下にいる
今回は少し短めで、1500文字ぐらいです。
一旦、全員が集まって、情報交換と安否の確認を取ることにした。
しかし、集合した部屋の真下では奴が何かをしているのだった
僕と八重、陸と美子がさっきまで陸が探索していた部屋に集まる。
みんなの間に気まずい空気が流れる。
由鶴の事。日記のこと、萌音と由鶴を殺した奴の事……。話すべき事はたくさんあったが、言い出せる勇気すら湧かなかった、
「何か話せよ……」
陸は舌打ちをする。
「……私。これ、見つけた……」
美子が何かが入ったビニール袋を差し出した。
妙に重い。
ビニール袋の中には紙でぐるぐる巻きにされた丸ものが入っている。
「なんだよ。あるんだったら早く出せよな〜。今本っ当に手詰まってんだから」
話しながら陸は巻かれた紙を一枚一枚剥がしていく。
「ん?なんだこの感しょ……くっ!」
陸は紙を剥がし終えたそれを放り投げた。
「どうした?大丈夫か?」
「てめぇ!気味の悪ぃもん見せんじゃあねぇ!」
「ちょっ!大声出すな!」
八重が地面に転がったそれを見にいく。するとみるみるうちに顔が青ざめていった。
一体何が?美子は何を拾って来たんだ?
気になった僕はそれに懐中電灯を当てる。
ただの黒い球にしか見えないが……。
一歩、二歩と進むごとに球の見える位置が変わり、見えたのは赤黒く光る人の肌だった。
首から下がなく、そこからは少しだけ骨が突起している。
「待って……」
八重が声を潜めて身を屈めた。
ミチッミチッミチッ ミチッミチッミチッ
等間隔で何かを潰す様な音が聞こえる。どうやらしたから聞こえてくる様だ。
「下から物音が聞こえてくるって事は、物音一つでも立てたら終わりってことよ」
「ここから出る?」
「いや、リスクデカすぎるだろ!」
「じゃあここで黙ってるしかないのか……」
未だ続く何かを潰す音の中、僕は意味もなく床に転がった頭を見た。
懐中電灯で照らされた頭の、髪の毛の中に何か光るものがあるのだ。
僕はゆっくり音を立てない様に歩いた。
「おい!義明!何してんだ?ここで黙ってるってさっき決めたじゃねえかよ!」
「違うんだ!この頭の中に……」
僕はしゃがんで髪の毛の中に手を突っ込んだ。とてつもない匂いに花が曲がりそうだったが、やっとの思いで絡まる髪から取り出すことができたのはカミソリだった。少し錆びてはいたが、まだ普通に使えそうだ。
「んなカミソリ一つの為に危険を冒すなよ!」
「いや!僕はこのカミソリは、僕たちの助けに神様がプレゼントしてくれたものだろう」
「どういう事だ?」
「僕は前々から気になっていたことがあったんだ」
「というと?」
これには美も関心を示してくれた。
「この家の構造上、一階の奥の部屋は二つに分かれていたよね。けど、二階に来てみるとその奥の部屋の左側に当たる部屋しかないんだ」
「だからどうしたんだ?」
「まだわかんないのか?」
「もしかして、義明君が言いたいのって、この家に隠し扉があるってこと?」
「そう。そのとうりだ。そしてもし本当に隠し扉があったとするならば、大体どこにあるかなんてすぐに分かる」
「義明……。まさか今から行こうなんて言わねえよな……」
図星だ。そのとうり。今から行こうと思っていた。
「ったく、しょうがねえ野郎だな……」
陸は頭の後ろをポリポリと掻く。
「女子の皆さんはいかが致しますか?」
「わっ、私も行く!」
「八重さんが行くなら私も……」
手を僕に差し伸べる陸。
「だとよ。そうと決まったんなら早く行こうぜ!」
「ああ!」
陸は僕のことを信じてくれた。だからきっと今みたいに僕について来てくれた。この陸の思いは無駄にはしない。的外れな結果なんて絶対に許さない。
今回も読んでいただきありがとうございます
次回『城○内、死す』