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波原刑と私の関係  作者: 也麻田麻也
第5章 青葉昴弥と図書室
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第60話

 廊下を歩いていると、「図書室は二階にあるんだけれど、他の部屋も見ていく?」と、青葉が聞いてきた。


「他の部屋ですか?」


「ほら、犬山さんが案内するように言われたからさ。色々周ったほうが良いのかなって思って」

 職員棟の案内をするように言っていたな。


「一階には職員室があるんですよね?」


「正確には職員室に会議室と学長室、それから保健室があるね」


 学長室と言うと、校長室か。

 頭にパンフレットの学園長の写真が呼び起こされる。

 会っておくべきかと思ったが、二時間目に会った教師の顔を思い出し、私は、「一階は大丈夫です」と答えた。


 ゴミ袋の破れ目からはみ出した生ゴミを見るような、見下した目で見られるのは、もう結構だった。


「それじゃあ……案内は二階からでいいかな?」


「はい。大丈夫です」


「それじゃあ二階に向おうか」

 青葉はそう言うと歩を進めた。

 廊下の角を曲がり渡り廊下に進み、丁度真ん中で立ち止まり、右を指差した。


「こっちが職員棟になるね」


 職員棟を覗いて見る。

 当たり前のことだが、廊下の様子は特進校舎と変りはないようだった。

 違いをあげるとすれば、廊下が長いくらいかな?


「じゃあ三階は後回しにするとして、二階に向おうか」

 指差しをした反対側、青葉の左手側の階段を下り私たちは二階に降りた。

「二階は図書室と科学室や歴史準備室などの特別室があるんだ。この学園の図書室は、歴史書や法律書が多いけど、ミステリーやファンタジーの小説も多いんだよ」

 階段を下りながら青葉は振り向き笑みを見せた。


 自分の事のように嬉しそうに語る青葉を見ると、心が温かくなってくる。

 なんだろう。今まで会った事のないタイプの少年に、私の心が踊るのが分かった。


 

 会って半日。会話時間は二分にも満たないくらいだというのに、どうしたんだ私。


「……さん」


 顔は整っているし、間違いなく美系だが、私のタイプはワイルド系の顔だ。

 青葉のような美少年系は可愛いと思えても、惹かれることなどなかったのに、何でこんな目が離せなくなるんだ? 

 タイプが知らず知らずのうちに変わっているというのか? 

 そういえば、犬山がイケメンと言った白石は背が高くて、少しやんちゃな感じのするイケメンで、私のタイプど真ん中のはずなのに、全くトキメカなかった気がする。


「……さん? 歌波さん?」


 名前を呼ばれていることに気づき、私は慌てて、「はい」と、返事をする。


「物思いに耽っていたから、どうしたのかと思っちゃったよ」


「あっ、すいません。とっ、図書室にどんな本があるのかなーって、考えていて、ちょっと魂が天高く飛び立っていました」

 手をばたつかせ、慌てて言い訳するが、意味不明だった。

 不覚……。

 魂が飛び立つってどういう事だよ……。


 死んだってことか?


「……歌波さんも本が好きなの?」

 私の意味不明な魂発言に触れる事無く、青葉は質問してきた。


 本か。

 この場合言っている本とは小説のことだよな。


 そう考えると答えに困るな。

 本を読んだとしても、日向子さんに進められる漫画本や、極稀に渡される恋愛小説とミステリーくらいだ……。


「……本は好きなのですが、最近は読めていないですね」と、無難に答え、頼むから『好きな本はなに?』って、質問はしないでくれと心の中で祈る。


「そうなんだ」と、嬉しそうに微笑を私に贈ってくれた。


 可愛い笑みだ。


「時間があったら、ここの本を借りていくと良いよ」

 その言葉を聞き、図書室の前に来ていたことに気づいた。

 図書室は、二階の一番奥、階段を下りて直ぐの位置にあった。

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