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心の傷

「まさか、今日リオンがアストレア家に来るとは。」

「ゲーム内ではいつ養子に迎え入れられたとか、語られてなかったしな。」


リオンとの顔合わせが終わった後、レイスと私は、レイスの自室へと集まっていた。

ソファに座り、近くにあったクッションを抱き寄せる。先程見たリオンの様子が辛そうで、思い出すだけで胸が痛くなる。


「……それに正直、あそこまでリオンの心の傷が深いとは思ってなかった。」

「心以外も相当傷ついてる。」

「……というと?」

「リオンの体全体から治癒魔法の気配がした。たぶん怪我もたくさんしてた筈だ。」


その言葉を聞いて余計に胸が苦しくなり、思わず抱き締めていたクッションに顔を埋める。

あんなに小さい子に何をしていたのか、正直想像するだけで苛立ちを覚える。


(許すまじ、バウアー家‼︎)


とは言っても、バウアー家に出来ることは何もない。何があったか詳しくは知らないが、事業に失敗しバウアー家は既にお取り潰しになったそうだ。なのでリオン以外のバウアー家全員、路頭にに迷っているらしい。ざまぁみろだ。


「リオンの今後については後で考えるとして、とりあえずここで1回リオンについてゲームの情報をまとめておかないか?」


レイスの言葉に賛成し、気を取り直してソファに座り直す。



マジスク内でのリオンの立ち位置は、所謂後輩ヤンデレキャラだ。

見た目はフードを目深に被り髪と瞳をとにかく隠していて、第一印象は1番謎なキャラだった。

ゲームの中でのリオンは、アストレア家に迎え入れられてからも馴染めず、心に傷を負ったまま成長する。そしてそのまま義理の兄レイスと同じ王都の魔法学園へと入学し、主人公と出会う。主人公の優しさに触れ、徐々に心を開いてやがて恋に落ちる。というのが、リオンルートの大まかなストーリーだ。


正直に言おう、ゲームをやっていた時1番ヤバイと思っていたのはリオンだ。

リオンの好感度が1番高いとき、他の攻略キャラに少しでも話しかけると即BAD END。1つ選択肢ミスっただけでBAD END。リオンルートに入ったら他の男の話をするだけでBAD END。とにかくBAD ENDが多かった。

しかも、ルートに入ると一気に主人公への執着心が強くなり、ヤンデレ度が急激に上がる。ストーリー読んでる時、何度背筋が凍った事か!


(いや、うん、主人公だけが彼の中での光というか、信じられるのは主人公だけだったのかもしれないけど!でもアレは怖かった!)


「クロエ、顔に出てる。」

「おっと、ごめんごめん。」

「でも気持ちはわかる。隣で見てて俺も引いた。リオンのシナリオ。」

「だよね!怖いよねアレ!」


とにかく、ゲーム内では本当にヤバイキャラだった。このまま私達がリオンに干渉しなければ、もしかしたらゲーム通りのリオンへと成長するかもしれない。

リオンに干渉するということは、自らゲームの設定を変えるということだ。本来であれば、積極的に自分からそんなことをするつもりは無かったのだが……。先程見たあのリオンを放っておくことなどできない。せっかく家族になったのだから。


「……心開いてくれるかな?」

「やってみるしかないけど、もしかしたら上手くいくかも。」

「本当?」

「ああ。だって今のアストレア家は、家族仲いいだろ?」


そうレイスに言われ、なんとなく彼が言いたい事がわかった気がした。


ゲーム内のアストレア家は家族の仲が良いとは言えなかった。母親のアイリスは心の病で部屋に引き篭もりがち、父親のクレイドは仕事ばかりで家族のことはほったらかし、義兄であるレイスは冷たい性格で、多分リオンの事も認めてなかったのではないかと思う。

これではどう足掻いても、リオンの心の傷は治らない。


しかし、この世界のアストレア家は家族仲は良好!両親も優しく、レイスと私をとっても大切にしてくれている。親バカと言ってもいいくらいだ。そして何より、レイスの中身が秋斗である事。秋斗も性格はクールだが、レイスよりは何倍も優しいし、リオンをちゃんと家族だと受け入れられる。というか、もう受け入れてるみたいだし。


「確かに、いける気がしてきた。」

「うん、俺も。」


リオンの心の傷を完全に治すことはできないかもしれない。けれど少しでも軽く出来るように、私達は努力しようと決意した。

読んでいただいき、ありがとうございました。

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