もう一度
「そのネックレスを見てまさかとは思ったけれど、この絵を見て確信したわ。輝く銀の髪に、薄紫色の瞳。……この絵に描かれているのは間違いなくアリスよ。」
お母様はそう言いながら、絵を指先で優しく撫でる。そんなお母様を眺めながら私は思う。
人間、本当に驚くと何も言えなくなるんだな、と。
「もしかして……。俺が生まれた後に届いた親しかった友人の訃報というのは、そのアリス様の事でしょうか?」
私が驚きすぎて言葉を失っていると、レイスが思い出したようにお母様に尋ねる。
レイスの質問に、ええ、と視線を下に落として少し悲しそうに、お母様は頷いた。
(つまり、お母様が精神を病んだのは、私の本当のお母さんの訃報が原因だったって事?)
もう、情報量が多すぎて私の頭はショート寸前だ。
「姉様、大丈夫ですか?」
ずっと黙っている私を心配したのか、リオンが
近寄って来て私の手をギュッと握る。
そのおかげで、現実逃避しそうになっていた思考が若干戻ってくる。
「ありがとう、リオン。少し驚いただけだよ。大丈夫。」
いや本当は大丈夫ではないが、私は強がってリオンに笑顔を見せた。
「……でも、亡くなったと思っていた時にはまだアリスは生きていたのね。しかも、アストレアの領内で……それもちゃんと幸せに……」
そう呟くお母様の声は徐々に震えていく。お母様に視線を向けると、目にはまた涙が浮かんでいた。
亡くなっていたと思っていた親友が最近まで生きていたという真実、しかも手の届く距離にいたはずなのに見つけられなかったという後悔、……幸せに暮らしてくれていたと言う喜び。たぶんお母様とお父様の心は色んな感情でいっぱいだろう。
涙を拭いてお母様はゆっくり席を立つと、私の元へやってくる。そしてギュッと私を抱きしめた。
「……孤児院であなたを見かけた時、アリスの生まれ変わりだと思ったの。だから、あなたを引き取ることに迷いはなかった。……けれどまさか、あの子の本当の娘だったなんて。……クロエ、あなたを見つけられて、本当によかった。」
その言葉を聞いて、私がお母様を抱きしめかえすと、堪えきれなかったのだろうお母様は静かに泣き始める。
「………欲を言うなら、もう一度……もう一度、だけでいい、か、ら……あの子と…アリスと、お話ししたかったわ……。」
独り言のように呟かれたその言葉に私は何も言えず、泣き続けるお母様の背中を撫で続けた。
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