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密室へようこそ

作者: いおすけ

人は死ぬと

自分の姿を空中から眺めるって

どこかで聞いたことがある。


たしかにそうだった

眼下の僕は便器に腰かけ

頭から血を流して死んでいる。


映画なんかだと壁をすり抜けて

ふらふら出歩けるけれど

どうやらそれはフィクションのようだ。

分かるのはここから見える範囲の事だけ。


自殺か?他殺か?


自殺の動機は無い

特にいい事も無かった代わりに

嫌なことも無かったはずだ。


友達もいた

いいやつばかりじゃないけど。


彼女もいた

すごく美人ではなかったけど。


不意にチャイムが鳴る

玄関のドアから声がする。

「そのまま聞いて、昨日のこと謝ろうと思って来たの。

もし許してくれるなら開けて。」


しばらくの沈黙


彼女の声だ

その時、僕の体が仰向けになる。

後頭部が壁にぶつかって派手な音をたてる。


「いるんでしょ?」

外まで聞こえたのだろう

彼女の声は涙声に変わっていた。


やがて立ち去る足音。


倒れた僕の体の影に

今まで見えなかった血に染まったはさみ。


凶器に違いない

一体誰が・・・・


ドアにはもちろん鍵がかかっている。

争った形跡はない。


ふと視線を上げる

それを見たとたん全ての謎が解けた。

フラッシュバックする記憶。


そこにあったのは

袋とじ付きの雑誌(もちろん大人向け)


切れたトイレットペーパーを補充しようと手を伸ばした僕に

前日置き忘れたはさみが襲い掛かった。


もし僕に袋とじを素手で切り開く勇気があれば起こらなかった

不幸な事故だった。


そのとき

棚のトイレットペーパーが転がり落ちて

ぼくの股間を隠す。


いつか誰かがこの現場を発見して

この真相を解き明かすだろうか?




恥ずかしくて死にたい。


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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 始まりから終わりまでさくさくと読ませていただきました。
[一言] いつも思うんですがお上手ですよね。作者さんの短編集とかあったら買うかも。
[一言] とてもテンポ良く読めて、最後まで小道具が聞いていて、落ちもうまかったです。 これから他の作品も読んでみますが、同じだけのレベルがあれば、これはもう買いでしょう。
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