4.賢者から始まった異変
「またのご来店をお待ちしております!」
俺は勢いよく頭を下げる。
今日最後の客が出ていき、閉められた戸についている鈴の音が完全に収まった後、俺は頭を上げた。
ふうっ、疲れたーっ…!!
俺はぐいっ、と伸びをする。
さて、店仕舞い店仕舞い~…
俺は外にかけているのれんを取って中に入れ、入口の電気を消し、戸の鍵を閉めた。
よし、母ちゃんの様子、見に行きますかね。
俺は階段を上り、母ちゃんの寝ている部屋に入った。
「母ちゃん? 大丈夫? 今日は店仕舞いしたよ、今日分の売り上げはここに書いてるから。」
俺は母ちゃんの横に売上表を置いた。
「ありがとねぇ……ごめんねぇ、全部任せちゃってねぇ…」
俺は心の中でほんとだよ、と呟きながら、大丈夫と愛想笑いを浮かべる。
「ちょっと私、薬飲んでも良くなる気配ないから、しばらく店はよろしくねぇ……」
「あ、そっか、店は任せて」
俺はにこっと母ちゃんに笑みを浮かべる。
「じゃあ、今日はこんくらいで。早く良くなるといいね。じゃあね。」
俺はそう言い残し、母ちゃんの部屋を出て、自分の部屋のベットに飛び込んだ。
あーーあ、疲れた。
意外と俺、母ちゃんに頼ってたんだな。
一人で営業すんのも大変だなあ…
…………ま、そんなことは置いといて。
今日の収穫をまとめますかね。
俺はむくりと起き上がり、大学入試の対策本の中に紛れた、水色のメモ帳と真新しいシャーペンを手に取った。
俺はメモ帳の表紙に『ひより亭の謎』とそれっぽい名前を書き、メモ帳をめくった。
さーて、最初は何を書きますかね?
俺は三十秒ほど悩み、日付順で異変を箇条書きに書いていくことにした。
『一日目
・異世界から来た魔王が現れる(その前からも転生者らしき人物がちらほら見えていた)
・魔王がテンセイレビューというアプリで口コミ投稿
二日目
・開店前から転生者の行列(魔王の口コミによる影響が大きいっぽい)
・賢者っぽい人来店(境界の店とか言ってた)
・賢者が座った席に焦げ跡(タバコなど確認できず)
~~~その他異変リスト~~~
・焦げ跡が大きくなる
・賢者来店後に来る客は全て顔の頬に痣がある
・仏壇に飾っているばあちゃんの写真の端に焦げ目
・母ちゃんが病院でも診断不可の病気に感染
三日目
・サファルコ教会の信者で探検家のアルスさんが教会の仲間を十人ほど連れて来店(その中にトウロさんという方がいた)
(以下、アルスさん情報)
・頬の痣はサファルコ教会の信者特有のもの
・教祖が境界の店を見つけた際、焦げ目をつけ、信者の痣に反応させて行かせる
・行かない信者もいるため、時間が経つごとに焦げ目は大きくなる』
そこまで書いたところで、俺はメモ帳を閉じた。
ふうっ……さて、今分かってるのはこれくらいだな。
俺は自分が書いたメモを少し眺めて、まくらの横に置いた。
よし、寝よう。
俺は風呂に入り、歯磨きを済ませ、パジャマに着替えて布団をかけた。
俺はしばらく天井を眺めて、眠りについた。
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