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波原刑と私の関係  作者: 也麻田麻也
第7章 首里組と教室
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第83話

 携帯を取り出し、着信画面を確認すると、思った通り十鳥日向子と表示されていた。


「はい。歌波です」


『ヤッホー。エリちゃん元気にハッピーにしていたかな?』


 出だしから圧倒されるテンションだった。

 犬山もハイテンションだが、日向子さんは群を抜いているな。


「ハッピーかは分かりませんが、今送ったとおり犯人が絞れてきました。もしかしたら本日中には犯人を確定することが出来るかもしれないので、刑に近くで準備をしておくように伝えてもらえますか?」


『オッケーオッケー。今、丁度ケイちゃんも一緒だから言っとくね。おーい。もうすぐ出番が来るよー』


「刑も一緒なんですか?」


『私と響くんとケイちゃんは一緒に応法学園から北に五百メートルの位置にいるんだよー』


 朝の話では響さんの愛車で来るはずじゃなかったかな?


「響さんの車で刑を送るんじゃなかったでしたっけ?」


『その予定だったんだけど、どうも話を聴いてると、きな臭くてねー』


「きな臭い……ですか?」


『そうそう。だってこの依頼……殺して終わりにはならなそうなんだよねー。エリちゃんだって可笑しいと思ったところはあるでしょ?』


 確かに可笑しいところはあった。

「日向子さんはどの程度話を聴いていましたか?」


『今日は店も暇だったから、ほぼ一日中響君と聴いていたし、送られてきたメモにも目を通したよ。あっ、貧乳はドンマイ』


 言葉の後に、『タハハハ』と笑い声が聴こえて来た。


「そこは聞き流してください!」


 貧乳じゃないもん……貧乳じゃ……。


 泣きそうになりながらも、ペンの機能が良好なことがわかった。


 日向子さんに渡された七つ道具その四ボールペンはただのペンではなかった。

 レコーダー機能付のペンであり、私の携帯を経由して、日向子さんのパソコンに録音内容をリアルタイムで転送する仕組みになっている。

 手帳もこのペン専用のものであり、書き込んだ内容を画像データとして転送する仕組みになっている。


 現場に入らない刑にも情報が入るように、持たせたものだ。

 ちなみにお値段一万二千円なり。


 多分後で請求されるだろうな……。


「ゴホン」と、咳払いし、本題に戻す。


「日向子さんが聴いていたなら話が早いですね。この事件の犯人の目星は付きましたか?」


『私が言っちゃったらエリちゃんがホームズにも金田一にもなれないよー』


「ホームズになるつもりはありません」


『今のエリちゃんはワトソン君だもんね。主役を目指そうよー』


 良くも悪くも現代っ子の私は主役になる気など、サラサラない。

「私は殺し屋のパートナー。脇役で良いんです」


 私は刑の手助けをするだけの存在――脇役だ。

 エンドロールに名前が載る必要はないんだ。


 ただの少女Aでいい。


「犯人の名前を教える気はないんですね?」


『教えたいのは山々でも、多分エリちゃんと同じところで悩んでいると思うよ。犯人はどっちだろうってね』


「そうですか。二択のところまでは来るんですが、そこから先の証拠を掴むことができないんですよね……。それに分からないこともまだ山積みですし……」


『分からないことねー。ちなみにエリちゃんは何で悩んでいるのかな?」


「私が悩んでいる事は犯人が何故十六人も殺したのかと言うことと、消えた凶器と、切断された指の謎ですね。それさえ分かれば犯人に辿り着けそうなんですけど……」


 血の足跡がついていない謎は解け、誰にでも犯行が可能だと言うことがわかった。

 そして、鶴賀の発言から、犯人を二人に絞ることも出来た。


 あとはどちらが犯人なのかを見極めるだけだが、その取っ掛かりがどこにも見つからずにいた。


『なるほど。なるほど。その謎はなんとも言えないなっ』


「やっぱり日向子さんでも分からないですか……」


『無理だよー。私なんてただのミステリー漫画、ミステリー小説好きのただのお姉さんだもん。そもそも今回の謎は、安楽椅子探偵でも無理なんじゃないかな? 多分、分かるのは現場にいるエリちゃんだけだよ』


 お姉さんと言う点は気になったが、その点を口にはせず――多分言ったらキレるだろうし――安楽椅子探偵でも分からないと言った点を考えてみた。


 安楽椅子探偵では分からず私になら分かる点。


 それは目で見なければ分からないという所だろう。


「映像ですか?」


『ザッツラーイト。エリちゃんが見た映像に答えがあると思うよ。生き残ったら犬山明日葉ちゃんにもう一度動画を見せて貰いなね』


 私は、「はい」と、返事をした後に、「……生き残ったら?」と聴き返した。

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