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真・ビリーバー

 外で雷が鳴った。

 分厚い蔵の壁すら振動させて。


「……待て、待ってくれ」


 思わず、頭を抱えた。怖い、怖い――。雷は怖いんだ――。わたしの嘘を暴きに来ているようで。


「あの……鳥が……絶滅していない可能性があると?」


 絞り出すように言ったわたしに、青年が凍った視線を向けた。

 思わず耳を押さえる。


「大丈夫ですよ。いくら俺でも、いきなりこんな場所で耳を凍らせたりはしない。それに、俺の異能を使うには、個人的に強い思いがなければいけない。あなたにそこまでの感情はありません。それより、あなたこそ、知っていることを話してください。社長は俺に嘘を言っていた。それでも、俺はあの人を嫌いになれない」


 信じて良いのか?


 わたしの異能――ろくろ舌は、嘘を信じ込ませることはできても、嘘を聞き分けることはできない。


 でも、話すことにした――。

 雷のせいだ――。空の咆哮に追い立てられるように、思わず口を開いてしまった。


「あの火事の原因は、雷なんかじゃない。放火だ」


「放火?」


 無表情だった青年の瞳に、僅かに好奇心の光が差した。


「ああ、そうだ。でも、まずはわたしと社長の関係を簡単に話しておこう。わたしと彼は幼馴染だ――」


 青年が黙って頷いた。まるで、知っていたように――。本当にやりにくいな……。


「君の社長もこの町の出身だ。とは言っても、彼は小学三年の冬休みの間に引っ越してしまったがね。想像がつかないかもしれないが、子どもの頃のわたしはかなり人見知りでね……。そんなわたしの数少ない――いや、唯一の友人が彼だった。それが一言の別れの言葉もなく、いなくなってしまったんだ……。この世の終わりかと思うほど絶望したね」


 あの時のことを思い、急に心だけが少年時代に舞い戻った。


「それで? 社長とはその後?」


 青年がワインで口を湿らせながら、先を促してくる。

 その仕草も表情も様になっていて、とても最近ワインを始めたようには思えない。


「手紙が来たんだ。それで、彼が東京に行ったことも知った。父親の仕事の都合で――なんて書かれていたけど、嘘くさかった。異能なんて持たずともわかるような、そんな白々しさだったよ」


 少し雷が遠のいた気がする。現実と向き合うことを決めたわたしを、許してくれたのだろうか。


「それからも、何度か手紙のやり取りをした。年に数回だったが、なんとこの歳になるまで続いていた。でも、会ったことはおろか、電話もしたことがない。彼が、それを避けている風だったからね。だから二年前、彼がこっちに来ると聞いた時には驚いた。ある研究に憑りつかれていると言ってね。その研究の舞台が、あの島――偽ミリオンバンブー島だよ」


 青年が頷いたが、その目の奥の感情は全く読めない。


 仕方なく、また一歩、真実に向かって進むことにした。


「彼が調査に来た目的は、研究室を借りることでも、偽ミリオンバンブー島に住むことでもない。それは――」


 酸素が急に薄くなったような気がして、深く息を吸い込んだ。


「それは――真・ビリオンバード、通称、ビリーバーの調査だよ」

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