覚醒
いつも通りの朝、昨日の不思議な出来事は頭から離れていた。
雨宮は部屋のTVをつけると衝撃を受けた。
TV画面には殺人の容疑者として
青葉高校2年石山たける
1年吉良亮
という2人の学生が映っていた。彼らは雨宮と同じ学校に通う学生であり、顔見知りだった。
石山たける(いしやまたける)
青葉高校2年
金髪で短髪
見るからにコワモテの顔だ。
素行が非常に悪く地域でも悪さで有名。
安達とは入学式のときから仲が悪く喧嘩ばかりしていた。
吉良亮
青葉高校1年
黒髪で前髪が長く目を覆い隠す程伸びている
雨宮も話した事はなく、常に石山のとなりにいるイメージ。印象が薄く雨宮もはっきりと思い出せない。
[石山が人殺し?]
雨宮は急いで学校へと向かった。
学校に着くと多くの新聞記者が校門の前に集まっていた。
雨宮が門の前に行くと新聞記者が一斉に近づいてきた。
「石山容疑者と吉良容疑者についてお話聞かせてください!!」
雨宮は聞く耳を持たず、新聞記者を払いのけて校舎の中に入っていった。
教室には数人の生徒しかいなく、安達は下を向いたまま意気消沈としていた。
「あだち?」
「石山は人を殺すようなやつやない!!
あいつとは喧嘩ばかりしとるからわかるんや」
「ああ‥‥俺も信じてる」
「チャラララチャララ」
安達の携帯画面には
「非通知」
と表示された。恐る恐る電話に出ると、電話の主は石山からだった。石山と分かると安達は椅子から立ち上がり
「石山!!どういうことや!!」
「安達瞬君お久しぶりです。」
石山の声が明らかに変わっていた事に驚きながらも
「どこにいるんや」
「安達瞬、決着をつけようか」
「どこにおるかきいてるんや!!答えろ!!石山!!」
「勝負してくれるって事やな、俺は青葉第3倉庫にいる。急いで来い!
あと変な真似をしたらお前の大事なお友達がどうなるかわからんからな」
「助けて~~!!だいちゃん!!瞬君!!」
その声は雨宮の耳にも聞こえていた。
「安達!!今のななの声だよな!!」
安達は聞く耳を持たず、携帯をへし折り教室を飛び出した。
その時の安達は鬼気迫る顔をしていて、雨宮は何も言えなかった。
「待てよ!!」
雨宮も教室を飛び出し追いかけたが100mで全国大会に出場した安達の足には到底追い付けない。
安達を見失った雨宮はただがむしゃらに走った。
するとどこからか凄まじい音が響き、音のする方に向かうと、
そこには岸本公平と殺人の容疑がかかっている石山まさると真っ黒なフードを被った男………
そして鈴木七瀬の姿があった。
岸本公平
青葉高校2年
金髪ショート
安達とはつねに一緒にいて喧嘩仲間である。
彼も陸上をやっていたが足の怪我で断念した。安達と同じ悩みを持つ者としてお互い励まし合う大切な関係。
雨宮が到着する頃には岸本は身体中傷だらけで意識不明、岸本は教室で怒り狂う安達を目撃し気になり追いかけてきたみたいだ。
安達が声を荒げて言った
「岸本は関係ないやろ!!」
それを聞いて石山は軽く笑い、鈴木を指差して言った
「きっかけが必要でな、覚醒するための……この女じゃ弱いみたいだから」
「覚醒??何言ってやがる!!」
「しゃあねぇな!!見せてやるよオレの力を」
そう言うと石山は自分の左手で右手を抑えて叫んだ
「うぁぁぁ!!!!!」
石山の右手は真っ赤に染まり、はちきれんばかりに大きくそして伸びていき、大きさは元の何倍にも晴れ上がり、長さは手の甲が地面についていた。
雨宮 安達 鈴木は唖然とし
石山は息を乱しながら
「これが俺のVisionだ」
「Vision………なにいって」
その瞬間に石山の腕が伸びて安達の腹部に直撃し凄まじい勢いで壁にぶつかった
「ぶわっ!!!」
口から血を出し倒れこんだ。
石山は岸本の頭を掴み引きずりながら安達に向かってゆっくりと歩いてく
[なんとかしないと……でも………無理だよ…………]
雨宮には石山に立ち向かう勇気はなかった。
石山は安達の目の前に立ち岸本の頭を持ち上げ
「覚醒のための生贄としようか」
「やめてくれ…………やめてくれ………やめろや!!!」
石山は躊躇なく岸本の頭を握り潰し高笑いをした
「……………………………………………………」
岸本の血が安達の身体全体に飛び散り、真っ赤に染まり
安達は崩れ落ち、数秒間沈黙に包まれ、鈴木が叫んだ
「いやぁ~~~~!!!!!!」
「..............」
「..............」
ゆっくりと立ち上がり叫んだ
「いしやまぁぁぁぁ~~~~!!!!」
明らかにさっきまでの安達とは違った。
すると目に見えぬ速さで石山の背後に回り込み蹴りを入れる、
石山は意表をつかれ飛ばされた。
さらに安達は飛ばされている石山の背後に一瞬で回り込みまた蹴りを食らわした。
石山はなんとか体勢を立て直し
「やっと覚醒したか……………これがお前のVisionか面白い」
不気味な笑みを浮かべると右手を構える。
しかし安達は一瞬のうちに石山の目の前に移動し、拳を振り上げた。
すると!!
後ろにいたはずのフードの男がいつの間にか石山の前に立っており、両手をあげて何かを呟くと安達の前に黒い影が現れた。
安達は勢いあまり影の中に入っていき、フードの男と共に消えていった。
[いったいどうなってるんだよ]
そう思った矢先、石山は鈴木に向かって歩いて行く
[なな!!ななが危ない!!くそっ!!
なんで動かないんだ!!]
雨宮は恐ろしさのあまり足が鉛のように重くなっていた。
その間も石山は鈴木に近づいていく。
[動け!!動け!!動け!!動け!!…………………………………………俺がななを助けるんだ]
肩の力が抜けたのか重かった1歩を踏み締め
「ななに近づくな!!!」
石山はゆっくりと振り向き言った
「お前は…………………雨宮か………この女が欲しいのか?」
気を失っていた鈴木を持ち上げた。
「その汚い手を離せ!!」
「威勢だけはいいな、まぁいい………この女は用済みだ」
そう言うと鈴木の頭を掴んだ。
「お別れだ」
「ななを………ななを………離しやがれ!!!!!!!!!!!!」
その言葉と同時に倉庫に大きな地響きが起きた。
「何???お前もVisionの力を………なるほど、力が弱すぎて気付かなかったのか………だがまだ完全に覚醒はしてないみたいだな」
石山は少しの間沈黙し数秒後口を開き
「こいつは預かった……人柱としてな………返して欲しければお前のVisionを覚醒させてみろ
俺達は能力者を集め、東京で作戦を実行する」
そう言い残し石山は黒い影に覆われ姿を消し
雨宮はただ1人その場に取り残された。