兄様、姉様
リオンが私達と朝食を一緒に食べれるようになって、数日がたった。今では朝食以外にも夕食やティータイムなども一緒にできるくらいまで慣れてきた。
それに私達との会話も増えて、それほど緊張もしなくなったみたいで安心している。
「リオン、だいぶ慣れてきたね。」
「そうだな。これもクロエがきっかけを作ったからだな。さすが。」
「そんな事ないよ。リオンの勇気とお父様、お母様、レイスの優しさのおかげ。」
夕食後、私は自室でレイスと紅茶を飲みながらそんな会話を交わす。
こうして夜レイスと2人で話すのは日課になっている。前世での話やマジスクの話など、気軽に話が出来るこの時間がとても心地いい。
「そろそろ、寝る時間だな。」
「本当だ。時間経つのはや。」
時計に目を向ければ、いい時間だ。レイスと話をしていると、あっという間に時間が過ぎる。
「それじゃあ、俺は部屋に戻っーー」
そう言いながらレイスがソファから立ち上がった時、部屋をノックする音が聞こえた。
「?どうぞ?」
こんな時間に誰だろう?と思いながらも入室の許可を出す。
そーっと開いたドアから顔を覗かせたのはリオンだった。
「リオン?」
「え?あ、レイス様……?」
レイスもいると思っていなかったのか、驚いた表情のリオン。
そんなリオンに何かあったのかと思い、優しく声をかける。
「リオン?どうしたの?」
私の問いかけに、ハッと我に返ったリオンは少し遠慮がちに小さな声で話し出す。
「あ、あの、今日は……その、また一緒に寝てほしくて。」
「また、眠れない?」
そう聞けば、小さくコクリと頷くリオン。
「いいよ。一緒に寝よう。」
そんな私とリオンの会話を黙って聞いていたレイスが、突然口を開く。
「俺も今日はここで寝る。」
その言葉に私とリオンは目を丸くしてレイスを見る。レイスはいつも通り無表情だ。
「いや、突然すぎでしょ。」
「ダメか?」
「いや、別にいいけど……。」
「じゃあ、決定な。」
そう言うと、レイスはリオンに向かって話しかける。リオンは驚きすぎて固まっている。
「リオンもいいか?俺も一緒に寝て。」
「……!も、もちろん、です。レイス様。」
話しかけられて我に返ったリオンは、戸惑いながらも了承する。その答えにレイスは満足そうに頷いた。
寝る支度を済ませて、3人寝てもまだまだ広いベッドへみんなで横になる。
リオンを真ん中にして、左にレイス、右に私の並びだ。若干、リオンは緊張気味だ。
「…….1つ、ずっと気になってたことがあるんだけど。」
レイスが私とリオンの方を向きながら、静かな声で突然そんな事を言い出す。
「なに?」
「……なんでしょうか?」
「リオン、なんで俺達のこと「レイス様」「クロエ様」って呼んでるんだ?」
そう尋ねられたリオンはビクッと肩を震わせる。
「ご、めんなさーー」
「いや、怒ってるんじゃなくて。」
「そうそう、リオン。レイスは怒ってないよ。」
「……え?それじゃあ……?」
不安そうに私とレイスの顔を交互に見るリオン。そんなリオンの頭をレイスはそっと撫でる。
「リオンは俺達の弟なんだから、俺達の呼び方は「兄さん」「姉さん」じゃないか?」
「あー、それ私も思ってた。クロエ様、とか他人みたいだなって。」
「え?」
そんな事を言われると思っていなかったのか、リオンは驚いた表情で私達の顔を見る、しかしその後視線をずらして黙ってしまう。
そんな様子のリオンに、レイスと私は優しく声をかける。
「嫌ならいいんだ。」
「そうそう、無理に呼んでとは言わないよ。リオンが呼びやすいように呼んでくれればいいから。」
そう言うと、リオンは視線を外したまま首を横にフルフルと振る。
そして泣きそうな声で話し始める。
「……ぼ、僕が、僕なんかが、お2人をそう、呼んでも、いいんですか?」
その言葉に、今度は私とレイスが驚く。思わず2人で顔を見合わせて、その後リオンへと視線を向ける。
「当たり前だよ、リオンは私達の大切な弟だもん。むしろ、そう呼んでほしい。」
「……なんでそんな風に思うんだ?」
そうレイスに問いかけられたリオンはゆっくりと体を起こし、私とレイスの方へ向く。その目には涙が溜まっている。
私とレイスも慌てて体を起こし、何かを話そうとしているリオンの言葉を待つ。
「……だって、こんな、見た目の気持ちの悪い僕が、お2人を……。クロエ様は、呪いじゃないって言ってくれた、けど、でも、やっぱりみんなと、違う、ぼ、くは、お2人の弟に、相応しく、ない……」
そう、言いながらリオンは涙をぼろぼろと零す。私はそんなリオンの涙を前の時と同じように、服の袖で優しく拭う。レイスは落ち着かせるようにリオンの背中をさすっている。
「……リオン、誰が気持ち悪いなんて言ったか知らないけど、私達はもちろんお父様とお母様、この屋敷の人たちは全員そんな事を思ってないよ。」
「ああ。むしろ初めて見た時、雪のように白い綺麗な髪だと思っていた。」
「私も。天使みたいに綺麗な子だなって思ってたよ。」
私達の言葉にリオンは驚いたようで一瞬涙が止まるが、また不安そうに顔を歪める。
「でも、髪以外にも、僕は、目の色が……。」
「とても綺麗だよ?それに私達とお揃い。」
「……え?」
何のことかわかっていない、リオンは首を傾げて私達の顔を見る。
「右が私の目と同じで、」
「左が俺の目と同じ色。お揃いだろ?」
私とレイスは自分達の瞳を指差しながら、リオンに笑かける。リオンはその言葉を聞いて、また涙を浮かべ始める。
「私達とお揃いは嫌?」
冗談混じりにそう問い掛ければ、リオンは勢いよく首を横に振る。
「う、れしい、です……!」
そう答えた瞬間、リオンは声を上げて泣き出した。そんなリオンを抱きしめて落ち着かせるよう背中をさする。レイスは優しくリオンの頭を撫でている。
暫くしてリオンが落ち着いたようなので、抱きしめていた体を離す。
「落ち着いた?」
「……はい。」
リオンは自分の服の袖で涙を拭いながら頷いた。その顔はどこか付き物が落ちたようだった。そんなリオンの様子を見てレイスと2人、安堵する。
「それじゃあ、そろそろ寝るか。もう遅い。」
レイスの一言で、改めて3人仲良くベッドへと横になる。
すると、リオンが小さな声で私達に話しかける。
「……僕はアストレアの、皆さんの、家族にちゃんとなれますか?」
「なれる。というか、もうなってる。」
「……血が繋がってなくても?」
「そんな事を言ったら、私も血は繋がってないよ。リオンと同じ養子だからね。」
「そうなのですか?」
私が養子という事に驚いたのか、リオンは目を丸くして私を見つめる。
「うん。だけどみんなも私も家族だと思ってるよ。血の繋がりは関係ないんじゃないかな。」
「……そう、ですね。」
そう答えれば、リオンは少し嬉しそうに呟いた。
「そうそう、だからリオンも気軽に私とレイスを「お姉ちゃん」とか「お兄ちゃん」って呼んでね。」
「気が向いたらでいいからな。」
そう言って私とレイスが寝ようとした時、リオンが小さな声で私達に話しかけてくる。
「……手を繋いで寝てもいいですか?……兄様、姉様。」
そう呼ばれた事に驚いてリオンの顔を見れば、少し照れたような表情でこちらを見つめていた。私とレイスはお互い顔を見合わせて、思わず笑ってしまう。
「「もちろん。」」
レイスと声を揃え、リオンの可愛らしいお願いに応える。手を握ればリオンは嬉しそうに微笑んだ。
それぞれお互いにおやすみと声を掛け合い、私達は仲良く手を繋いで眠りに落ちた。
読んでいただいき、ありがとうございました。
ぜひブックマーク、下の評価をよろしくお願いします!
していただけると、とても嬉しいです。




