表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波原刑と私の関係  作者: 也麻田麻也
第6章 姫路亜弥と姫路沙弥と音楽室
80/153

第79話

 血を拭って綺麗にできないとなるのならば……。

「……洗った……犯人は水道で靴を洗ったんじゃないですか? 靴だけじゃなく、凶器も水で洗ってしまえば証拠はなくなります」


 これは中々良い推理じゃないかと思ったが、「浅慮過ぎですわ」と、再度一蹴された。


「私は言いましたよね? 何も汚れていないと」


「汚れていないのは水洗いしたからではないんですか?」


 亜弥はまるで理解していない私に、「おちびさんはナイフを洗った後どうしますか?」と、ヒントを出した。


「ナイフを洗ったら……タオルで拭きますが、それが何か――」と言ったときに、亜弥の言いたいことが分かった。

「濡れたタオルも出なかったと言うことですね」


「ご名答ですわ。勿論タオルだけではなく、ハンカチもありませんでしたわ。靴も凶器も水飲み場で洗えば証拠隠滅できますが、お犬さん以外全員のハンカチを沙弥さんが確認しましたが、誰も濡れたものなど持ってはいませんでしたわ」


「犬山さんだけ確認できなかったのはどうしてですか?」


「お犬さんは普段手を洗ってもスカートで拭くので、ハンカチは持っていませんでしたわ」


 ちゃんとハンカチを使いなさい。

 スカートで拭いたら皴になるだろ……。


「お犬さんのハンカチ兼スカートも濡れていなかったので、血の汚れを洗った可能性は御座いませんわ。もちろん洗ったまま拭かずに動き回ることも出来ますが、それなら廊下に水滴が残るはずですが、それもありませんでしたわ」


 刺し殺せば、切り殺せば、血が出る。

 凶器にも血が付くのは避けられないことだ。


 血で汚れた靴も凶器もなく、血を拭ったタオルもハンカチもなく、水洗いした形跡もない……。


 全員の話を聞き、情報が集まり事件の全貌が見えてきた気がしたが、ここに来て振り出しに戻された。

 犯行は不可能なんではないか? 


 亜弥の言ったとおり、全員で殺しあった結末があの惨状なんじゃないかとすら思えてきた。


 けれど……犯人がいないとしたならば……私が教室で感じた、押し潰されるような殺気は何だったんだ?


 犯人が発したものじゃないのか?


「亜弥さんは犯人はいないとおっしゃいましたが、それは血の跡が見つからなかったからだけなんですか?」


「それだけではございませんわ。死んだ人間が弱かったからと言うのもありますわね」


 弱いから死んだと言うのが、どう犯人がいないという理由に繋がるか分からなかったので、「それはどういう事ですか?」と、聞いてみる。


「死んだ人間の中にクラスで五指に入る人間がいませんでしたから、口論が起きても、殺し合いを止めきれる人物がいなかったと言う事ですわね」


 殺し合いをとめるためには、それと同等以上の力が必要になるだろう。

 今朝の亜弥と鶴賀のいざこざもそうだった。白石が圧倒的な力で収めた。

 もし、あの場に私しかいなかったならば、下手すればどちらかの命が失われていたかもしれないな。


 しかし、ここで一つの疑問が湧いた。


「五指と言うと?」

 聞きながらも頭の中で強いだろう人間を数えてみる。


 まず白石が上げられるだろう。

 次に白石が言った互角であろう四人か。

 鶴賀に亜弥と沙弥、そして愛瀬と言うところだろう。


 鶴賀と互角と言われた愛瀬がいたと言うのに、何故殺し合いを止められなかったというのだろうか?


「私に沙弥さん、のっぽさんにお猿さん、そして最後は……お犬さんですわね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ