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第七話 『事情』

 その後も小さな牽制のような会話をしながら過ごしていたのだが……キリアさんは唐突にこのように切り出してきた。


「少し、聞いてもいいかい?」


「ええ、どうぞ」


 このままでは埒があかないと悟ったのだろう。


 ソレに関してはこちらも同意であるため、否定することなく続けさせる。


「私はね、知識というものは広く伝播されるべきものだと思っている……知識が広まり、それを得た者の中から新たな知識が発展する、それが正しい形ではないだろうか?」


「確かに……それは一つの考え方ではあるし、間違いではないと思います」


「そう思うならば、何故情報を開示しない?」


「……そうですね」


 やや考えて、それから三つ指を立てて答え始める。


「一つ、俺が持つ知識量はかなりの数だ、そして既存の法則に真っ向から対立するものもある……それを広めることは大きな混乱をもたらすことになるから」


「む……」


 思い至ったのだろう、キリアさんは何も言わないのでそのまま理由を続ける。


「一つ、先に付随することだが、その結果として俺の今の生活を完全に壊されることになりかねない……言ってしまえばデメリットしかない」


「ぐ……」


 これに関しては一切の否定する要素がないだろう……こちらは教えるだけ教えて、得るものが思い当たらないのだ。


正直、これだけでも交渉としてはアウトとしか言いようが無い。


「一つ、その思想は確かに納得できるものではあるが、その押し付けは良くない……ぶっちゃけ迷惑だ」


 これに関しては個人感情が多分に含まれてはいるが、理由としては十分だろう。


俺の理由としてはこの三つが主となる。


とりあえず、方向の違う理由をこれだけあげればさすがに……


「むぐぅ……」


 キリアさんも撃沈したようだ……それを見て、俺も一息ついて休憩をする。


今はキリアさん以外の客もいないから、あまり気兼ねする必要も無い。


ルノも今は居住スペースのほうで垂れていることだろう。


そんな時に来客を告げるベルの音が鳴り響いた。


「うす、ヒサメ」


「……ん?」


「おお、今日は昼終わりだったっけ?」


「ああ、けど……客少ないな」


「ほっとけ……飯は?」


「頼んだ」


 勝手知ったるという感じのアサカと、もう慣れたと言わんばかりに料理を作り始める俺。


つまりはいつもどおりの日常であり、居合わせた客はよく見る光景だったりするのだが、キリアさんは初めてなのでやや驚いた表情をしていた。


「アサカ君かい?」


「へ……キリア教官!?」


「あれ、知り合いなんですか?」


「ああ、一応私は高等部のほうでも仕事をしているからね」


 呼びかけられて驚いた表情を見せるアサカにそもそも知り合いであることに驚いている俺。


まあ、どっちも考えてみれば学園に所属している訳で不思議ではなかったのだが。


「戦士科においての魔法の対策、そういう授業内容で進めているよ」


「たまに実践編があって死ねる思いをするけどな……」


 授業内容を思い出したのかやや疲れた表情を見せるアサカに、俺はやや感心した表情をする。


「へぇ、なるほど……単純に知識を詰めているだけじゃないんですね」


「そりゃ、使えてこその知識だからね、教えたことくらいは覚えてもらいたいんだよ」


「ま……その考えには賛同できますけどね」


 こっちとしても魔法具を使ってこそ価値のあるものと考えているのだから、この部分についての否定は無い。


ちなみに、ここに来て現在、レスカさんを筆頭として効果の軽いものを数人に渡す、あるいは売っており、その感想もかなりの好評をもらっている。


まあ、それはともかく……


「ん……なんだろうな?」


「どうしたアサカ?」


「いや、どうもキリア教官の元気が若干無いように見えるし、ヒサメと教官の間にもなんだ? へんな気配が漂ってるしよ」


 コイツは……そういうところに関しては異様にアンテナが効くんだな……


気づいてその空気を治せるかはともかく、そのあたりの感性は貴重なものだろう。


「まあ、少々事があったのは否定しないよ」


「へえ、ヒサメが……珍しい」


「いや、是非にヒサメ君が持っている知識を見せてもらおうとしたんだが……断られてね」


「そういや、ここの住居スペース……半端ないもんが大量にあったな」


 短期とはいえ、バイトに入っているアサカには中にあるものについてさわり程度話している。


また、よくシオンと一緒になって魔法具の談義をしていたりするので知識がどうだというところには特に反応しない。


「あとはそう、教師にならないかというのも拒否されてしまってな」


「教師って……ヒサメが?」


 さすがにアサカも予想していなかったようで唖然とした様子で俺のほうを見る。


まあ、気持ちはわかる……というよりそう唖然とされるあたりは実際似合わないということだろう。


「ルノ……俺が教えてるだろ?」


「……ああ、そりゃルノの知識量や技術考えれば確かにそうだな……やらねえの?」


「多数に教えるのは苦手だよ」


 俺の言葉で納得したらしく続いて問われた言葉に俺は肩をすくめる。


実際、多人数に教えるというのはやったことがないという事もあるし俺の教え方は最初に同時思考演算なんていう反則技……といっても最近まで基本技だと思っていたのだが……の習得が必須となる。


習得までに俺で半年、ルノで五ヶ月……つきっきりでやってこれなのだから、多数の人間に教えようとすれば人によって適正はあるだろうが習得に年単位でかかる可能性まで考慮しなければならないだろう。


しかも習得時期により、学習の進行度が著しく差が出るというもの……正直授業に組み込むのは不可能に近い。


そしてそれを用いない授業というものは自分にとって完全に未知の領域なのである。


「そりゃそうか……まあ、個人的には聞いてみたいけどな」


「勘弁してくれ」


 ため息をついて俺はアサカに料理を出す。


料理といっても簡単な炒飯でしかないが、簡単に食えるとアサカは案外気に入っている。


こっちとしても作るのは楽だから特に不満はない……や、まあタダ飯食わせている時点で物申すことはあるんだけど、それはもういい。


「仲がいいのだね」


「ま……一応親友だそうです」


「一応って……お前なぁ」


 なにやら複雑な顔を見せるアサカ。


それに軽い調子で悪い悪いと返してやると、賑やかになったのがわかったのかルノが奥からこっちへと戻ってきた。


「わう……アサカがご飯食べてる、ボクも」


「はいはい」


 出てきて早々目ざとくアサカの炒飯を見つける辺りに苦笑しながら、ルノの分を作り始める。


無論、いつものことである。


「微笑ましい、本当に兄弟のようだね」


「そう見えるのなら、嬉しいことですね」


 手早く作った炒飯をアサカの隣に座ったルノに渡し、ポフポフと二回軽くルノの頭を叩く。


「わう?」


「なんでもないよ、お食べ」


「わん!」


 ルノがされた行為に疑問を思ったのかこちらを見てくるが、そのまま食べるように言い、キリアさんの方へと向き直る。


「それで……キリアさんの方はまだいるつもりなんですか?」


「……どうしても、駄目かい?」


「くどいですよ、問題が多すぎます」


「できる限り君の条件を呑もう、だから頼む、君の知識を貸して欲しい」


 キリアさんが立ち上がり、頭を下げる。


諦めの悪い……と切り捨てる気には何故かならなかった。


仮に彼女から読み取れる目的が我欲のためであるならば、俺はまず間違いなく考えることすらしていない。


彼女が求めているのは何かもっと別のもの……それが何なのかがわからず、気がつけばキリアさんに問いかけていた。


「何故、そこまで?」


 知識を広めたいという理由。


それ自体は世界全体の発展のためのものであり、キリアさんにとっても本音であることは間違いない。


立派であるとは思うし、尊敬もする……だけど自分はといえばあまり同調できるものではないと感じる。


それだけであれば、きっと俺は問いかけることはなかった。


漠然とした何か……だけどそこに秘められた何かが最も重要な位置を占めているのではないかと理由もなしに感じていた。


俺の様子に気づいたのかキリアさんは少しだけ顔を歪めて……それから意を決したように話し出した。


「……いろいろな意味で不況を買うからあまり言いたくはなかったんだが……隠すのはあまりに失礼だったな、申し訳ない」


「別に……ただ、あまり良い話ではなさそうですね?」


「正直……聞けば断られる可能性が格段に上がると思っているよ」


 若干諦観の入った表情でキリアさんはため息をついた。


そこから紡がれる言葉に感じるのは……ため息と同じ諦観に、悔やみ……それに怒りか?


「生徒にとっては学園は探索者となるための場所……じゃあ、教師にとって……正確には魔法科の教師にとって学園とはどんなものだと思う?」


 告げられた問いに答えることはできない。


縁がなかったこともあり、今まで一切考えなかったことだ。


「そりゃ……生徒に授業を教えるところなんじゃないのか?」


 沈黙した俺に、横で聞いていたアサカが答える。


当然の返しであるし、俺もまたその意見に頷くのに抵抗はない……だけど違う、キリアさんはそういう答えを求めているのではないのだろう。


事実、キリアさんも首を横に振った。


「アサカ君の答えは正しいよ、本来教師はそういうスタンスであるべきものだ……事実、魔法科以外の教師ならそういう者がほとんどだろうね」


 首を振りながらも、その口から出るのはアサカを肯定するもの。


そして後半からは暗に魔法科の教師が正しい教師の姿をしていないということを言っている。


「答えは踏み台、魔法科の教師は国立の魔法研究機関に抜擢されやすい……ある程度の自己研究の成果があればね」


「……おいおい」


 キリアさんの言わんとしていることを理解して、頭を抱える。


ああ、なるほど……だから言葉の端に怒りの念が込められているわけだ……確かにその情報を基に考えると、どう考えてもいい発想は思いつかない。


「教師は自分の研究に必死になり、生徒たちにはマニュアル以上のことを教えることがほとんどない……それがほとんどの魔法科の教師の現状だ」


 魔法という存在は、使い方次第で大きな益を生むことは言うまでもないだろう。


であればなるほど、有能な魔法学者であれば国としては確保したいと思うのは当然であり、学園にある蔵書を手に取ることのできる教師というのは研究をするに当たり都合がいい。


つまり、教師の前に研究者である者が揃ってしまうというわけか……


「ひっでえ話だな、そりゃ」


「返す言葉も無いよ」


 アサカの率直な感想に、キリアさんもただ自嘲の笑みを浮かべるのみ。


実際には、今語ってくれた以上にひどい可能性だってあるというわけか……


「一位が魔法科、二位が戦士科、次いで技能科」


「それは……?」


 唐突に言われた順位、単純に考えれば人気の話だろうか?


「この学園を卒業して、一年以内に落伍する探索者の割合だ」


「な……に?」


「中でも多いのは戦死者……それから重傷者、その後に自信を喪失した者」


 マニュアルのみを追い、応用が利かない……それが命取りになる者は後を絶たない。


そう言ったレスカさんの言葉に、隠しきれない哀しみが感じられた。


「つらいものだよ、可愛がっていた教え子の訃報を聞くのは……」


 ああ、と俺はどこかで納得する。


彼女が俺の知識を求めるのは、何よりも生徒のため。


深読みすれば自分が傷つきたくないからとも取れるが、人としては当然のことではあるしキリアさんは前者の比率の方が遥かに高いだろう。


「わう、キリアさんはそれをどうにかしたいの?」


「ああ……だけど、私自身も教師であり優先的に受け持つクラスがある……正直なところ手が足りないし、知識にしたってマニュアルからの応用と自分の探索の経験を絡めての実戦の話くらいだ」


 それも教師になってからは若干錆びついてきている部分だけどねとキリアさんは告げる。


どうやらあの魔獣の時もかなり久々の生死をかけた戦闘と言えるらしい……あれだけ動ければ十分だと思わなくもないが、それでも人手の問題だけは解決できないか。


「そこで……俺な訳か」


 古代言語は当然のこと、ルノの魔法を見ているキリアさんからすればその技術にしてもそうであるし、あの魔獣とやりあえるほどの戦闘能力にそれを得るまでの経験談……どれをとっても学び、成長途中である生徒にとっては貴重な情報の宝庫である。


協力して欲しいと思うのも無理はない話ではあるのだろう……と、ここまでの経緯をようやく呑み込めた。


無論、自分も知識を学びたいという我欲が一切ないというわけではないだろうが……それでも生徒たちのためを思って、どうにかしたいと考え、あがいているのだということは感じ取れた。


「最初から全て話さなかったのは?」


「身内の恥であり、話すのが躊躇われた、それに、君の機嫌が悪くなると思ったから……あとは、こういう不条理を表に出して釣っているように見られたくはなかったから……かな」


「なるほど……」


 まあ、確かに情に訴えかけるのは有効だろうが、後にしこりになることも考えられる。


そもそも最初からそのつもりで話していたとしたら、正直なところ印象は悪く、話をしっかりと聞いただろうか?


だいたいからして説得側が不利になる事情をわざわざ口にする必要などないのだし、仮にこちらがその立場なら同じように口を閉ざしただろう。


そういう意味では、隠された部分に関してはまあ、良しとする。


「私が話せるのはこれで全てだ……どうか、頼めないか?」


 そう言って、深々と頭を下げるキリアさん。


おそらく、これが最後の説得になるだろう……そういう空気の中で非常にゆっくりと時間が流れる。


「……なぁ、ヒサメ」


「何も言うなよアサカ、特にそれは言っちゃ駄目だ」


 同情とか、流されてとか、そんな風になる言葉を吐かせる訳にはいかなかった。


彼女自身、そういうことが嫌だからその事実を内に隠していたのだから。


「魔法科……か」


 その場所には小さな繋がりがあった。


真っ先に思い当たるのはこの喫茶店で笑顔を振りまいてくれる女の子、多少なりとも世話をして、交流を持ってしまった子。


サナちゃんが所属している場所が魔法科であった。


「どうするかね……」


 もともと開店してそう時が経っていない、外れた場所にある喫茶店なのだが……それでも学生の情報網なのか個人の興味なのかはわからないがとにかく学生の客もいないわけではない。


サナちゃんもその一人ではあるし、他にも数人は知っている子たちがいる。


その中で魔法科の生徒が何人いるかはわからないし、もしかすればサナちゃんを除いて魔法科の人間はいないのかもしれない。


だけど、少なくともサナちゃんはそうであるし、他の子たちも魔法科の仲間がいるのは想像に難くない。


たかだか数人程度の話だ……だけど、たしかにここに来てくれて、美味しいと言ってくれた子たち……見て見ぬふりをするというのはしたくなかった。


であればどうする……彼女たちだけでも教えるか? ほんの少し考えて、それを俺は否と断じた。


これから先、サナちゃんたちのような縁は増えていくことは間違いないだろう……そのたびに同じように悩むというのか?


おそらく悩むことになるだろう……それに、個人で教えるにしてもそれなりに問題は出る。


知識、考え方や技術のようなものの異端というのは、物よりもよほど奇異に映りやすい。


学生のように同じことを学ぶ中でのそれは殊更にそれが顕著になりやすい。


そんな中であの子たちが俺に教わっているという事実を隠しきることができるのかと考えたとき……正直無理なんじゃないかと思う。


となるとこの場所がよろしくない方向で注目されることになるわけで……どう転んでもいいイメージは浮かばなかった……うん来てくれたみんな、すまん。


「って、違う……考えが逸れた」


 自分の生徒、つまりは近しい人が死ぬことが嫌だというレスカさんの言葉には素直に納得できる。


俺だってそう思うし、だからこそサナちゃんたちにだって死んでほしくないと、そう思う。


先の話になるし、例えばサナちゃんにはシトネちゃんがいればたいていの問題には対処できるだろう……他の子たちにしたって早々問題が起こることはないのは重々承知である。


だけどそういう問題じゃないのだ……それが起こる可能性を理解している上で、何かができるのに何もしない俺が嫌なのだ。


この時点で、俺は少なくともこの店の客の子たちに対しては手を出すことは決めている。


そこでやはり方法の面で問題になり、結局堂々巡りとなってしまう。


「……条件を付けさせてもらっても構わないんだよな?」


「あ……ああ、出来る限りは条件を呑もう!」


 断る以外の返事が聞こえたことにキリアさんが少しの驚きを見せ、それから強くうなずいて見せた。


手を出せばいずれバレるのは間違いないだろう……そしてバレてしまったときの周囲の反応も強くなる。


であれば……最初から明かしてしまっていた方が教えるにあたってはやりやすいと言わざるを得ない。


「ここを止める気はありません……だから週一、特別授業のような形でやることは可能ですか?」


 これに関しては俺にとって絶対のライン。


正直な話これを受け入れられなければ話にならない。


「…………ああ、やってくれるだけでも御の字なんだ、その条件は呑もう」


「なるほど、じゃあ次です」


 教える場合はなるべく短時間で効果が表れるようにするため実技を行う形の授業、そのための場所の提供。


生徒以外の無用な見学者の立ち入り禁止、特に最初の授業に関しては徹底して行ってほしいということ。


古代魔法に関してはさすがにマズイので教えることができないということ。


授業前には必ず打ち合わせをして、どういった点が効果的であるかをしっかり確かめ合うこと。


他にも細かい点をいくつか条件付けてキリアさんに申し出たところ、本当に全て了承してきた……まあ、古代魔法のくだりに関しては多少残念そうにはしていたが、それは諦めてもらうより他はない。


「……すまない、恩に着るよ」


 キリアさんが深々と頭を下げる。


しかし、正直なところ出来るかどうかなんてわからない試みなのだ、あまり期待されても困る。


「プレッシャーをかけるようなことは止めてくれ、そういうのは、せめて成功した時にでも言ってくれ」


 ルノに教えるのとはまた違う、教える者の責任にため息をつく。


しばらくは大変だろうな……まあ、でもやると決めたからにはしっかりとやるし……何よりこっちに利益が全くないわけではないのだ。


始めから喫茶店のマスターであることを表に出していれば、少しは自分の店のことを知られるし、そうすれば客も増えるだろう。


この喫茶店において客は単純な利益だけの問題ではないから、実際かなり重要な比率と言えるだろう。


「いいのかルノ、やることで話は決まったみたいだぜ?」


「だったらボクはそのお手伝いだね!」


「……すげぇ、即答だ」


 迷い無く手伝いをしてくれるというルノの言葉を嬉しく思いながら、俺は慣れない授業計画を組み立て始める。


大筋が出来たのなら改めてキリアさんと打ち合わせる必要があるだろう。


「さすがに、深い内容はやりませんけど……やるからには本気で当たりますよ」


「ああ、よろしく頼む」


 キリアさんと握手を交わし、一言。


「一応聞いておきますけど……狙ってたなんてことはないでしょうね?」


「ないない……私もそこまで優秀ではないし、そもそも不興を買うようなことはしないよ」


 あえて疑り深く聞けば、たまらず苦笑を返すキリアさん。


「ま……そりゃそうか……」


 本気で疑ってるわけでもなく、俺もまたすぐに納得して握手を終わらせる。


「なんにせよ……これから忙しくなりそうだなぁ」


 とりあえずは、教えるにしてもまず今何を教えられているのかを知るところから始めるべきか。


そう思い立った俺はキリアさんに一つ頼みごとをするのだった。






 喫茶店『旅人』、定休日が一日増えました。

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