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銃工へ

 フランスの片田舎。周囲には牧場や農園が広がり、如何にも穏やかな雰囲気の村であった。

その村の舗装がされていない道路を、ナキアとシオンは並んで歩き、ある一軒家の前で足を止めた。


 その家は平屋建てで、煙突からは白い煙が上がっており、家の中に住民が居ることを示していた。

『ジョン・ドゥ工房』とプレートが付いた扉を、ナキアは数回、ノックした。


「ああ、鍵は開いているから、勝手に入ってきてくれ」

中からしわがれた男の声。


「お邪魔するわね」


ナキアが扉に手を掛けて、家の中に足を踏み入れる。


「お邪魔しますー!」

そのナキアの背を、チェーンソーを背負ったシオンが続く。


 

 ナキアが中に入ると、のそりと中から大柄の男が現れた。

男は白ひげを蓄え、顔には幾筋もの深いしわが刻まれていた。男はナキアとシオンに軽い挨拶をすると、タオルで汗を拭う。タオルにはジョン・ドゥと小さく刺繍されていた。


「最近、ご無沙汰じゃないか。おう?」


「久しぶりね、ジョン。最近、少し忙しかったのよ。顔を出せなくて、ごめんなさいね?」


「まったく、今じゃあんたらしかお客は居ないんだから、もっと来てくれよ」


「こんな世の中じゃ、銃工ガンスミスなんて、流行らないわよねぇ」


「今まで、いろんな不況があったが、”天使不況”なんて聞いたこともねぇさ。 ……で、ナキア、今日はどうした?」


「銃の調整と弾薬補給。あとは、シオンのチェーンソーの調整もお願い」


 ナキアはシオンに視線を送ると、シオンは背負ったチェーンソーを降ろす。

「お願いー!」


シオンはジョンの前に、チェーンソーの刃を突き出す形で渡そうとするが、ジョンはそれを迷惑そうな顔をして手で避けた。


「シオン、それじゃあ危ないでしょう? 人に刃物を渡すときは、刃を相手に向けては駄目よ」


「ごめんなさいー」

シオンは見るからに、しょぼくれた顔をして、今度はチェーンソーの本体をジョンに向けて手渡す。


「……いつも思うんだが、このお嬢ちゃんが俺の何倍も生きてるなんざ、信じられんな」


「生きた年数だけで、相手を推し量るのは愚の骨頂よ」


「ああ、『生きた年数ではなく、得た経験と知識が人を作る』。あんたがいつも言っていたヤツだな」


「そうよ。だから、人間を相手にするといつでもワクワクしたわ。 ……今の天使たちの世じゃ、何も楽しくないけどね」


 ナキアは工房のイスに座ると、大きなため息をついた。そのナキアの膝に、シオンが飛び乗る。

ナキアは嫌な顔の1つもせず、シオンの頭を優しくなでると、ジョンに視線を送った。


「それで、調整にはどれくらいかかりそう?」


「4時間だ。その間、妻のジェーンとでもお茶を楽しんできてくれ」

ジョンが指さす先、工房の外から、1人の老齢な淑女が手招きしているのが見えた。淑女は口パクで『クッキーがあるよ』と言っている。

そのことに気がついたシオンは、目を輝かせてナキアの膝から降りると、「クッキー!」と大声で言いながら淑女の方へと駆けていった。


「いつもありがとうね。 お礼にアナタが死んだら、私が地獄に連れて行ってあげる」


「俺にとっちゃ、嬉しい限りだな。 ……悪魔崇拝者の人間は、天使に狩られて少なくなってきているからな。俺のような敬虔な悪魔崇拝者には、生きづらい世の中になったもんだ」


「生きやすい世の中なんて、あったの?」

ナキアはクスクスと笑う。


「いや、なかったな」

ジョンはそう言うと、大きな声で笑い出す。少しの間、2人に間に笑い声が響いた。


 少しして、ジョンは真面目な顔になると、ナキアに向き直る。


「……で、今回の大量の天使降臨について、何か分かったことは?」


「少なくとも、ミカエル、ガブリエル、ラファエルの3大天使が関わっていることは確かね。 ……あとのことは、彼らに直接聞くしかないわ」


「そいつらか……ラファエルは今、日本に居ると聞いたことがあるな」


「初耳だわ。どうしてその情報を?」


「悪魔崇拝者ネットワークで聞いたんだ。 ……あと、前に調べるように頼まれた武器も、日本にある」


「”アマノハバギリ”ね?」


「ああ、この世で初めて天使の羽を切ったという、曰く付きの剣だ。どうもその剣は、ある寺に奉納されているらしい」


「じゃあ、天使狩りと剣探し、両方同時に出来るのね。ちょうど良いわ」

ナキアはイスから立ち上がると、シオンの後を追う。

その背を見ながら、ジョンは仕事の準備に取りかかったのであった。



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