僕たちの絆
「新・ビリオンバード……。絶滅したという鳥の名前ですか」
青年が考え込むように、ゆっくりと言った。
「なあ、場所を移動しないか。わたしも洗いざらい話してしまいたいが、ロビーではなんだ。この『蔵』には個室のあるカフェが併設されているんだ。そっちで教えよう」
拒絶することもなく、別館の喫茶店についてきた青年――ヨシカズくんに、わたしの方が不安を隠せない。
彼にとっては初めての場所なはずなのに、まるで自分の家のようなくつろいだ表情を見せている。
これは自分の方が優位である、という無言の圧力だろうか。そういえば、あの鳥もそうだった――。
「こういうカフェ、珍しいだろ?」
青年が言葉を発しないので、仕方なく、わたしから話題をふった。
「ええ、あの店に似てるな……。最近、社長に連れて行かれたイタリアンに雰囲気がよく似てる。そんなことより、あなたの話の続きを」
なるほど、一緒に食事に行くほどには親しいのか……。ならば話しても差し支えないだろう。
「わかった。あれは二年前の春のことだ――」
♢♢♢
「やっくん、全然変わらないじゃないか!」
空港で、恥ずかしげもなくハグを交わしたあと、わたしはまじまじと彼の顔を覗き込んでそう言った。
「そんなわけないよ。最後に会ったのは何十年前だ? おじさんが小学生のままなんてあり得ない」
満面の笑顔でわたしの肩を叩く彼は、やっぱりあの時のままだ。
「いや、本当に君は変わらないよ。僕はおじさんになっただろう? それで、どうしたんだい? 急に戻ってきて。電話じゃ全然教えてくれなかっただろ?」
興奮して矢継ぎ早に質問するわたしに、やっくんはおっとりした口調で答える。
「そうだったね……。君にはきちんと伝えておかないといけない。屋上に行こう。春風が気持ちいいし、僕は飛行機を見るのが好きだ」
知ってる――。彼は子どもの頃もそう言っていた。同じ口調で。
衝撃の話がやっくんの口から洩れた時、飛行機が頭上を通り抜けたものだから、聞き間違えかと思ってしまった。
「もう一回、言ってくれ……」
「だから、僕らを救ってくれるかもしれないんだよ。その鳥が」
信じられない――。救いが見つかったなんて……。
「トモくん、僕は確かめに行かなければならない。君、今、この町の観光課に勤めていると言っていただろう? その島――偽ミリオンバンブー島へ、何とか上陸できないだろうか。ダメ元で聞いてる。君の立場もある。一緒に来てくれなんて言わない。ただ、僕は一人でも島に渡る。見ないふりをしてやってくれないだろうか」
この時、わたしの気持ちはもうとっくに決まっていた。
だから、ゆっくり聞いた。
「その鳥に名前はあるの?」
「まだ存在は認められていない。UMAみたいなものだ。でも、一部の人間の間ではこう呼ばれている。ビリオンバード、と」




