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期待

次の日の朝。

私はダイニングルームへ行く前にリオンの部屋へと向かい、扉を軽くノックして声をかける。


「リオン、支度できた?」


暫くすると、そーっと扉が開き中からリオンが顔を出す。その顔は少し強張っている。


「あ、あの、ぼく、やっぱり……。」


なかなか部屋の外へ出られないでいるリオンの手をとり、優しく声をかける。


「大丈夫。私がついてる。」


そう微笑みながら言う私の顔をじっと見つめ、リオンは意を決した様に部屋の外へ一歩踏み出した。


リオンと手を繋ぎ食堂までの廊下を歩く。

使用人さん達とすれ違うたび、リオンはビクッと肩を震わせ、私の手をギュッと握り締めてくる。その度に「大丈夫だよ。」と声をかけ、手を優しく握り返した。


「到着。」


何とかダイニングルームの前までたどり着き、リオンへ尋ねる。


「……リオン心の準備はいい?」


リオンは黙って頷く。それが合図かのようにダイニングルームの扉が開かれた。

しっかりとリオンの手を握り、ダイニングルームへと足を踏み入れる。


「おはよう、クロエ。」


ダイニングルームにはまだレイスしか来ていないようだった。


「おはよう、レイス。」

「……それと」


レイスはそう言いながら軽くしゃがむと、私の背後に隠れて様子を窺っているリオンに話しかける。


「リオンもおはよう。」


突然話しかけられたリオンは、ビクッと肩を震わせ恐る恐る口を開く。


「あ、あの……そ、の……」

「前に見た時より顔色がよくて安心した。」


うまく言葉が出てこないのか、喋りかけてはまた口を閉ざし俯いてしまうリオンに、レイスはいつもの無表情を少し、本当に少しだけ和らげ言葉をかける。


「……レイス、もう少し笑顔で話しかけられない?」

「コレでも俺なりに努力してる。」

「確かにいつもより表情柔らかいけど、たぶん私にしかわからないよソレ。」

「……そうか?」


そんな私達のやりとりを見てレイスに対して少し警戒心を解いたのか、リオンが俯いていた顔を少し上げレイスに話しかける。


「お、おはよう、ございます……レイス様。」

「うん、おはよう。」


そう改めてリオンに挨拶をしたレイスはゆっくりと立ち上がると、リオンの頭にスッと手を伸ばす。その瞬間リオンはビクッと肩を震わせ目をギュッとつぶる。


「……悪い。頭を撫でられるのは嫌だったか?」


その様子に手を引っ込めたレイスに、リオンはハッとした表情で慌てて首を横に振る。


「あ、の、違くて……叩かれると、思ってしまって……ごめん、なさい……。」


そう俯きながら答えるリオン。そんなリオンにレイスはゆっくりと手を伸ばし、優しく頭を撫でる。


「謝らなくていい。むしろ怖がらせた俺が悪い。すまなかった。」


その言葉を聞いてリオンは俯いていた顔を上げレイスを見つめる。


「クロエからも聞いていると思うが、ここにはリオンを傷つける奴は誰もいない。怖がる必要は無いんだ。それに、リオンはもうアストレア家の人間。俺とクロエの弟だ。何かあれば俺が、俺達が守る。」

「うん。そうだね。可愛い弟を守るのは兄と姉の役目だよね。」


私はレイスの言葉に同意して、頷く。

そんな事を言われると思っていなかったのか、驚いた表情で私達の顔を交互にに見つめるリオン。


そんな時、ダイニングルームの扉が開きお父様とお母様が入ってくる。


「おはよう、レイス、クロエ。」

「おはよう、2人とも。……おや?」

「まあ!リオン!」


私とレイスに挨拶をした2人は、私の背後に隠れているリオンを見つけ嬉しそうに顔を綻ばせる。

しかし反対にリオンは、先程レイスと顔を合わせた時よりも震えている。

そんなリオンを怖がらせないようにお父様とお母様は一定の距離を保ち、目線を合わせるようにしゃがむ。


「ごめんなさい。驚かせてしまったわね。リオンに会えた事が嬉しくて、つい大きい声を出してしまったわ。改めておはよう、リオン。」

「おはよう、リオン。顔が見れて安心したよ。」


そう優しい声でリオンに話しかけるお父様とお母様。けれど、リオンは震えたまま声すら出せない。

私はそんなリオンを落ち着かせるため、手を優しく握り声をかける。


「大丈夫。お父様もお母様も優しい人だよ。リオンを傷つけない。」


その言葉に少し安心したのか、リオンは私の背後から少し顔を覗かせ2人に挨拶を返す。


「……おはよう、ございます、クラウド様、クラリス様。」


リオンに挨拶を返してもらえた事が本当に嬉しかったのだろう。お父様とお母様は驚いた後、顔を見合わせ喜んでいる。


「あなた…!リオンが挨拶を返してくれたわ!私、嬉しくて嬉しくて……!」

「そうだねクラリス。……私も嬉しいよ。」


その2人の喜びように、私も何だか嬉しくなる。

挨拶を返しただけで、こんなに喜ばれると思ってもみなかったのだろう。リオンはそんな2人を見つめ、少し戸惑っているような表情だ。


「父様、母様。喜ぶのはその辺で。リオンが困ってますよ。」

「!ごめんなさい、私ったら。」

「あ、ああ、すまない。……さあ、みんな席に着いて。朝食を頂こう。」


レイスの一言で、お父様もお母様も我に返る。

お父様が少し照れながらも、気を取り直して私達を席へと促す。それぞれが自分の席に着き、朝食を取り始める。

隣のリオンを見れば緊張はしているものの、しっかりと朝食は食べられているみたいで安心する。それに食事中お父様やお母様、レイスと少しだけれど会話もできていた。


(よかった。まだお父様とお母様との距離は感じるけど、リオンも最初よりは警戒してない。……うん、いい感じ。)


きっと時間はかかるけれど、私達は仲の良い家族になれる。私は期待に胸を膨らませた。

読んでいただいき、ありがとうございました。

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