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ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★  作者: 双葉鳴
三章 お爺ちゃん、テイマーになる
19/44

15話

 電車で二駅。おおよそ30分もしないうちに着いた。

 街並みはさっきのところとも、地元とも違うね。

 なんと言うか片田舎から垢抜けた街並みになった。

 

 出勤してた会社もこんなところだったなぁ。

 当時はもっと人が多くて賑わっていた。

 今では廃墟のように寂しい街になっている。

 ダンジョンができて少しは人が歩き出したけど、これから当時のように賑やかになるのかなぁ?

 満員電車はごめん被りたいが、賑やかになるのは満更でもない。

 生活基盤は家の中で済んでしまう世の中だからね。


 あとはダンジョンからの出土品をどう発展させるかだ。

 楽しみだね。

 私は人と人を繋げるのが楽しいからあれこれ世話を焼くけど、正直なところを言えばいつまでも付き纏われたくないからだ。

 自由な時間って居るもんね。


 さて、お目通りできるかな?



「こんにちわ、良いお日柄ですね」


「なんだ、爺さん。ここから先は寺井グループの管轄だ。警察だろうと通さねぇよ。帰った帰った」


「そうか、それは参ったな。実は寺井グループの会長さんとゴルフの約束をしていて、次の日程を決めかねててね」


「そんなもんコールで確認すりゃ……」


「なんか忙しそうでね、近くまで来たしで顔を出ししたところなんだ」


「はぁ、たくしょうがねぇな。ちょいと待ってろ。一応確認しといてやる」



 警備の男は、あからさまに面倒くさそうな対応をとった。

 そして上司からこっちの名前を伺うように促され、



「笹井です。下の名前は裕次郎と」



 名乗ったら、男は突然顔色を変えた。



「はぁ? あんたアキカゼ・ハヤテか!」


「おや、AWO内の私を知ってるとは。どこかで会ってる?」


「俺だよ、ロウガだ」


「ああ、ロウガ君。最近AWOの方はどう?」


「爺さんが消えて前より活気は無くなったかなぁ? 今じゃリアルダンジョンの方が騒がしいってんでこっちに配属されたが。そっかぁ、リアルダンジョンにもね。親父はちっと武器関連の事業であれこれ指示出ししてるよ。会ってくか?」


「どうしようかな。ついでにダンジョンに入れたらいいなって来たけど」


「踏破済みのダンジョンに興味を示すなんざ珍しいな」


「いやなに、こんなものを手に入れてね」



 ショルダーバッグから取り出したのは一抱えあるほどの虹色の卵である。



「なんじゃ、こりゃ」


「テイムモンスターの卵。さっきまで青葉区のエッグダンジョンに居てね、もらってきた」


「青葉区? ああ、なかなか前に進めねぇって嘆いてた」



 なんで警察官のネットワークについて詳しいんだろう、この人。



「俺がなんで警察の仕事に詳しいかって顔だな? 単純に俺がそっちの仕事に一枚噛んでるからだよ。んで、そっちのコネでダンジョンの管轄もらってさ」


「順当にボンボンの息子ムーブしてるねぇ」


「引き合いに親父出すのやめてくんねぇ? あの人と比べられるとすんげぇ自信なく済んだけど」


「うちの娘婿も何故か私を偉大な人かのように語るけど、人生の先輩としてはそこまで大仰に扱って欲しいわけじゃないんだよね」


「はぁ、あんたがそれを言うのか」



 心底呆れた、とばかりに顔に手を置いて首を横に振る。

 なんでそんなに信頼ないんだろうね(すっとぼけ)



「とにかく、ダンジョンだな? 熊兄が受付してるから案内するぜ」


「熊君が? リアルでお会いするのは初めてだねぇ」


「そりゃお互い様だろ」


「確かに」



 道すがら雑談を交えて歩く。

 相変わらずここの兄弟は仲が良い事を会話の端端から拾い上げる。



「や、お疲れ様くま君」


「こら、四狼、ここから先は立ち入り禁止って言っただろ?」


「熊兄、この人アキカゼさん」


「ああ、そう言う。父ちゃんから聞いてないけど?」


「アポ無しできたんだよこの人」


「はぁ、父ちゃんは?」


「適当に遊ばせてやれって」



 なんだか聞き捨てならないセリフの応酬だ。

 というか、欽治さんは付き合ってくれないんだね。

 それも仕方ないか。



「了解。言わなくてもわかると思いますが、ちょっと今の難度は高いので気をつけて欲しいです」


「いくつ?」


「17ですね」


「そりゃ高い。でも偶然、私のレベルも17でね」


「なんでそんなに高いんだよ、爺さん」


「偶然居合わせたダンジョンを踏破したからだね。3回ね」


「熊兄、もうこの人になにを言っても無駄だな」


「だね」



 ひどい言われようだ。信用が地に落ちてない限りそうそう言われないよ?



「と、いうわけで新しい発見があったら報告するね。他に探索者は?」


「銀兄と金兄が入ってる」


「ああ、長男と次男が揃って探索中か。採掘の方はどう?」



 ツルハシを振るうジェスチャーをすれば、肩をすくめて首を横に振った。

 正直そんな暇はないらしい。

 ウルフが群れて襲ってくるのだ。

 わざわざ光源を奪うのは愚策だと余計な真似をするなと箝口令を敷いてるらしい。レベが上がるまでは足元確認も怪しいもんね。



「警察からの支給品は?」


「動き回るのに向かないだろ、あれ」


「確かにねぇ」


「ウルフが夜目特化なのもあって遭遇したら即襲われるからやられる前にやれ! がうちの鉄則」


「殺伐としてるねぇ」



 正直、潜ってみないとどんな場所かもわからない。



「じゃ、私はこの辺で。土産話を期待しててよ」


「怪我なく帰ってきてくれよ? なんだかんだうちの親父は爺さんのこと買ってるんだ」


「そこは安心してくれていいよ。オクト君印の特製ポーションも持ち込んでるからね」


「待て! そんな情報知らないぞ?」


「え、まだ表に出てない? じゃ、今の話は忘れてもらう感じで」


「相変わらず秘匿情報の塊かよ!」



 ロウガ君が苦虫を噛み潰したような顔で吐き出す。

 それはお互い様ってやつだよ。

 警察機関を追い出して、どんな情報を守っているのやら。


 壁に打ち込まれた杭が階段のように組まれている。

 パイプで組んだ簡易の足場が螺旋階段のようになっており、始まりのダンジョンのような竪穴を意識させる。

 垂直に10メートルほど降りたところで、水気を帯びた岩場が現れる。

 ここにウルフが徘徊してるなんてにわかには信じ難いな。


 さて、採掘ポイントを探そうか。

 竪穴を降りた先にはなだらかな一本道。

 湧き水が出てるのか、壁には水が滴っている。

 苔むした足場は若干滑りやすく、こんな場所で襲われたらたまったもんじゃない。

 と、いうことでスコップで掘った。砂利道の完成だ。



「と、こいつはなんだろうか?」



 地面を掘ると、緑色に光る石が混ざる。すかさず鑑定してみれば、ワクワクする情報が現れた。


┏━━━━━━━━━━━━━━━┓

 アイテム/エメラルドのかけら

 アイテム合成素材【錬金術師】

 テイムモンスターの餌【テイマー】

┗━━━━━━━━━━━━━━━┛


 

 合成素材か、知れば知るほど錬金術師が欲しくなるね。


 しかしテイマー側の情報としても有用か。

 でもこれ、ジョブが解放されたから新しく開示された?

 今までこんな情報なかったよね?


 まぁ今はともかく情報を集めることが第一か。

 ちなみに壁を掘ったらルビーのかけらが出た。天井を掘れば何か出てきそうだが、生憎と脚立を持ち込んでないんだよね。

 次の機会にでもしようか。

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