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SAKI  作者: 秋葉
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8/13

SAKI08

「では、始めて。」花雪が言う。


《合力!》


押ケ峠(おしがと)はバク転しながら薙刀に変形し 佐姫(さき)は押ケ峠と一緒に攻撃を始める。


鋭く無数の攻撃を飛ばし、走り、柄を使って突きを繰り出す。


花雪は顎をなでながらそれを見ていた。


「はい。とめて。」佐姫は攻撃をとめる。


「まず、範囲を広げて攻撃を飛ばして、次に収束させて攻撃を飛ばせますか?」


「収束させたことはありません。」佐姫が答える。


「そうですか。では、それを稽古していきましょう。」


「わかりました。」


佐姫は動かないで薙刀で広範囲攻撃、それから収束攻撃を試す。


「あっ。」佐姫が声を上げる。


「そう。そういうことなんです。」花雪が説明をする。


「まず、広範囲攻撃で相手の速度、方向、加減速などを測るんです。それが分かったら攻撃を収束させる。

これで相手は簡単に逃げられなくなります。うまく収束攻撃を当てれば、相当のダメージを与えられるでしょう。」


花雪は佐姫を見つめてにっこり微笑む。「毎日稽古をしてみて下さい。出来るようになったらまた見に来ますから。」


次にあずが佐姫の稽古を見る。


あずがにこーと、笑顔を見せながら言う。。「ちょっと見ててね。」まるでオーケストラの指揮をしているように両手を前に出し振りながら、雷撃を出す。


「バリバリバリバリ!!」


ものすごい音と迫力に、佐姫が呆気にとられた顔で見ている。


「水に逃げる(もののけ)と、聞いたわ。だったら、雷撃はとても有効よ。」


佐姫があれっ?と思ったのは、さっきまで大人の女性だったあずが、なぜか佐姫と同年齢の雰囲気になっていることであった。


ーあず、やり過ぎです。


花雪が顔をしかめて言う。


あずは舌をペロッと出して笑っている。


「これが出来るまで、嫁と稽古をして下さい。」花雪が言った。


「はい。まず、真似をしてね?」あずが両手を前に出して指揮を取るように手を振る。


サキは見様見真似であずの真似をしている。


一時間くらい立った頃「そろそろよさそうね。」あずが佐姫の後ろに回り込んで背中に両手を付けた。


「きゃぁっ!」佐姫が叫ぶと同時に佐姫の両手指先から「パリッ・・・」っと火花が出た。


「びっくりした?ごめんね。」あずがあやまる。


「いいえ。すごい!すごい!」佐姫はとても喜んでいる。「できた!!」


「今はきっかけに過ぎません。これも毎日稽古を続けてくださいね。」花雪が言った。


そして池田温泉。


今日は佐姫と押ケ峠とあずの三人で温泉に浸かっている。


佐姫はあずに興味津々。


「どうして若くなっちゃうんですか?」


「雷撃を大きくするのは、どういうイメージなんですか?」


「・・・どうやったらお胸がそんなふうに育つんですか?」


押ケ峠は、長身でスリムである。豊満ではない。


佐姫は成長途中で身体が完成していない。豊満ではない。


あずだけが細いのに出るとこが出ている体型なので佐姫は気になって仕方ないらしい。


「教えてあげるわ。佐姫ちゃん、こっちにおいで。」「はい。」


あずは佐姫をぎゅっと抱きしめる。


ーあたしの娘。


「こうやってね、ぎゅーってすると私みたいになれるわよ。」


「え〜!良いんですかぁ。」佐姫はもともとハグ大好きである。


二人のイチャつきを押ケ峠は遠い目をしてみていた。「このひとたち、おかしい。絶対おかしい。」


そして仙山。花雪温泉。


花雪はひとりで湯船に浸かって考え込んでいた。


「なんと。一番最初に生まれると言われていた女の子が蛭子であったとは。」


花雪にとっても、とても嬉しいことであった。


「これから佐姫を守るために出来ることを考えなければ。」


「最終的には自分で自分を守ってもらわねばならないだろう。そうでなければこの花雪で一緒に暮らさねばならなくなってしまう。あずは喜ぶだろうが果たしてそれは良いことなのだろうか?」


「佐姫は(もののけ)との戦いで、決め手にかけることがある。とどめが刺せないかもしれない。」


ぐるぐる思考を回していた花雪は急に湯船から立ち上がった。「保知石に行こう。」


場所は保知石。


上座で八岐が腕を組んで目を(つむ)って考え込んでいる。下座には花雪が座っている。


「こういうことは可能でしょうか?」


「いや、これは思ったことも試したこともない。」八岐が目を開けて話し始めた。「薙刀に我らの鋼が適合するだろうか?」


「そもそも、すでに攻撃が飛ばせる薙刀なのです。」花雪が言う。


「銘はなんと?」


押ケ峠(おしがと)と、聞いております。」


「なんと。そうであったか。あれはもともと佐毘売のものだ。ならば可能であるな!」八岐の顔がほころぶ。「花雪、そなたの刀、前に根の国で薙刀と同じ様に使ったと申したな。それで大国の身体を滅したと。」


「はい。二本の刀を柄の部分で合わせて・・・」花雪もハッとする。「そうか。そうですよね。」


花雪は礼もそこそこに八岐の元を退去して佐毘売の宮へ飛んだ。


あずと佐姫は池田から帰って来ていた。


「見てほしいものがある。」花雪が言う。


千畳敷。二人を前に花雪は刀を出す。そして柄のところで刀を合わせて薙刀状に変えた。


「ぶうおおおぉぉぉぉぉ・・・」大きな風切り音とともに回転が始まる。


刀をしまいながら佐姫に言う「やってみませんか。」


《合力》掛け声とともにまばゆい光に包まれた白装束の佐姫が押ケ峠を回転させてみる。


『ち、ちょっと、ちょっと〜!』押ケ峠が叫んだ。


慌てて回転を止める佐姫。


ぽん!という音とともに押ケ峠が現れて、ふらっと倒れ込んだ。


「大丈夫?押ケ峠?」


『ごめん。目が回った。も一回池田に行ってくる。』ふっと押ケ峠が消えた。


「これの稽古をして欲しい。きっと役に立つ。」


「わかりました。」佐姫がこたえる。


「私はそろそろタケルが帰ってくるのでこれでおいとまさせて頂くが、今夜はあずもここに泊まるのだろう?」いつのまにかそばにいてニコニコしているエノを見ながら花雪が言った。




場所は花雪神社。


自転車を押して坂を上がってくる少年。なんだか元気がない。


花雪神社までやってきて「ただいまぁ〜。」と言った。


花雪がでてくる。「おかえり。どうした元気がないな。疲れたか?」


「いや、そうじゃないんだけど・・・。」


「久しぶりに釣りに行くか。日が暮れるまでにまだもう少し時間がある。どうする?柳瀬で投釣りするか?島津屋で磯釣りするか?」


「磯釣りがしたい。」


島津屋の磯。並んで座って磯釣りをする親子。


「父ちゃん。振られたことある?」


「ん〜〜?なんだいきなり。そりゃあ、あるさ。」


「何回振られた?」


「いっぱい振られたな。」


そうか、それで元気がないんだな。花雪は思った。


「ちょっと聞くが、タケル、おまえ、学期ごとに振られてないか?」


「なんで分かるんだよ?」


あ〜。花雪は納得した。タケルもそうなったかと。


「で、どうだ?つらいか?」


「そりゃぁ、つらいよ。かなしいよ。」


「モテる男は、つらいんだよ。」


「茶化すなよ。父ちゃん。」タケルがむくれる。


花雪は言葉を選ぶ。「だがな。相手はどう思っているんだろうな。」


「どういうことさ?」


「相手のお嬢さんはタケルのことが本当に好きだったんじゃないか?」


「じゃ、なんで僕を振るのさ。」


「おそらく・・・。」花雪は少し間を開けた。「みんなタケルのことが好きなんだよ。」


「はぁ?僕、今まで何回も振られたのに。」


「そこだけ見ちゃダメだ。」花雪はタケルに笑顔を向ける。「たくさん出会えただろう?」


「そうか。そうだよな。出会えたから、別れたんだ。たくさん出会えたんだ。」


そりゃ、高2でその顔で身長185cmでサッカー部でフォワードやってりゃ、そうなるわな。と、花雪は思った。タケル、お前は多分、校内全女生徒の公共物なんだよ。


「そうだ。だから悲しむな。振ったほうのつらい気持ちも分かってあげなさい。」


「それは無理だよ。じゃなんで振るのさ。僕はあの子だけで良かったんだ!」


「そのうちわかる。あ!引いてるぞ。合わせろ、タケル。」


「わかった。父ちゃん。うわ!大きい。クロダイだ。」


「バラすんじゃないぞ。タケル!今タモ()を出すから。うまいこと寄せろよ。」


日本海に沈む大きな夕日が二人に長い影を作っていた。



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