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波原刑と私の関係  作者: 也麻田麻也
第6章 姫路亜弥と姫路沙弥と音楽室
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第78話

「……はいっ?」

 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして答えると、「如何しましたか、素っ頓狂な顔をして?」と、亜弥が聞いてきた。


 私そんな顔をしていたかな?

 そもそも素っ頓狂な顔って、どんな顔なんだっけ?


「その……いないって答えは予想していなかったもので……驚いてしまいまして。その……犯人がいないというのなら、十六人もの人間が他殺体で見つかったのは、どう説明すると言うのですか?」


 刺殺に惨殺された死体がある以上、誰かが殺したのは間違いないことだ。

 まさかみんな一斉に自殺したと言うことはないだろし、何故亜弥が犯人はいないと言ったのか理由が見えてこなかった。


「簡単なことですわ。全員で殺しあって、全員死んだ。それだけの事。おちびさんがいくら調べても犯人などいない、無駄な事というわけですわ」


 全員で争った? 

 そんなことが起きえるのか?

「根拠はあるんですか?」


「それならありますわよ。何も汚れていない事ですわ。もし犯人がいるとして、犯人は私たちが教室を出てからお犬さんが来るまでの間に犯行を行なったのならば、汚れた衣類はどうしたと言うのですか?」

 返り血を浴びずに殺せば汚れることはないのでは?


 その事を亜弥に話すと、「浅慮ですわ」と、一蹴された。


「服は汚れずとも靴は如何でしょうか? 教室の大半は血で汚れていましたわ。あの血溜まりを踏まずに犯行を行なえると、おちびさんはお思いで?」


 教室を思い起こしてみる。

 至る所に血溜まりが出来ていて足の踏み場もないような状態だった。


 血を踏まずに殺しまわるのは……難しい……いや、不可能に近いかも知れないな。


「限りなく不可能に近いと思います」


「そうでしょう。私共が教室に向かったとき、血の足跡一つありませんでしたわ。靴底に血を付けない事が不可能ならば、廊下に血の足跡が付いていないのは可笑しいですわね」


 廊下に足跡はなかったのか。

 確かに足跡があれば、靴のサイズから犯人を導き出すことが出来るので、こんな犯人探しをする必要もないだろう。


 それならば……。

「犯人は殺す時の為に、代わりの靴を持ってきていたとしたらどうですか? 殺す前に履き替え、廊下に出る前に上履きを履きなおす。これなら廊下に血の足跡が付かなかった理由になりませんか?」


 完璧な推理だと思い、自信満々の顔で亜弥を見ると、「フッ、浅慮ですわ」と、鼻で笑われた後、一蹴された。

「事件が発覚した直後、校庭にタバコの吸殻が見つかったと言う名目で、普通科の生徒も含め全員の持ち物検査から、ロッカーの調査、下駄箱の調査を行ないましたが不審なものは何も見つかりませんでしたわ。勿論空き教室やトイレ、屋上、校庭に中庭も隅々まで調べましたが、凶器や血の付いた荷物など見つかりませんでしたのよ。聞いてないんですの?」


 凶器がないか持ち物検査くらいは行なっているとは思っていたが、大々的に捜索を行なっていたとは想像してはいなかった。

 血の付いた靴がなかったと言う事は……上履きに付いた血をタオルで拭って逃げたのではないのか?

 教室を出る時靴を拭って逃げれば、廊下に血の跡を残さずに済むんじゃないかと思ったが、この案は却下した。


 亜弥は血の付いた荷物はなかったと言っていた。


 つまり血で汚れたタオルもハンカチもなかったと言うことになるだろう。

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