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イケメンってずるい

レイスの登場にクスクスと笑っていた女の子達の顔が一瞬にして青ざめる。


「もう一度聞く。俺の妹に何をしているんだ?」


そのあまりに冷たい声音に、令嬢達は誰一人として口を開くことができない。

さっきまで強気で私に嫌味を言っていた侯爵令嬢も、今はただ震えているだけだ。


(マズイ。レイス、マジでキレる5秒前!)


彼女がした事は許せないが、ここでレイスがキレるのは避けたい。下手したら家同士の問題になるからだ。

なにせ今はアルバートの誕生日パーティー真っ只中、いくらこちらに非がないとはいえ大事にするのはマズイ。

私は慌ててレイスに話しかける。


「レ、レイス!ここまで探しに来てくれたの?」

「ああ、クロエが帰ってくるのが遅いから探してた。……で?何があった?」

「……いや?何も?」

「……ドレス濡れてるけど?何もないわけないだろ。」


レイスの視線は濡れた私のドレスへと向けられ、その後、グラスを持ったままの侯爵令嬢へと向けられる。その視線だけで人が殺せそうだ。


(いや、うん、もう勘付かれているだろうけど、ここは押し通そう。)


「いや、ほら、そのー……そう!彼女とぶつかっちゃって!その拍子でグラスの水が私のドレスにかかったんだよ!」

「…………はぁ、今回はそういう事にしておく。」


レイスは私の気持ちを察したのか、ため息をつきつつも怒りを収めてくれた。

その様子を見ていた令嬢達もホッとした表情になる。けれどそんな彼女達に向き直ったレイスは物凄い冷たい声で告げる。


「次は無いからな。」


その言葉にまたもや青くなる令嬢達。

そんな彼女達は放っておいて、さっさとこの場を離れなくては。

さっきから周りの視線が痛い。


「ほら、レイス。お父様とお母様の所へ行こう!……それでは皆様ご機嫌よう!」


そう彼女達に言い残し、レイスの手を掴み足速にその場を後にした。





「ここなら、目立たないよね…?」


私達はなるべく人のいないところを探し、ようやく見つけた大広間の隅に設置されていたソファへと落ち着いた。ここからなら彼女達の姿はもう見えない。

ホッと息をつく。


「はぁ、まさか本当にあんな風に絡まれるとは……。あははは……一気に疲れたぁ。」


ふっかふかのソファへと全体重を預け、先程のことを思い出だす。おもわず乾いた笑いが出てしまう。

ふと、私の横に腰を下ろしたレイスを見れば彼の視線は私の濡れたドレスへと向けられていた。


「悪い。俺がもう少し早くクロエを見つけていれば、こんな事にならなかったのにな。」

「レイスが謝ることじゃないでしょ?私が勝手に1人になってたんだし、それにこんな事は想定内。気にしてないよ。」


そう私が言ってもレイスはまだ納得がいかないみたいで、眉間に皺が寄っている。

そんなレイスの眉間の皺を伸ばすように優しく額に触れる。


「次はちゃんと守ってくれるんでしょ?」


軽く挑発するみたいに笑いながら言うと、レイスは少し驚いた様に一瞬目を見開く。けれどすぐにいつも通りの無表情に戻り、不意に私の髪を一房掬い上げそこにキスを落とす。


「ああ、今度は守る。」


口の端を僅かに上げながら真剣な眼差しでそう告げるレイスに、思わず固まってしまう。

そんな私を見て、レイスはいつもの無表情で問いかける。


「惚れた?」

「……わかんない。ドキッとはした。」

「ふーん、そっか。残念。」


そう言うとレイスは私の髪から手を離す。

残念と言ってる割には、口元が笑っている。


「……揶揄ったでしょ?」

「いや?本気で口説いたつもり。」

「…顔が笑ってる。」

「やっぱり一筋縄じゃいかないなと思って。」


肩を少しすくめながらそんな事を言っているが、私に向けられるレイスの顔はどこか優しげだ。他の人はなかなか見られないレアな顔だ。


(その顔を他の女の子達に見せてみ?卒倒するよ、多分。)


改めてレイスのイケメンさを感じて、そんな事を心の中で呟やいた。

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