お母さんの正体
「母様はどうしたのでしょう?」
リオンが心配そうに呟く。
けれど私もレイスもその疑問に答えられない。私達もなぜこうなったのか、全くわからないのだから。
「父様も母様も、クロエの持って来たそのネックレスを見た時から様子がおかしかったな。」
「レイスもそう思う?」
私はネックレスをそっと持ち上げ、改めてよく見る。綺麗な装飾が施されてはいるがシンプルで、青色の石(お母様曰くブルーダイヤモンド)が1つ中心に付いている、見た目は普通のネックレスだ。
何かこのネックレスにあるのだろうか。
私が考えていると、リオンも疑問に思った事を口にする。
「僕は絵を見た時の、母様の言葉が気になります。「アリス」って誰のことでしょうか?」
「……もしかして、母様とクロエの本当の母親、エリーさんは何か繋がりがあるのかもしれないな。」
その後も3人で色々と考えてみたが、全くわからない。
気になることが山ほどあるが、私達はお父様の言う通り2人が戻るのを待つことにした。
「待たせてすまなかったね。」
しばらくすると、お父様とお母様がダイニングルームへと戻って来た。
お母様は泣いてはいなかったが、目は赤くなっていてたくさん泣いたことがよくわかる。
「大丈夫ですか?お母様。」
「ええ、もう大丈夫よクロエ。さっきは取り乱してごめんなさい。」
そう言いながら微笑むお母様に一安心する。
「みんな、とりあえず座ろうか。話さないといけないことが沢山ある。特にクロエにはね。」
お父様に促され、私達はそれぞれ席へ着く。みんなどこか緊張した面持ちだ。
ひと息ついて、お父様が口を開く。
「……さて、まず何から話そうか。」
お父様は少し考えてから、ゆっくりと話し始める。
「クロエ、そのネックレスは世界にたった一つしかない物なんだ。」
なぜそんな貴重な物をお母さんが持っていたのだろう?と疑問に思いながらも、私はお父様の言葉の続きを静かに待つ。
「そして、そのネックレスの持ち主の名前は、アリス・クロイツ。私とクラリスの親友であり、この国の3大公爵家の1つ、クロイツ公爵家の令嬢だった。」
「……だった?」
「……アリスは10年前に消息不明になって、亡くなったとされているわ。」
お母様は静かに語り出す。
10年前、アリス・クロイツが乗っていた馬車は保養地からの帰り道、森の中で事故に遭った。
馬車に乗っていたであろう人達の遺体は事故現場で発見されたが、唯一アリスの遺体だけが見つからなかった。アリスが生きていると信じたクロイツ家の人達は森中を隈なく捜索したが、結局アリスが見つかる事はなく、事故から2年後アリスは死んだという結論が出され、捜索活動は終了になったそうだ。
その事故があった場所は、保養地がある伯爵領とアストレア公爵領の領境いの森。私達家族がいたポーラの街から少し離れた場所。
ああ、話が見えて来た。
「……つまり、私のお母さん、エリーがその消息不明だったアリス・クロイツだと、お父様とお母様はそう、仰るのですか?」
私がそう尋ねれば、お父様とお母様は静かに頷いた。
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