第4話
『どうかしたのエリちゃん?もしかして出し――――――』
「銃は出していませんッ」
私はヒナコさんの言葉を遮る。
「声を荒げてしまい、申し訳ございません。弘前達六人は全員銃を取り出す事無く死んでいます」
『……』
返事はなかった。
信じてもらえなかったのだろうか。「あのっ」と、呼びかけようとしたとき、日向子さんの声が電話から流れた。
『……そっかー。良かった。良かった』
数秒の間の後、元の無邪気で弾むような声で返事が返ってきた。
良かった。
信じてもらえた。
安堵し、どっと疲れが体に押し寄せてくる。思わずその場に座り込みたくなったが、一刻も早くこの場を離れるべきだと思い、私は座らずに話をまとめに入った。
「任務も完遂しましたので、私はこの場を離れます」
『了解。了解。じゃあ今から五分後に依頼主に連絡するから。エリちゃんは一度雛鳥に顔を出しに来てもらっても良いかな?』
私は腕時計をチラリと覗き込む、十三時三十五分。今から五分後だと四十分に連絡が行く事になる。
「わかりました。では今からそちらに向います」
私は話しながら歩き出す。
『エリちゃん気をつけて帰って来るんだよ。家に着くまでが暗殺なんだからねー』
暗殺を遠足のように語ると、日名子さんは電話を切った。
家に着くまでが暗殺。
つまり……まだ終っていないということなんだろう。
ゆっくりと鼻から息を吸い、血なまぐさい空気を鼻腔に感じながら、緩んだ気持をひきしめ、私はビルを後にした。