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東へ  作者: ハンティングキャット
1/21

オーダー

荒れた大地がどこまでも続く荒野。

空は焼かれ、灰色交じりのくすんでしまった雲ばかり続いていく。

この場所にはないが海も翡翠色と、ひと際目立つ色にまで変色し、森は…異形な物ばかりが目立つ混沌めいた空間へと変貌している。


ある些細なきっかけで起きた戦争・・人間の愚かを示した極めて近く限りなく遠い世界

殆どの生物が死滅してしまった荒野の先にあるとある渓谷に‥‥ひときわ目立つ者が動いていた。


赤茶けた岩肌にとけこむような肌に、五体満足と人間と同じ形状をした身体

彼が歩むたびに腹の底に響くような重低音がなり、バランス崩し反射的に伸ばし8mはある岩の頭頂部側面に手を付けた位置から見てもそれは巨大であることは明白。


つま先や五指に至るまで、全身を人工物で作られた巨大な人型は7mの高さにあるアーチ状の岩場を前に屈み通り抜けていく


とんがり帽子のような頭部にある一つ目は忙しなく左右上下に動き、小石一つ見逃さぬようくまなく辺りを調べ、警戒を露わにしている。


身長12mはゆうにある巨体にも関わらず。あちらこちらとランダムに…岩肌にくっつけたような枯れ木を一つの枝も折らず、上体反らしたり半身避けするなど器用に重心移動繰り返し段々狭くなっていく渓谷の出口へと流れるように進んでいく。


これだけの巨大で重装甲で覆われた体を持つ巨人を脅かす地域特有の生物はこの渓谷、クライン渓谷と呼ばれる地区には存在しない…


ならなぜこの巨人がまるで小動物の如く、警戒を最大に、慎重に行動しているのか?


それは巨人の胸部に左肩…そして背部に明確な答えがあった。


かの巨人の胸部、プレートメイルめいた筋骨隆々な胸下装甲部の一部がまるで花を咲かせたよう‥‥第一第二装甲をへしめくれあげている。

背部の腰骨付近にあるお椀上のスラスターは手酷く破損し今にも誘爆しそうなスパーク光を漏らしている。

一刻も早くと‥‥歩みを早める巨人だったが――突然その動きを停止させた。

まるで、これから起きることを察しっているのか・・・・・

だらんと両腕を前へたらし猫背の体制になると、頭部事左右に動かし警戒を最大限にさせ身構えていく‥‥


次の瞬間――巨人の身体が揺らいだ。

道幅が狭く巨人の身体ではようやく1つ通れるかどうかの幅を強引に体当たりする形でバックジャンプする巨人。


自然の形を残す数少ない渓谷を盛大にぶち壊し、飛び散る岩の破片やら砕く音に交じってソレは飛来した


巨人が避ける数秒前に飛来したソレは瞬く間に巨人が2秒前に立っていた所を通過し、後ろに今も盛大に天然の岩壁を破壊し倒れ掛る巨人の顎をかすめ──岩壁に直撃。

巨人の頭部ほどもある球体上の爆圧を押し広げ、着弾個所を破壊していく弾丸に──

巨人の腹のなか‥…操縦席に鎮座する人間のパイロットの顔が歪んだ。


弾きだされた計算は、確実にこの巨人──XM23、新型機の胸部装甲を貫通しコクピット事破壊する威力。


ちらっとモニター端に映る自機情報にパイロットの動揺はより一層激しくなっていく


丸みを帯びた左肩は前面、第三層までの装甲が全て破損し関節部がむき出し状態になっている‥‥

第一射目で胸部に狙撃のダメージを受け、バランスを崩した

その一拍もなく二射目が飛来し、それが左肩を貫き爆ぜ左側の装甲類は酷い爆傷を浴び、装甲が所々凹み削られた。


だが、それは幸運だった。


一射目のダメージでバランスを崩した際、偶然かかとにあった岩にひっかける形で大きく半円描くようにバランスを崩したおかげでコクピットの直撃は避けられた‥‥。

もし躓かなければ‥‥


今しがた飛来した同型の弾丸に全身に悪寒が走り、迅速に操縦桿を動かし小刻みにペダルを吹かせる。

姿勢制御を整える操作を終えたパイロットは左手の操縦桿を手放し、矢継ぎ早に左肘から手首にかけコクピット左壁面に埋まるコンソールを叩き算出させていく。


ジャミングがひどく砂嵐ばかり映る正面メインモニター端に映るレーダーに悪態付き、いつでもXM23を動かせるよう集中力を高めてく中…左コンソールを叩いていた動体センサーがナニカを捉えた!


パイロットの心情を示すかのよう憤怒交じりの赤黒い一つ目が発光。

動体センサーが掴んだ方角目掛け、操縦桿を握りなおし足元のペダルを踏み抜かせる!!


パイロットの意思に従うよう、弾き跳ぶようXM23と呼ばれる機体は、道行く岩や壁を殴打し破壊、わき目もふらず、真直ぐ、最短へ、走らせていく。


今でのカリを、新型を任されるほどのエリートである自分を、正々堂々ならず邪魔―や設置爆弾によるトラップなどこんな下種がする奇襲仕掛け散々なぶってきた罰を!

逸る気落ちを抑えきれず、渓谷を飛び出す形で脱出したパイロットのメインモニターには‥‥


装甲車が一台。


それもぽつーんと場違いとしか思えるよう砂漠と渓谷の境目にあるだけだった。


一台‥‥、バカな、そんなはずはない少なくとも中隊規模の仕掛けじゃないと、まさか…囮にかかってしまったのか俺は


そんな動揺を嘲笑うかのよう…停車中の装甲車の後部座席天板が開き───


中から目の覚めるような銀色の長い髪と深く青い瞳の少女が姿を現した。


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