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父と母の話

公爵家へ戻ると、すでに夕食の時間になっていた。慌てて支度をして、ダイニングルームへと向かう。

ダイニングルームの扉を開くと、みんな揃っていて笑顔で私を迎えてくれた。



「クロエ、今日のお墓参りはどうだった?伝えたいことは伝えられたかい?」


夕食を終え、食後のお茶を飲みながらお父様が私に尋ねる。


「はい。一番伝えたかった事は伝えられました。それに、懐かしい方にも会えたんです。」

「懐かしい方?」

「私の家の近所に住んでいた、ゲルドさんというおじいさんです。大変お世話になった方なんです。ゲルドおじさんと思い出話もできて、とても良い1日でした。」

「そう、それは良かったわね。クロエ。」


私が笑顔で答えれば、お父様もお母様も安心したように微笑む。


「姉様。僕、姉様の本当のご両親の話聞いてみたいです。」

「私も気になるわ。クロエのご両親はどんな方達だったの?」


リオンとお母様にそう言われ、ふと、アストレア家に来てからお母さんとお父さんの話をしていない事に気づく。

良い機会だと思い、私は本当の両親の話をみんなに聞いてもらう事にした。


「そうですね、私もみんなに聞いてもらいたいです。何から話そうかな……。それじゃあまず、私の父の名前はルーカス、母はエリーと言います。2人共とても穏やかで優しい人でした。」


私は1つ1つ思い出すように、みんなに両親のことを話す。


お父さんのルーカスは手先が器用で、それを活かして綺麗な細工を施した小物やアクセサリーなどを作る仕事をしていた事。お母さんのエリーは料理が上手で得意料理はシチューだという事。そんな両親とのたくさんの思い出を、笑顔で私は語る。


「そうそう、父と母の出会いはとても珍しいというか、まるで小説みたいなんです。」

「そうなの?どんな出会いだったのかしら?」


私の両親の出会いは森の中。お母さんが怪我をして、倒れていたところを助けたのがお父さんだったそうだ。だからお母さんはよく「お父さんは、私の命の恩人なのよ」と言っていた。


「まあ!クロエのお母さん……エリーさんはなぜ森に?」

「それが、母も覚えていなかったんです。」

「……覚えていない?」

「はい。実は、母は父と出会う前の記憶がなかったんです。だから、さっき言った母の名前、本当の名前じゃないんです。自分の名前もわからなかった母に、父が付けた名前で。」


そう私のお母さんは記憶喪失だった。

定かではないが、倒れた時に強く頭を打ったせいで記憶喪失になったのではと、お医者さんに言われたとお母さんは笑いながら私に話してくれたのをよく覚えている。

子供ながらに笑い事ではないんじゃないかと思ったが、お母さんは記憶が無い事を悲観することなく、いつも笑顔で明るい人だった。


「でも流石に母も最初は、自分がどこの誰かもわからなくて不安だった、って言ってましたけどね。でも、「ルーカスに会えた事が最高に幸せだと思えるから、記憶がないなんてへっちゃらよ」っていつも笑顔で言ってました。」


私の話にお父様もお母様も、リオンにレイスまで、驚いた表情をしている。


「何というか……。」

「凄いでしょ、私のお母さん。」

「ああ、波瀾万丈すぎだろ。」


レイスが独り言のように呟いたその言葉に、確かに、と思わず笑ってしまう。


「でも、クロエの話を聞いてて思ったわ。ご両親、とっても仲が良かったのね。」

「はい、とっても!」


本当の両親の仲の良さをわかってもらえて、私はお母様のその言葉に満足気に頷いた。

そしてふと、思い出す。


「そうだ!いい物があります。ちょっと待っててください。」


私はそう言って、自分の部屋へと向かった。

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