表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カミラギ・ゼロ~神螺儀・零~  作者: Sin権現坂昇神
第三章 教師妖怪大決戦
148/223

第Cxi話 鈍重の歩み

浩司終章、開幕。

 ……あれから何が変わったか。


私は全てを置いてきた。相手を傷つける(すべ)を持たなかった、全てが私の責任。

 うちは全てを捨てきれなかった。中途半端のまま……。

 私は全てを(たく)した。老いぼれのわがままを押し付けてごめんなさい。

 私は何も知らなかった。お母さんのことも何もかも……。

 私は何にも知らなかった。お母さんの笑顔が無くなった理由も何もかも……。

 俺はお母さんの望みを叶えたくて必死にしがみつくだけ。

 俺は――――、

 





 重い。

 (手が)重くて、(足が)重くて、(お腹というか胴体(どうたい)全部が)重くて、ほんっっっっとにしんどい。特に胴体を(おお)(かた)甲羅(こうら)がずっしりと重石(おもし)になって、一、二歩歩くだけで疲労(ひろう)が以前の何倍にも蓄積(ちくせき)されていく。

 

「……」


 上を向く。誰かが生み出したであろうどす黒い群雲が空を()()くす。(さら)に少しずつこの世界をまるごと食らおうと(ひろ)がっていく。苦しいから息をするが、呼吸をするたびにハリセンボンが入ったような気分だ。確かに今自分がいる場所は山頂付近、地上より空気が(うす)くなるのも解る。だがこの(とげ)身体(からだ)に入った状態が続けばいずれ……、






「ちっ! ……やっぱり駄目(だめ)だ。やっと手に入れた俺とガキの“神螺儀(かみらぎ)”と九尾のガキと退治屋のガキの負のエネルギー、そして……くそっ、確かに手に入れたはずだってのに。九尾のババアが集めた妖怪どもの妖力と退治屋どもを妖怪化させ食らったはずの力が……何で出てこないんだ……っ!!! 確かに覚えてる。でも…………そんなはずは――――」


 一体何がどうなってやがんだ!!!

 (むすめ)永禮(ながれ)千代子(ちよこ))の身体と融合(ゆうごう)した花園(はなぞの)千代(ちよ)(たま)らず(さけ)んだ。頭は何の痛みもない。誰かに(いじく)られたという記憶(きおく)もなければ、(むし)ろ絶大な力が己の体に集まり(から)み合って着実に最強へと近づいている。そう確信しているはずが何だこれは? 記憶が、力の何もかもが足りない。千代は必死に探した。本当の記憶を。手に入れたはずの妖力と生命力がどこへいったのか。あれだけ苦労して集め大事に保管していたあの力。この時のためにずっと(たくわ)えていたが明らかに計算が合わない。


「一体何がどうなってやがる……。俺はもう誰にも負けない最強だ! ……最強なんだ」


 己に言い聞かせるように、そう思い込ませ無理やりこの異常事態を忘れようとした。が、心にぽっかりと穴が開いた感覚があまりにも気持ち悪い。誰かに勝手に記憶を弄られた気分だ。

 どうする……。確かめるか? いや――、

 と、その時。


「あなたもですか……」


 声の方には何もないはず。天空には千代が独り占めしている状態であった。聞き覚えのあるその声……。イラつきながら振り向くとそこにいたのは――、


龕之(こんの)満月(みつき)……なんでてめえが」


 満月は千代に右目を奪われたにもかかわらず、至って元気な姿を見せていた。妖葬(ようそう)()は即興で()い直したのか以前よりも綺麗(きれい)に、妖力は千代が奪ったことで一段と弱くなっている。


「はい。やられたまんまじゃお母さんに顔向けできませんから……」


 そう微笑(ほほえ)み答える満月の左目は、どこか(あか)抜けていて洗練された()んだ色だった。






「……」


 ずっと眠っていたのだろう。(まぶた)が少し重かったけど、それでも開けなければいけないと思った。……まだ覚えている。あの少女たちが、母たちが歩んできた人生の一片。まだ絶望は終わっていない。今もこうして傷つき更なる犠牲(ぎせい)が生まれ続けている。だから止めるんだ。…………誰が? それは――、


浩司(こうじ)さん」


 ゆっくりと、そしてはっきりとした声が浩司の耳を()らえた。そういえば後頭部がどこか人肌のぬくもりがある。両方の(ほお)に包まれた(なめ)らかな手、そして上方に(はかな)げな視線を向ける女性が一人。大きな狐の耳、暗雲でも輝く黄金の髪。そしてその冷たくも澄み切ったその目を見て、浩司は確信した。


鬼奈(きな)(つき)……さん?」

「ええ。……はい。あなたの涙。しかとこの鬼奈月が受け取りました。そして全てを理解しました。あなたがどうして選ばれたのか。どうしてあなたがここにいるのか」


 九重鬼奈(ここのえきな)(つき)。九尾の血を引く狐妖怪にして、今現在千代によって娘が乗っ取られている文月(ふづき)の母である。浩司は今漸(ようや)く自分が涙を流していたこと、その涙を鬼奈月が手で(ぬぐ)ってくれたことを知った。そして何より……。


(あ。やばい。これ膝枕(ひざまくら)じゃん)


 (かわ)志野(しの)浩司(こうじ)の中で一番大好きなシチュエーション『膝枕』をされていることに気づいた時、浩司の興奮ゲージは一気にMAXになったのであった。






――いや。今考えることは一秒でも一寸(ちょっと)でも早く彼女の元に辿(たど)り着くことだ。

そのために全てを捨ててきた。

君を見つけるために、君の終着点を変えるために……。


 背も縮んだ。そもそも生態系自体が変わって、寿命も一気に伸びた。替わりに速さを失ったが、それでもいい。


「待ってろ……死ぬ前に必ず……」


 君を見つける。そんで抱き()める。一人で死なせるもんか。絶対に引きずってでも連れ戻す。それが僕の……(よこしま)で独りよがりな野望だ。

 鈍重(どんじゅう)な体は望んで与えられたわけではない。ただの偶然だ。一番と言っていいほどあまりに重くて遅い。そんな体を手に入れた一匹(いっぴき)(かめ)が向ける視線の先には、頬廼城市(ほおのじょうし)何千メートル上空で仁王立(におうだ)ちする()えた(けだもの)ただ一人。

 やっとこれが描ける。後はその先もしっかりと描き終わらせて見せる! 見ててくれジッチャン!

リメイクされたガオキングってあんなに小さかったのかと思うほどコンパクトでびっくりしました。ガオレンジャーは小学生のころ観てたので何だか感慨深いです。

 遊戯王もついに歌舞伎に手を出しました。遅いくらいです。できれば山笠とかもカード化してもいいんですよ?

 というわけで、次回から浩司編の集大成その一です。最後までお付き合いできたらこれ以上の幸せは……まだまだあります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ