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波原刑と私の関係  作者: 也麻田麻也
第1章 波原刑と私
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第16話

「そうだよ。まっ、組織の殺し屋は、ピンからキリまでいるけれど、今回の子はピンの子だろうけどね」


 ピンからキリまでのピンならば……凄腕と言うことになる。


「むっ、無理です! 私と刑の二人では。組織の凄腕の殺し屋を三人も殺った相手を暗殺するなんて……せめて響さんクラスの人がいないと」


 語気を荒げ言うと、「僕は行けないんだよ」と、響さんは微笑みながら言った。


「ちなみに、僕だけじゃなく、四季場君、久々利君も巽爺も無理なんだ」


「どうしてですか。響さん達の技量なら、十分可能なんじゃないですか?」


 響さんの挙げた三人は、日向子さんが仲介を行なう殺し屋の中では、最上の技量の持ち主のはずだった。


「技術的には可能でも、年齢的にダメなんだよね」と、肩をくすめて言った。


「なぜですか」と、私が言うと、響さんではなく、日向子さんが答えた。


「今回の依頼は学園に潜入して調査をし、犯人の暗殺を行なうんだけれど、各組の上役の許可が下りたのが、転校生として学園に潜入する事までなんだよね。つまり大人は入れないんだよ」

 大人はと言うところで、自分と響さんを指差した。

「誰でも入れたなんて前例作りたくないんだろうねー」


「ごめんね。力になりたいのは山々なんだけれど、流石に僕が高校に入ったら、怪しまれちゃうからね」


 高校生しか入れないのなら、三十代の響さんに、二十代後半の久々利さんや、四季場さんが入れないのも納得がいく。巽爺は言うまでもない。名前の通り七十代のお爺ちゃんだ。教師役でも入るのは難しそうだ。


「今回も二人で頑張ってね」


 助けを求めることは、出来そうになかった。また封筒を取ってしまった事を後悔した。


「刑はともかく……私が学園に入って大丈夫でしょうか……。犯人に襲われれば、私じゃ対処の使用がないんじゃ……」


 すがるような目を日向子さんに向ける。目には助けてと言う思いを宿す。


「今回の依頼はね、姫路の爺様は秤に依頼したくて、うちに来たんだよね。でも秤は今は働けないし、断わろうと思ったんだけれど、響君が刑ちゃんなら依頼を完遂できるって言うから、依頼を受けることにしたんだよ。響君のお墨付きなんだし、大丈夫だよ」


 親指を突き出すポーズをとる日向子さんから目線を外し、響さんを睨みつける。

 諸悪の根源はあなたですか。


 刑は大丈夫だとしても、私は劣等生の弟子だ。一つも大丈夫ではなかった。


「睨まれるとゾクゾクするから、僕としては嬉しいんだけれど、そんな目をしなくて大丈夫だよ。犯人と相対するのは刑ちゃんだし、エリちゃんの身は、日向子がNESTと連絡を取って、生き残った一人が護衛や犯人探しの手助けするようにお願いしたからね」


 変態的な台詞は置いておくとしよう。


 NESTの人員が手助けしてくれると聞いても素直に安心することはできなかった。その人も容疑者の一人ではないか。


「今回はNEST側の落ち度もあるみたいだし、ゼロ円で手伝ってくれるから安心してね」


 確かに無料で組織の殺し屋が手助けや、護衛をしてもらえるのは、身の安全的にも、お金の面でもありがたいことであった。


 これでその人が犯人でなかったら、言うことない。


 日向子さんは、まだ納得していない私の肩をぽんぽんと叩くと、「さぁ、依頼を受けちゃったんだから、覚悟を決めて頑張ろう」と弾むような声で言った。


「目指せ五百万だー。エイエイオー」

と、日向子さん。


「エイエイオー」

 ハイテンションな日向子さんの声に、響さんも元気よく乗った。


 私もやけくそでテンションを上げる。

「エイエイオー」と、拳を突き上げる。


 もうやるしかなかった。


 やり遂げて、生き残るしかない。


 刑と二人で。


 心を決めると、また疑問が頭に上った。


「あれっ。でももうNESTに私に協力するように連絡をしているってことは、私が依頼を受けるって分かってたんですか?」


 私の質問に、日向子さんと響さんは顔を見合わせる。


「お金にがめついもん」

「お金にがめついからね」

と、声を揃えていった。

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