オシドリラボ
「なんだ……あれは……」
勢い良く外に出たまでは良かった。だが、偽ミリオンバンブー林の方角を見て絶句した。
普段、小屋の前から偽ミリオンバンブー林を確認することはできない。しかし今、その位置が、夜空に届くほどの緑の炎ではっきりとわかった。
短時間で、ここまで火災が巨大化したのか。ますますやっくんが心配だ。
「トリ、キタ。ジブン、イク」
隣にカタコトの助手さんがいた。もう構っていられない、走ろう。走りながらでも、二つ、三つくらいは情報が聞き出せるかもしれない。
「悪いけど、僕は走るよ。キミには小屋で待っていて欲しいけど、ついてくるなら止めない」
偽ミリオンバンブー林の上空の空は明るいが、手元には懐中電灯一つだ。おまけに足元も悪い。全然早く進めない。
「ハシラナイノ?」
「これでも、全力なんだよ!! 嫌なら戻ってくれ!!」
僕らしくもなく、強い口調で言ってしまった。
「……」
カタコト助手さんは二十代半ばくらいか。きれいな人だが、無表情になると途端に作りものっぽい仮面のような顔になる。と言っても、薄暗い中、一瞬目をやっただけだから、思い込みかもしれないが。
「キミ……助手って言ってたけど……誰の?」
息切れで、途切れ途切れに尋ねた。
「オシドリラボ」
一方の助手さんは、全く呼吸が乱れていない。アスリートとか、軍隊上がりとか? それより、オシドリラボってなんだ? 聞いたことがない。
「どこの研究施設ですか?」
鳥のことや、偽ミリオンバンブーに詳しそうだったし、そういうラボの人だろうと思った。
「ケンキュウシセツ……? ニゲナイト、トリ、アブナイ」
日本語が不自由だもんな――。話題を変えよう。
「鳥が、危ないってどういうことですか?」
僕にとっては、異能を食べてもらうことも大事だが、やっくんを失ってまでの価値はない。
「トリノショウタイ、オシドリラボ、シッテル。ソレハ——」
肝心なことは、いつもこうやって遮られる。
怪しく輝く偽ミリオンバンブー林の方から、爆発音が鳴り響いた。




