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不自由の自由

「やっくんは不自由になりたかった」


 わたしの言葉に、青年が頷いた。


「ああ……やっぱり君にはわかるんだね。わたしもだ。だから、彼に手を貸した。だから、やっくんはわたしに『鳥』を掴まえたいって言ったんだよ」


     *


「どの鳥のことかな?」


 わたしがこれまで注意を払っていなかっただけで、鳥類は国内だけでも六百種類以上いると聞いたことがある。

 もちろん、やっくんが言っているのは、そういう調べれば出てくる鳥とは違う。


「そもそも、やっくんはどうしてその鳥の存在を知ったの?」

 島に向かうボートの上で尋ねた。


「人に聞いたんだ。その鳥に異能を食べられて、不自由を得て自由になったという羨ましい人にね」


 なんて幸運な人なんだ――心底そう思った。


「異能を食べるってどんな風に? その鳥は年中、偽ミリオンバンブー島にいるのは確かなの? その人はどんな異能を持っていたの? 今、幸せにしているの?」

 わたしをなだめるように、晴れた海の風が柔らかく身体を通過した。


「トモくん、一度にそんなにたくさん質問されても困るよ。その鳥――ビリオンバードが年中この島にいるのは確かだよ。というより離れられないんだ。鳥の食料は唯一、ミリオンバンブーだけなんだから」

 そう言って、遠くに浮かぶ島を見つめた。


 ミリオンバンブーのほかにも植物が豊かなその場所は、緑というより青に近く感じた。


「その鳥も、不自由なんだね……」

 わたしのつぶやきに、やっくんは口元に寂しそうな笑みを浮かべただけだった。


 わたし達が子どもの頃、クラスで超能力がブームだった時期があった。テレビでも連日似たような番組が流れ、翌日はその話題で持ち切りだった。

 わたしがどう話に入って良いのかわからず下を向いていたのに対して、やっくんはいつも笑顔で輪の中心にいた。


 級友たちは無邪気にはしゃぐ。


『ねえ、超能力を使えるとしたら、何が良い?』

『ひとつだけ? じゃあ……テレパシー!』

『ボクは、アレ! なんだっけ、サイコキネシス!』

『なあ、超能力が使えたら、便利だよな。俺なんか、毎日学校なんか来ないで、自由に過ごす!』


 自由に――か。僕は嘘を本当にする舌を持っているけど、とても不自由だ。

 力をうっかり使わないようにすること、これに神経をすり減らしている。別に、みんなから変な目で見られるのが嫌だとか、そんな理由じゃない。


 罪悪感だ。自分のせいで争いが起こる、自分のせいで憎しみが生まれる、自分のせいで誰かが死ぬ――。

 わたしはそんな経験をしたことがある。わたしはもう天国には行けない。


 わたし達ほど、不自由な人間はいない。

 身体が自由でも、精神は牢獄から出られない。


 いっそこの力が、罪悪感など微塵も持たない、生まれついての悪人の手に渡っていたら――そんなことさえ思った。


 わたしもやっくんも解放されて自由になりたかった、それだけなんだ。

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