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成長

さらに月日は流れ、私とレイスは14歳になった。ちなみに、リオンは13歳。


「……風が気持ちいいな。こういう日は外で本を読むのが、最高なんだよね。」


家庭教師からの授業が終わり、のんびり本を読もうと庭にある大きな木の下に腰掛ける。

持ってきていた本を広げ、私は読み進めていく。


暫くするとそこへ、リオンと一緒に剣術の稽古をしていたはずのレイスがやって来る。


「あれ?早くない?まだ終わりの時間じゃないよね?」

「先生と手合わせして、勝ったら終わっていいって言われたから……サクッと勝ってきた。」


そう言いながら私のそばへ来たかと思うと、レイスは私の膝へと頭を乗せて寝転がる。


「……レイス。」

「ダメ、か?昔はよくしてた。」

「いや、別にいいけど……」


昔、というのは前世のことだろう。

確かに前世ではこんな事日常的だったけれど、公爵家の養子になった日に告白された時から、レイスとのこういうスキンシップはたまに、なんというか……心臓に悪い。


しかもあの日、リオンが私に告白した日からレイスもリオンも毎日の様に、私に対して好意を惜しみなく伝えてくるようになった。

たぶん私に意識をしてもらうためなのだろう、1日1回は2人から好きだと言われている気がする……。

そして2人の思惑通り、私は毎回意識せざるを得ない。

最近は初めの頃よりは慣れたが、やっぱりストレートに言われるのは恥ずかしい。


「……もしかしてドキドキしてるか?」

「……少し、ね。」


そう答えればレイスは満足そうに小さく微笑むと、そのまま目をつぶって寝る体勢に入ってしまう。そんなレイスに、しょうがないなと思わず笑ってしまった。


私は開きっぱなしだった本を閉じて、改めてレイスの顔を眺める。


(当たり前だけど、私達成長したな……。何かあっという間だった。)


ここ数年で私達はかなり成長したと思う。


レイスは幼馴染の贔屓目に見ても、めちゃくちゃイケメンになった。


(……いや、まあ、マジスクの攻略対象なんだからイケメンなのは当たり前なんだけど。)


そんなレイスは相変わらずなんでも完璧にこなし家庭教師泣かせである。

中身が実年齢とは異なるので勉強なんかができるのはわかるのだが、魔法の扱いも剣の腕前も

完璧なのはなんなのだろう。あれか?攻略対象補正か?

前世で習ってないよね?と思わず聞いてしまったほどだ。

こんな完璧なレイスを貴族の令嬢達が放っておくはずもなく……。今やパーティーに出席するたびに速攻で令嬢達に囲まれている。……イケメンって大変だ。


そしてリオン。

特にリオンの成長は目を見張るものがあった。

身長は私とほぼ変わらないどころか若干抜かされるほど伸びたし、私達が頑張った甲斐があったのかゲームの設定とは違い暗い性格の引きこもりヤンデレ、ではなく!優しい紳士的な男の子に成長した。なんの欠点もないイケメンだ。お姉ちゃんは嬉しいよ!

ここ数年で可愛いというより、カッコいいと言う方がしっくりくるようになった。

そして魔法も使えるようになり、腕前もかなりいいらしい。私と違っていろんな魔法が使えるらしく、1番得意なのは風魔法なのだと嬉しそうに教えてくれた。

それに勉強も剣術も頑張っていて、あのガーデンパーティーで私に強くなるといった言葉が本当になるのはあっという間だろう。

そしてリオンもまた、最近貴族の令嬢達の間でも話題になっているらしい。……まあ、こんなイケメン放っておくはずないか。


そんな私はというと、普通に成長した。可もなく不可もなくだ。うん、モブならこれくらいがちょうどいいよね!




そんな事を思い返しながら、しばらくレイスと2人、木の下で微睡んでいると剣術の稽古を終えたであろうリオンが、走りながらこちらへやって来た。


「姉様!兄様!」


リオンの声にレイスはゆっくりと瞼を開け、私の膝から起き上がる事なくリオンに話しかける。


「遅かったな、リオン。」

「兄様が先生に勝つのが早すぎるんですよ。……というか、いつまで姉様に膝枕してもらう気ですか、早く起きてください。兄様だけズルいです。」

「…早い者勝ち。」


笑顔で駆け寄って来たリオンだが、私に膝枕されてるレイスを見て少し不機嫌そうになる。

リオンの反応にレイスはふっ、と笑ってちょっとだけ挑発した感じで言葉を返す。

それに対して、眉間の皺をさらに深くするリオン。

ここ数年でレイスとリオンは、こんな風に私を挟んで言い合う事が増えた。言い合うとは言っても、仲の良い2人だから本気の喧嘩に発展する事はない。こんなのは、ただのじゃれ合いみたいなものだ。


そんないつもの2人のやり取りに思わず苦笑してしまう。

放っておいてもそのうち終わるだろうけど、そろそろ足も疲れてきたしレイスには起きてもらおうかな?


「レイス、足が痺れそうだからそろそろ起きて。」

「ほら、姉様もこう言ってますよ。」

「……わかった。」


渋々起き上がるレイスに私とリオンは顔を見合わせて笑った。


「それで?リオンは何で急いで俺達の所に来たんだ?」

「姉様と兄様に早く会いたかったのが1番ですけど、母様がティータイムにしましょうって言ってたので、急いで2人を呼びに来たんです。」

「なら、早く行かなくちゃね。」

「ああ。」


私とレイスは立ち上がると、グッと体を伸ばす。


「それじゃあ行きましょう?姉様。」


不意に、リオンは笑顔で私の手握る。


「え?」

「なら、俺はこっちな。」

「は?」


そして反対の手をレイスが握ってきた。

……いや、照れるわ!

2人は私に告白してから、本当にスキンシップが多くなった……。

不意にこういう事をされるたび、私の心臓はドキドキとうるさくなる。


「……あの、2人共?恥ずかしいんだけど?それにほら、本持てなくなるし……」

「本なら俺が持つ。だから、このまま。」


そう言って、レイスは私の本を持ち上げる。

……あ、これ逃げられないやつだ。


「……はあ、わかったよ。このままでいいから早く行こう。」


私が諦めて2人の手を握り返すと、レイスもリオンも嬉しそうな顔をする。

……その顔を見ると、私も嬉しくなってしまうのは何故なんだろう。


結局私達は仲良く手を繋ぎ、お母様の元へと向かったのだった。

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