表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/28

雨が静かな町に降り注ぎ、青い石畳にはきらきらと光が散らばっている。イナが普段よく行く小川は、雨と共に夏の楽章を歌いながら楽しげに流れている。

キャンパス内の淡い黄色の灯りが窓から漏れ、散りばめられた雨音はむしろ集中と安心感をもたらす。私は窓際に立ち、黒くて明るい空を見つめている。


「もう休憩は終わったの?」


私はポケットに手を突っ込んでいる。

欹はソファに仰向けになり、キャンディをくわえて少しもごもごと言う。

「うん、まあね。」

強制的に大技を中断するのは魔王でも辛いものだ、と私は椅子を引き出して座る。

「質問があるんだけど、君にとって夏って何?」


「豪雨、蒸し暑さ、汗。」


「違う違う、海、砂浜、それに笑顔だよ。」


「どうでもいいけど、また何か企んでるの?」


私は地図を空中に広げる。

「冒険者学校の校長として、夏休み前に学校が資金を出し、生徒と教師が共同で計画する修学旅行を開催する必要があると思う。学校を出たことのない人がどうして優秀な冒険者になれるだろうか、この活動は彼らを鍛える最高のチャンスだ。」


「でも校長先生、期末試験はどうするんですか?」


「期末試験はキャンセルして、彼らが修学旅行から戻ったら各チームに修学記録を提出させ、それを成績評価の根拠にすればいい。」


欹はキャンディを噛む。

「また何か陰謀を企んでるんじゃないの?遊びに行きたいなら自分で行けばいいじゃん。」


「たとえ肉体が動かなくても、魂の旅は一刻も止まってはいけない。彼らにこのチャンスを逃してほしくない、夏の真髄は海辺の砂浜に埋もれているんだから。」


欹は立ち上がる。

「またわけのわからないことを言って。まあいいよ、学校のお金だし反対する理由もない。」


「このことをみんなに伝えてくれ。あ、そうだ、うちのクラスはルートを相談しなくていいよ、明日出発するのを待ってて。」


こうして、生徒たちの夏休み前の最後の一ヶ月の予定はこの短い五分で決まった。生徒と教師の話し合いを経て、全てのクラスのルートはすぐに決まった。

小雨が二日間降り続いた。私は校門の前に立ち、霧雨が顔に落ちてきて、幾分かの煩わしさを連れ去り、いくらかの涼しさをもたらす。地面は少しぬかるんでいるが、それでも生徒たちの旅立ちを止めることはできない。


欹は金色の馬車を指さして言う。「あれはどのクラスの馬車?」


私はちらりと見上げる。

「あれはルヴィシキン先生が借りた馬車だよ、彼らのクラスは王都周辺地域に修学旅行に行くんだ。」


「あれは?」


「あれはリルス先生が借りた車隊の馬車だ、彼らは大陸の最北端でオーロラを見に行くんだ。」


「本当にお金を惜しまないんだね、じゃあうちのクラスの馬車はどこ?」


私は喜ぶ生徒たちを見て微笑む。

「焦るな、すぐに見えるよ。」


生徒たちは笑い声を上げながら次々と馬車に乗り込み、軽やかな馬の蹄の音と共に、彼らはこれから一ヶ月間大陸の各地へと向かう。色とりどりの馬車が「ガタガタ」と音を立て、しばらくすると、ぬかるんだ校門の前には車輪の跡だけが残った。

空っぽの校門とますます激しくなる雨を見つめながら、インファンは三人の騎士の傘の下から私に向かって叫ぶ。「校長先生、雨がますます激しくなってきました、生徒たちに私の馬車で先に出発させましょうか。」


私は周りを見回した。


「ご親切にありがとう、でもそんな必要はないよ。」


空の暗雲を見上げ、手を伸ばして掴む。陽光が差し込み、暗雲の中に四角い穴が開いた。私は手を振り、黒い車列が校門前に整然と並んだ。

振り返って学生たちに向き直る。


「乗って、出発しよう。」


雲でできた馬の翼を、リカが興味深そうに触った。

「冷たいね。」


イナは一片をちぎって口に入れた、「サクサクして、しびれる感じがする……」火花が彼女の口の中で跳ねた。

私は先頭の馬車に乗り込んだ。

「ドアを閉めて、出発するよ。」


欹が私の隣に座り、興奮している学生たちに比べて、彼女はずっと落ち着いていた。彼女は魔王だから、こんなことは大したことではない。

指を鳴らすと、馬車の先端に埋め込まれた三稜の氷の結晶が眩しい光を放った。雲と地面の間に、七色の橋がゆっくりと現れた。馬車が揺れ、普段馴染みのある大地が次第に遠ざかっていく。

果てしなく広がる雲海が陽光の下で波打ち、世界は太陽が嵌まった高天と雲海という二つの交わらない平面だけになったかのようだ。七色の道が延び、真っ黒な車列が純白の仙境を駆け抜ける。

欹が私のそばに寄ってきたので、キャンディを一つ渡した。

「どうしたの?」


欹は外をちらりと見て、まだ恐怖が残っているようだった。

「高…高いよ。」


「魔王が高所恐怖症だなんて、普段はどうやって飛んでるの?」私は彼女の頭を撫でながら、笑顔で言った。


欹の背中の翼が無意識に羽ばたいた。

「普段…普段はこんなに高く飛ばない。」


雲海の隙間から、私が運んできたランス山も地面に貼り付いたキノコのように見える。

振り返ると、リカたち五人を除いて、残りの学生たちの顔は草原の草よりも青かった。

指を鳴らすと、車列は雲海に近づき、最終的には雲海の波を踏んで高速で進んでいった。

「気づかないうちに高く飛びすぎちゃった、ごめんね。」


欹は息を切らしていた。


「絶対にわざとだよね。」


キャンディを口に入れ、欹は私が弄るのを不思議そうに見ていた。

「何してるの?」


私は釣り竿を手に取った。

「雲海も海だよ、もちろん釣りだ。」


馬車のドアを開け、ゆっくりと外に出た。欹のキャンディが空中から落ち、彼女の悲鳴が風に乗って消えていった。

「なんで私まで連れてくんのよーーー」


馬車の屋根に座り、欹は腕を組んで私を睨んでいた。さっき私が彼女の襟首をつかんで連れてきたからかもしれない。私は釣り針を投げ、静かに待った。

欹が這い寄って私の隣に座り、短い足をぶらぶらさせた。

「餌もないし、雲海でどうやって魚がかかるのよ。」


「世の中に不可能なことなんてないよ。」


雲海が突然騒ぎ出し、霧が凝り固まったイワシの群れが海面下を泳ぎ回り、巨大なクジラが空に雲の線を引き、雲海とは不釣り合いな車列が、まるで突然別の活気ある世界に迷い込んだかのようだった。

澄み切った空は一瞬にして星の輝きに満ち、スポットライトの中心にあった太陽は一瞬にして平凡な存在に変わった。星雲がゆっくりと漂い、それはもう一つの雲海で、無数の幻想的で巨大な生物がゆっくりと通り過ぎていくが、よく見ればただの星雲に過ぎない。

生徒たちは窓から頭を出し、この信じられないような星空の夏を楽しんでいた。

欹は想像以上に美しい光景を仰ぎ見た。

「本当に美しいね……もしこれがあなたの創造したものじゃなかったら、もっと美しいのに」


私は何もない釣り竿を手に取った。

「どうして私にそんな偏見を持っているの?」


「もしあなたが私だったら、勝手気ままな神を心から信頼し、好きになることはないでしょう」


「勝手気まま?」


「神はまるで高みに立つ観客のようで、冷ややかに私たちの演技を見守り、時には強引にストーリーの流れに干渉し、ただこれがもっと面白くなるためだけに、役者の気持ちを全く気にしない。神はまた、そそっかしい旅人のようで、風のようにやってきて、風のように去り、高みからすべてを楽しむ。私たちのすべては旅人にとってはただの物語で、どんな影響を与えても、旅人はいつでも去ることができる」


「観客もまた劇の役者であり、旅人もまた物語の一部。いつかあなたは、世界の真の意味が何なのかを理解するでしょう」


「世界がどうなろうと、実はもし可能なら、私も魔王という身分を捨てて生活を楽しみたいんだ」

私は立ち上がり、白い衣の裾が空中で翻った。


「波は自分が粉々になることに気づかず、雲霧は自分がいつ消えるかを知らない。人間は瞬間に生きる生き物で、今以外に何を気にする必要があるのか?」

欹は伸びをした。

「でも、あなたは人間じゃないし、私もそうじゃない」


私は釣り竿を片付けた。

「皆さん、窓とドアをしっかり閉めて!」


私は腰に手を当て、遠くを見つめた。


「私たち、加速するよ!」


星の光が消え、馬車は空に純黒の跡を残し、車列全体が一列の真っ黒な列車のように金色のビーチに向かって疾走していった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ