思いもよらない相手
「さて、と……。そろそろお互いの親とかも心配していそうだし、大広間に戻ろうか?」
「ええ、そうね。………あの、1つお願いがあるのだけれど。」
「ん?なに?」
彼女は少し恥ずかしそうにしながら、けれど私をまっすぐ見て口を開く。
「私とお友達になってくださらないかしら…!」
「もちろん。喜んで。」
笑顔で返せば、彼女も花が開いた様な笑顔を返してくれた。
ふと、ここで大事なことに気づく。
(この子の名前聞いてなくない?)
今更すぎて若干聞くのも恥ずかしいが、友達の名前を知らないのも変だ。ここは思い切って聞くしかない。
「……あのさ、ものすごい今更なんだけど自己紹介でもしない?」
「え?……ああ!ふふふ、そうね。私達ったらお互い名乗りもしていませんでしたわ。」
彼女も私の言葉で気づいたらしく、少し恥ずかしそうに笑う。
友達になってから自己紹介というのも、何とも不思議な感じだ。
「では、改めまして。クロエ・アストレアです。これからよろしく!」
「私は、サラ・レイニークですわ。こちらこそよろしくね、クロエ。」
お互い笑顔で自己紹介を終えたが、彼女の名前を聞いた私は心の中でめちゃくちゃ焦っていた。
(もしかしなくても、サラ・レイニークってあの?)
サラ・レイニーク
3大公爵家の1つ、レイニーク公爵家の令嬢。
マジスクの登場キャラで、アルバートルートに入るとライバルキャラとしてよく出てくるのだ。プライドが高く、キッツイ性格でアルバートと仲良くなる主人公をあの手この手でいじめてくる、所謂悪役令嬢である。
ハッピーエンド、ノーマルエンド共に最終的に主人公をいじめていたことを公の場で暴露され、断罪されるキャラだ。
(マジか……。マジか!知らなかったとはいえ、まさか悪役令嬢と友達になるとか、予想外すぎる!というかそうだよね、こんな美人さんがモブなわけないですよねー!なんで気づかなかったかなー、自分‼︎……いや、気づかねーわ!だってあんな気の強いキャラが、幼少期とはいえ悪口言われて1人で泣いてるとか思わないじゃん⁉︎え、てか性格全く違くない?成長過程に何があったらあんなキッツイ性格になんの?)
「クロエ?どうかしたの?」
「え?あ、何でもないよ。ちょっと考え事してただけ。」
いけないけない。現実逃避してる場合ではなかった。私は笑顔を保ったまま何事もないかの様に振る舞う。
しかしそんな私を心配そうにサラは見つめてくる。
「本当?具合とか悪いのではなくて?」
「本当本当!あー、ただ、サラがレイニーク公爵家の令嬢だと思わなくて……。私も今はアストレア公爵家の令嬢として扱ってもらえてるけど、庶民の出だしこんな気安い口調で話してて大丈夫かな、なんて思ったりして?」
と誤魔化すつもりで言った私の言葉を、サラは純粋に受け止めたらしく、私の手をぎゅっと握り真剣な瞳で私を見つめる。
「そんな事気にしませんわ!クロエは私の1番最初の大切なお友達ですもの、今のままでいてほしいわ。」
嘘偽りなく心からそう思っているというのが伝わってくる。
何というか純粋すぎて眩しいし、面と向かって大切な友達だと言われると何だか恥ずかしい。
「そ、そっか。ありがとう。」
気恥ずかしくて、思わず視線を逸らしてしまう私を見てサラは微笑む。
「ふふふ、今度はクロエが照れましたわ。」
その笑顔を見て改めて思う。
どうしてこんなに純粋で可愛い子があんなキッツイ性格になるんだろう。
ゲーム内では描かれなかった何かがあるのは間違いないが、何が原因なのかも分からない。
数年後、もしゲーム通りに進み主人公がアルバートと恋に堕ちれば、サラは断罪される。
(流石に、友達の断罪エンドは見たくないな……。)
色々と頭の中で考えてみるが、今の段階で出来る回避方法が思いつかない。
そんな事を考えていると、サラが少し慌てた様子で話しかけてくる。
「クロエ、流石に戻らないと。みんな心配してるはずだわ。」
忘れていた。今はパーティーの真っ最中だ。
色々と考えたい事はあるが今は置いておこう。
私達は急いで大広間へと戻った。
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