の川を見て、すぐさま枯れ果てた体を潤すために走り出した。手で掬い取ってごくりと飲むと、ゼロになりかけた命の灯が段々と大きくなるのが分かった。少しずつ冷静になった浩司は、改めて周りを見渡した。


「ここが……和子が言っていた……」

「ああ。おーい! いるんだろ!」

 

突如、和子が声を荒げて森中に聞こえるように叫んだ。浩司はびっくりして耳を抑えると、和子の声に応じるように浩司と和子と柘榴(ざくろ)の間に何者かが飛び降りた。


「お前らか……この森を荒らしに来たのは……」


 綺麗な着地を見せたのは、皿のようなものを頭に付けて甲羅を背負った緑色の女、【河童(かっぱ)】だった。だが、浩司たちを見るなり殺意と警戒心を(あら)わにしながらこちらを(にら)み付けてくる。


「? ……なに勘違い」

「うるさい! 人間めがああ!!!!」

「うわあ!」


 いきり立っていた【河童】は浩司を見るや否や、突然襲い掛かってきた。殺意満点の拳を天に掲げて――。


和子と柘榴と浩司三人は子供に連れ添う親のような、懐かしい感覚に浸っていた浩司。そして和子も柘榴と久しぶりに会ってから、懐かしい姉妹の感覚に浸っていたのでした。座敷童といえど、和子は単独行動ができるくらいには強いです。


お久しぶりです。私です。拙い文を今の自分なりにできる最高の文に進化させられたでしょうか。昔の私も全力ですが、今の私だって負けてられません。そして今の私よりも明日の私は負けないでくれ……。というわけで次回、河童との衝撃的出会いから入ります。

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