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プロローグ

――広き世界の果て


  命は廻り流れ行く


  巡り巡る大樹の中


  全てを隔てる扉が立つ――



 ここは異世界スフィーリア、魔法という力が当たり前のように存在する場所で言葉が、詠が紡がれる。


それは言葉の羅列であったが、確かな存在感というべきものを持っていた。



――届くことなき風


  届くことなき音


  届くことなき光


  届くことなき命――



 この場所はそんな世界の辺境とも言っていい場所。


そんな場所に響いているのは、たった一人の老人によって唱えられる長き詠。


それは一つの魔法を使うための詠。



――届かぬ全を届けるため


  届かぬ全を受けるため


  全を繋ぐ道を開くため


  扉の鍵をこの手に持つ――



 十二の小節を経て未だ完成しないそれは、魔法が当たり前のこの世界の中でも異様な長さ。


その詠により紡がれるものは、遠い過去に失われた古代の魔法。


この魔法の存在する世界で、それでも信じられないとされる現象を起こす類の魔法。


法則を無視した、あるいは新たな法則を作り出す術。


しかし、長く続くその詠も、もう終わる。



――鍵を持って扉を開く


  扉の先の繋がれし道


  ここより呼ぶ声に応えよ


  望みし者をここに招かん――



 老人の詠唱が終わり、直後、目の前に強い光が溢れた。


目を開けられぬほどの閃光の中、老人は待ち望んだものが目の前に現れたことを感じ取った。


光が消えた時、そこには一人の少年が佇んでいた。


佇む少年の瞳には光が無く、それはまるで人形のようだと老人は思う。


「……成功したか」


 そんな少年を見ながら、老人は小さく呟き表情の変わらない少年の頭を撫でる。


そこではじめて少年も老人のことを認識したといったように、困惑の表情を見せ始めた。


「?」


「ようこそ、世界は君を歓迎する」


 そんな少年を慈しむように、老人は少年の頭を撫でながらそう告げた。


そんな時、世界から歌が聴こえた。


とても神聖な、とても美しい歌が、少年の来訪を祝うように。


世界が、精霊が、聖なる獣たちが謳う。


歓迎の歌を……

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