濡れたドレス
「あ、いた。レイス、クロエ。こんな隅にいたの?」
レイスと2人ソファで少し休んでいると、軽く手を振りながらアルバートがやって来た。
慌ててソファから立ち上がると、アルバートは少し困った顔で笑う。
「ああ、座っていてもよかったのに。……ところで、何かあった?」
その問いが何のことか分からず首を傾げる。
「それ。」
アルバートの指先が私のドレスへと向けられてようやく気づく。
(ドレス濡れたままだった!)
「コレはーー」
「どこぞの侯爵令嬢にかけられた。」
「へぇ……。」
誤魔化そうとしたのがバレたのだろう。レイスは私の言葉を遮り本当のことを簡潔に答える。
その言葉を聞いてアルバートの瞳がスッと細められる。
(そんな顔もできるんだ……。)
いつも優しい笑顔のアルバートからは想像できない冷たい表情だ。
けれどそんな表情はほんの一瞬で、今度は申し訳なさそうに私へと謝罪の言葉を口にする。
「すまない、クロエ。王家主催のパーティーで不快な思いをさせてしまったね。」
「いやいや、アルバートが謝ることではないです!それに私は気にしてませんから。」
「ありがとう、クロエ。やっぱり君は優しいね。」
アルバートに謝られた事に驚いて慌ててそう返せば、アルバートはふっと柔らかく微笑む。
どうやら、私が気にしていない事はわかってもらえたみたいだ。
「それにしても、レイスが黙って見逃すとはね。大切なクロエに手を出されたんだ、徹底的に相手を追い詰めると思ったけど?」
「クロエが気にしないって決めたんだ、だから俺も今回だけは目を瞑る事にした。」
「なるほどね。」
「次は無い。」
ホッとしたのも束の間、レイスとアルバートがそんな物騒な会話を始めるものだから慌てて話題を変える。
「と、ところで!アルバートは私達に何か用事があったのでは?」
「ああ、もうすぐダンスの時間だからクロエを誘いに来たのだけれど……。」
レイスとアルバートの視線が私のドレスへと向かう。
いくら私自身が気にしていないとは言え、濡れたままのドレスで踊ればアストレア家に泥を塗りかねない。
そんな私に気を遣ってアルバートは素晴らしい提案をしてくれる。
「2人は先に帰るといいよ。そのままだとクロエが風邪をひいてしまうかもしれないしね。」
「ああ、そうさせてもらう。」
(おっとー?コレは帰れる流れか?)
正直ダンスを踊る前に帰れるのは、私としては願ったり叶ったりだ。
思わず心の中でガッツポーズしてしまう。
けれど一応、お伺いはしないとね?
「え、いいの?大切なパーティーなのに…。」
「少し残念だけど、仕方ないよ。父上と母上には俺から伝えておく。君たちの両親はまだ帰れないだろうから、クロエとレイス用に馬車を用意させるよ。」
その言葉に甘え、私とレイスはパーティーの途中で公爵家へと帰ることとなった。
アルバートが用意してくれた馬車に乗り込み、遠ざかっていく王宮を窓越しに見つめる。
(いろいろあった1日だったな……。)
こうして、私は怒涛のアルバート誕生日パーティーを乗り切ったのだった。
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