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波原刑と私の関係  作者: 也麻田麻也
第2章 十鳥日向子と依頼
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第24話

 気を引き締め、暗殺の場所となるであろう、校舎を睨みつける。


 三階建ての横長の校舎だ。校門をくぐり、石畳を進むと噴水があり、その先に校舎がある。

 その左には四角形の建物、体育館があり、その後ろには校庭が広がっていると、パンフレットには書いてあった。


「行きましょうか」と犬山に声をかけ、噴水の先にある校舎の玄関――学校なので、昇降口か――に向かった……が、「どこに行くんすか」と呼び止められた。


 二歩で歩を止めてしまった。

 もう止まれないと心に思ったのに……幸先不安だ。


「どこって、昇降口に行こうとしているんですが……。校舎に行くんですよね?」


 まさか体育館に向かうと言うことはないだろう。事件は校舎でおきたと、日向子さんには聞いていたし、他に向う必要はないはずだ。


「校舎には行くっすけど、うちらの校舎はここじゃないんすよ」と言うと、噴水の先の校舎を指差すと、ゆっくりと右にずらしていき、「あっちっす」と言った。


 右にはほとんど自転車の止められていない、駐輪場があった。良家のお坊ちゃまに、お嬢様が通っている学校だ。自転車通学者はまずいない様だった。


 

 駐輪場はあるが、その先には黒の鉄柵があるだけで、校舎などあるようには見えなかった。


 まさか地下の入り口が!

と、一瞬頭に過ぎるが、特殊な学園ではあるが、まさかそんなことはないだろう。


 頭を振って考えを吹き飛ばしていると、犬山が説明をし始めた。


「あっちって言うか、うちらの六組はこの校舎の裏にあるんすよ」


 校舎の裏? 


 パンフレットには、校舎の正面写真しかなく、他に校舎があるかどうかは、分からなかった。そのため、てっきり正面に見える校舎しかないと思っていた。


「まぁ、詳しい話は、特進校舎に入ってからにするっすか」


 特進校舎。耳慣れない言葉に疑問を持ちながらも、先導する犬山の後を追い進んでいき、校舎の角を回ると、隠れるように立っている、校舎が見えた。


 これが特進校舎か。


 特進校舎は正面の――仮に本校舎としよう――本校舎の半分ほどの長さの、校舎だ。それでも本校舎が大きいため、特進校舎自体も、普通の学校ほどの大きさだった。


 私が足を止め特進校舎を見ていると、犬山は、「まだ先っすよ」と、声をかけてきた。


 ここじゃないのか?


 後を追っていくと、二つ目の校舎の先に、もう一つの校舎が見えた。

 二つ目の校舎の更に半分ほどの大きさの校舎。ここが特進校舎のようだった。


「どうっすか。応法学園名物バリ3校舎は」


 バリ3校舎とは、言いえて妙だと思った。

 長さの違う三つの校舎が連なり、渡り廊下で繋がっていた。一見すると携帯のアンテナが三本立っているような形だった。


 電波は良好そうだ。


「先輩達が代々バリ3校舎と呼んでいたんで、今でもそう呼ばれているんすよ。まぁ今の携帯は、アンテナが四本あるのもあるっすから、バリ3って呼び方は、死語になりつつあるっすね」


 そう言うと、「それじゃ特進校舎にはいるっすか」と、一番短い校舎を指差した。


「特進校舎と言う事は、進学クラスだけの校舎なんですか?」


「そうっすよ。一から五組までの普通科クラスが、一番長い校舎を使っているっすね。真ん中の校舎は、職員室や図書室、理科室とかの特別室が入っているっす。まあ特進クラスは音楽も科学室の実験もないっすから、行く事はほとんどないんすけどね」と言うと、「そして我らが特進校舎……特別進学クラス校舎は、一階が一年、二階が二年、三階が三年のクラスになっているっす」と、続けた。


 一番短いと言っても、普通科クラスの校舎の四分の一はある長さで、一階に一クラスだけでは、空き教室が目立ちそうだった。


「各階に一クラスしかないと、空き教室が目立ちそうですね」と、思った事を聞いてみる。


「それがそうでもないんすよ。まっ、詳しい話は校舎に入ってからにするっすよ」

 特進校舎の昇降口に向かう犬山に続く。


 三校舎並んだ姿は独特であったが、中に入って見ると、ドラマで見るような、スチール製の下駄箱が並んだ、普通の作りだった。


 私が中に入ると、犬山は戸を閉めた。


「さてと……ようこそ応法学園特進校舎へ」と、校門をくぐったとき同様に、芝居がかった口調で言った。

「ここからは、殺しの話もオッケーの、法律も倫理も道徳も通用しない世界っすよ」


「スラム街みたいですね」


「スラム街よりは治安は良いっすよ。身の安全はうちらNESTが保障していたっすからね」と過去形で言うと、「一昨日まではっすけれどね」と付け足した。


 一昨日までは。


 一昨日に、殺人鬼が出るまでは、安全だった。

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