共同生活
そんな彼から電話があったのは、三日後に移住を控えていた時だった。
文字だけでやり取りした時間の長さをすべて洗い流すような、透き通った水のような声だった。
最初は、ただの帰省か出張かと思った。だが、さっき彼は確かにこう言った。
「偽ミリオンバンブー島に行きたいんだ」
これは運命だと確信した。
彼と、あの島で、二人きりで過ごすんだ――。そんな夢想が一秒足らずで心に満ちて、口から溢れ出た。
「ボク、あの島の管理人になったんだよ。一緒に住まないかい? 狭いけど、ちゃんと家もあるんだ。秘密基地みたいだよ。ボク達、そこで過ごそうよ」
知らない人が聞いたら、愛の告白のようだ。おっさんが、おっさんに。
だけど、わたし達のはそんなんじゃない。異物同士――。
世界に居場所がないもの同士の絆だ。
「本当? 夢みたいな話だな」
ああ、やっぱり彼も望んでいたんだ。これからは二人、肩を寄せ合って、何も恐れず過ごしたい。
目を輝かせるわたしを少しも気味悪がる様子がない彼は、やっぱり最強の異物、わたしのヒーローだ。
こうして、わたしは彼を連れて偽ミリオンバンブー島に向かった。もちろん、他の人たちには秘密で。
島での生活は、それは楽しかった。
こんなことなら、もっと早くに彼を誘って、こうすべきだったと思った。
彼も幸せそうだった――というのは、わたしの思い込みだろうか。
そして『偽ミリオンバンブー』もすぐに見つかった。
わたしのように植物に興味のない人間にも、それはわかりやすかった。
しかし同時に、今まで発見されなかった理由も理解した。
それは島の内陸にあり、決して海側からは見えなかった。さらに、昼間はただの緑色の葉を持った木々だ。
しかし――。
初めての夜、わたしは目を疑った。
偽ミリオンバンブーが、一斉に光り出したのだ。
もちろん、わたしもこの木が光ることは聞いていた。記事にあった『夜光樹』は本当に存在していたのだ。
しかし、これほどまでとは――。
「スフェーンで出来ているようだね……」
隣でやっくんも息を呑む。
スフェーン……。呪文かと思った。これも後からネットで調べたら宝石だということがわかった。そんな物とは無縁の人生なので、知らなかったのは仕方ない。
緑色が、光の加減によってその輝きの種類を変化させる石。
わたしが唯一知っている宝石、ダイヤモンドより美しく見えた。
なんというか、生きた森をその内側に持っているような佇まいだった。
その石にそっくりな木々が、たった十メートルほど先に林となって生息している。
「トモくん、行ってみよう」
断る理由なんてない。
遠い昔に置いてきてしまったはずの、冒険心と純粋さが心に満ちた。
よかった――失くしていなかった。
「うん、ずっと奥まで行ってみよう――」




