3人でのお茶会
両親の結婚記念日から数日が経った。リオンは私やレイス、両親以外にも、オリヴァーさんを始めとするアストレア家で働く使用人さん達とも徐々に打ち解けていき、今では普通に会話をしたり触れられても怯えることはなくなった。
そんなある日。
私とレイスは王宮へと出向いていた。
というのも、アルバートからお茶の誘いがあったからだ。
「いらっしゃい、レイス、クロエ。待ってたよ。」
アルバートの自室へ通されると、そこには部屋の主人であるアルバートが、笑顔で手を振りながら私たちを待っていた。
「お久しぶりです、アルバート殿下。」
「この度はお招きいただきありがとうございます。」
私とレイスはそう言いながら頭を下げる。
そんな私達に苦笑いを浮かべるアルバート。きっと私達が堅苦しい挨拶をしているのが気になっているのだろう。
けれど、ここにはまだ私達以外にもメイドさんが何人かいるため砕けた話し方はできない。
それはアルバートも気づいているらしく、控えていたメイドさん達に声をかける。
「お茶とお菓子の準備を。できたら下がっていいよ。」
「かしこまりました。」
アルバートがそう言うと、メイドさん達はテキパキと準備を進め、あっという間にお茶会の準備が整う。そして私達にお辞儀をして、速やかにアルバートの部屋から出ていった。
「さて、堅苦しい話し方はお終い。さあ、座って座って。」
「ああ。」
「ありがとうございます、アルバート。」
そうアルバートに促されて、私とレイスはソファへと座る。そして正面にアルバートが座り、3人だけのお茶会がスタートした。
「そうか、それは大変だったね。その、リオンだっけ?彼はもう公爵家には慣れたの?」
「ああ、俺たち家族はもちろん、アストレアで働いてる人達にもだいぶ慣れた。」
「はい、最近は笑顔も増えてきて私達も安心してます。」
私達はお茶を飲みお菓子をつまみながら、お互いの近況について話し始めた。
やはり最近の出来事で1番思い入れがあるのはリオンの事なので、私とレイスの話は自然とリオンの事が多くなる。
そんな私達の話をアルバートは笑顔で聴いてくれている。
「それじゃあ、だいぶリオンの心の傷は癒えたのかな?アストレアの人達以外の人と会うのは大丈夫そう?」
「どうだろうな。俺たちから見て、多少は良くなってると思うが、本当のところは本人じゃないとなんとも言えないだろ。」
「そうですね……。私達以外の人には、まだ警戒心はあるかもしれないですね。」
「そうか……。」
私達がそう答えると、少し難しい顔をしてアルバートは考え込んでしまう。
そんなアルバートの様子に私とレイスは首を傾げる。
「……何かあるのか?また家族総出で出席しなきゃいけないパーティーがある、とか。」
「……相変わらず鋭いねレイスは。ただ少しハズレ。」
「というと?」
「実はこの間、父上と母上に数人の貴族から、俺と歳の近い貴族の令息、令嬢を何人か集めてガーデンパーティーみたいなものを催したらどうか、っていう提案があってね。」
「ガーデンパーティー…ですか?」
「そう。「王太子殿下に同世代との交流を増やしてみてはどうか」何て最もらしいことを言ってたみたいだけど……。ようは自分達の息子や娘をどうにかして、俺に近づけたいみたいでね。……俺としては気が乗らないのだけど。」
「それじゃあ、断れ。」
「簡単に言ってくれるな、レイス。この話を持って来た貴族の中に侯爵家も含まれているから、無下にはできないんだよ。」
そう言うと苦笑いを浮かべながらアルバートはため息を吐く。話を聞いただけでも面倒くさそうな催し物である。
この話の流れ、私の中に嫌な予感が走る。
それはレイスも同じだったらしく、眉間に皺を寄せて口を開く。
「まさかとは思うが、そこに俺達を呼ぶつもりか?」
「もちろんそのつもり。名目上は俺主催ということになるから、招待客は俺が決めていいらしい。……ただ、提案して来た貴族達の令息、令嬢は嫌でも招待しなきゃいけない雰囲気なんだけど。」
そう言いながらアルバートは紅茶が注がれているティーカップを口に運び、一口飲む。それをテーブルに戻し、私達に視線を向けるとアルバートは呆れたように笑う。
「……2人共、面倒くさいって顔に書いてあるよ。」
その言葉にハッとする。いけない、いけない。どうやら顔に本音が出てしまっていたようだ。
けれど面倒くさそうなのだから仕方がない。
「………拒否権は?」
「あるけど、できれば断らないで欲しいかな。」
その言葉を聞いて、諦めたようにレイスはため息を吐く。どうやらレイスは参加すると決めたらしい。
そんなレイスに苦笑した後、アルバートは小首を傾げ少し困ったように微笑みながら、私にも尋ねる。
「クロエはどうかな?来てくれる?」
(うっ…!だからイケメンのその表情は断りづらいんだって……)
「……わかりました、参加します。」
「本当?ありがとう、2人共。」
断りきれないことを察した私は早々に諦めて、パーティーへの参加を遠い目になりながら了承する。
私とレイスが参加することが本当に嬉しいのだろう、アルバートは満面の笑みだ。
そんなアルバートにレイスが少し不機嫌そうに尋ねる。
「それで?リオンの事を俺達に聞いたうえでこの話をしたってことは、リオンも招待するつもりだったのか?」
「まあね。個人的にリオンがどういう子か気になったし、2人の話を聞いて彼が人に慣れるいい機会かなとも思ったんだ。」
「なるほど。確かにそういう機会があたっほうがいいのかもしれないですね。けど……」
アルバートの言っている事にも一理ある。これから先、リオンが私達以外の人と関わらなきゃいけない場面は必ず出てくる。その為今から慣れておくというのはいい考えなのかもしれない。けれど、無理はさせたくない。
「もちろん、無理にとは言わないよ。リオンの意志が最優先だからね。」
私の考えている事がわかったのか、アルバートは微笑みながらそう言ってくれる。
「わかった、帰ったらリオンに聞いてみる。」
「ああ、そうしてくれると嬉しい。ああ、それから後日ちゃんとした招待状をアストレア家に送らせてもらうよ。……さて、この話はこれくらいにして他にも色々と話をしよう。」
「…….正直、今の話だけで私はお腹いっぱいです。」
肩をすくめてそう返せば、アルバートはクスクスと笑う。
「まあまあ、そう言わずに。……というか、クロエ。さっきから思ってたんだけど、いつまで俺に対して敬語なの?」
(また、この王子様はとんでもないことを……)
アルバートの質問に思わず頭を抱える。
アルバートと呼び捨てているだけでも気が引けるのに、タメ口で話せと言ってくるとは思いもしなかった。
「アルバート呼びだけで勘弁してください!流石に一国の王子にタメ口は、私にはできません!」
そう必死に告げれば、アルバートはまた笑い始める。隣にいるレイスも若干笑っている。どうやら2人して私の反応を見て楽しんでいるらしい。
「揶揄ってます?」
「揶揄ってるわけじゃないよ、砕けた口調で話をして欲しいのは本心。ただクロエの反応が可愛くて。ふふふ。」
そう言いながらまだ笑い続けるアルバート。
そんな彼に思わずため息が出る。
「ごめんごめん。でも気が向いたら敬語なしで話して欲しいな。」
「……考えておきます。」
私が少し拗ねながらそう答えれば、また2人は笑う。
その後もしばらく他愛のない話をして、私達3人だけのお茶会は終了した。
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