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波原刑と私の関係  作者: 也麻田麻也
第5章 青葉昴弥と図書室
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第67話

「あの現場を見て、どう思いましたか?」


「どう、と言うと?」


「死体の状態や、犯行の手口ですね。医術を学んでいる青葉さんの観点から見たお話を聞きたいですね」


「死体の状態だと……刺殺体が多かったね。次に多かったのは頚動脈を切られた死体が上げられるかな。傷口は深さや幅がまちまちだったから、凶器の重量や大きさは判断できないね。犯人は複数個の凶器を用いて犯行に及んだんだろうね。検視の専門家なら犯人の身長や利き手も分かるんだろうけど、専門外の僕には分からないね」


「傷口の向きで、犯人の利き手は分かるんじゃないんですか?」


「普通はそうなんだけれど、今回の遺体は右利きの傷や左利きの傷が入り混じっていたから、判断できないんだよね。犯人は両手で武器を扱える人物か……二人組みなのかもしれないね」


 左右の手で犯行を行なったか。

 刑も両手で武器を扱うが、両手に武器を構える殺し屋は少ない。

 片手に武器を構え、片手で防御や組技に徹するのが普通だろう。


 つまり犯人が一人ならば、両手で武器を扱える者。二人組ならば、右利き左利きの組み合わせと言うことになる。


 右利きと左利きとなれば……亜弥と沙弥が当てはまるな。

 亜弥は右利き、沙弥は左利きだったはずだ。


 ふむ。少しだけが、犯人の目星がついてきたな。


 まあ利き手だけで、犯人を決め付けるのは早計だ、鶴賀や白石が両手で武器を使うことが出来るかもしれないしね。


 容疑者の武器と持ち手を思い出しながら、頭を整理していると、青葉の武器を知らないことに気づいた。


 もし両手で扱う二振りのナイフであれば、容疑者として疑わしくなるな。

 心苦しいが私はその事を聞いてみることにした。


 さりげなく。高校生が『ヘアワックス何使っているの?』と、尋ねるような感じで聞いてみた。

「青葉さんはどんな武器を扱うんですか?」


「僕の武器?」


 さり気なくなかった様だ。

 青葉から発せられる空気がピリ付いたのが分かった。


 考えてみると、今犯人の利き手を聞いていたところに、自身の獲物を聞かれたのだ、警戒する理由はあっても、快く答える理由はないな。


「はい。他の人の武器は聞いていますが、青葉さんの武器はまだ聞いていなかったので……どんなものなんだろうなって思いまして」


「ああ、そうか。うん、いいよ。僕は六年近く格闘術を習っているんだけれど、体格はこんなだし、運動神経は良い方じゃないから、なかなか上達しなくてね。だから扱える武器も限られているんだよね」

 青葉はそう言うと、スッと本を私に差し出した。


 教室から持ち歩いていたハードカバーの本だった。タイトルには私も知っているギリシャ神話の英雄の名前が書かれていた。


「この本が武器なんですか?」と、尋ねながら手に取ると、本とは思えない重さを感じた。

 もしやと思い開いて見ると、中が切り抜かれ、何本ものナイフが納められていた。


 グリップもブレードも全て金属製の小ぶりな片刃のナイフだ。

 形状も特殊で、グリップは細く、ブレードの先端に行くにつれ幅広になっていく造りだ。


「ダガーじゃ……ないですよね?」


 小ぶりなナイフだったので初めはダガーかと思ったが、それにしては特殊な形状だった。

 このナイフでは打ち合いには向いていなさそうだ。


 一本手にとってみると、先端が重く、刃先が自然と下を向いた。


「これはジャグリングナイフだよ」

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