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波原刑と私の関係  作者: 也麻田麻也
第8章 殺人鬼ハイドと探偵
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第114話

 朝、自身が言っていたように、靴のサイズを当てられる人間はNESTの中にもそうはいない。


「考えてみれば最初からおかしいんですよ。犬山さんは情報提供してくれましたが、この情報を整理すると、十六人殺すのは至難の技だから、犯人は二人いる可能性が高い。青葉さんが生存しているのは犯人にとって都合が良いから。そして保険医は首里組みの人間だ。これは全部姫路姉妹に疑いを向けさせるための証言ですよね。つまりこれは意図的にゆがめられた情報、信頼できない語り部ですね」


「面白いっすけど、その仮説には一つ重大な欠点があるっすよ。どうしてうちがアオちんを庇うんっすか? 庇う理由がどこにもないっすよ。エリちんは意図的にゆがめられた情報って言ったっすけど、それはうちがアヤちんサヤちんが犯人だと思ってたから、無意識に強調して話しちゃっただけだと思うっすよ」


「庇う理由ならありますよ」


 余裕を見せながら話す犬山の眉がピクッと動く。


「犬山さんが庇った理由は――仕事だからじゃないんですか?」

 そう言うと私は青葉を見る。


 この推理が当たっている自信はあったが、反面外れていて欲しいという思いもあった。


 もしも事実なら傷つく人が間違いなくいるのだから。


「犬山さんは事件の時に学校にいなかったとは言え護衛任務に失敗しています。教室でのいざこざや殺し合いを止めるのがNESTの護衛の役割ですからね。けれど、失敗してるというのにまだ処分されていません。それはなぜか? 答えは任務の失敗をしていないからです」


「エリちんは何を言っているんすか? 護衛失敗なのに、任務に失敗していない? 意味がわからないっすよ。うちが死んでいないのは生存者だから証言を吐かせるために生きているだけっすよ。この事件が解決したら、後ほど処分が下るはずっすね」


「いえ、処分は下りません。なぜならあなたの任務は青葉さん個人の護衛のはずですから」


「アオちんの護衛? どうしてそんな突拍子もない推理が出来るんすかね?」


「突拍子もないわけじゃありませんよ。皆さんのお話を加味して推理すると、この結果に辿り着くんです。青葉さん、お父様のお名前を教えていただけますか?」

 青葉に向き直り質問をする。


 青葉の眼鏡にちょうど太陽の日が当たり反射し、表情を読み取ることが出来なくなった。


 今の彼の心境はどうなっているのだろうか。


 うろたえているのか、それとも笑っているのか。


 殺人鬼ハイドの心情は見えなかった。


「お義父さんは、青葉鏡齋だよ」


「それは今現在の養父ですよね。実父の名前をお聞きしたいんです」


 亜弥も沙弥も知らなかった青葉の実父の名前。

 分かっている事は青葉鏡齋の遠縁に当たる人物と言うことだけ。


 しかし、ここに犬山が護衛でついていた事を考えると答えは変わってくる。姫路を継ぐ沙弥や偽りの長女亜弥ではなく、青葉に護衛が付いたと考えると答えに結びつく。


「青葉鏡齋は姫路叡山の遠縁ですよね。そして青葉昂弥さんの実父は青葉鏡齋の遠縁に当たる――つまり青葉昂弥の実父は姫路叡山なんじゃないですか?」

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