美少女
「さすが、王宮。中庭も立派。……てか広すぎでしょ。」
私は1人、王宮の中庭を歩いていた。
アルバートと友達になるという予想外のことがおきたが、いまのところは順調にパーティーは進んでいる。
けれど、アルバートと話をした後から私へと向けられる視線がさらに強くなり、私は大広間の隣にある中庭へ一時的に避難することにした。
(いやー穴が開くほど見られるとはあの事だね。何もしてなくても疲れる)
ぐっ、と緊張していた体を伸ばし、深呼吸を一つ。外の空気を吸うだけでも気分転換になる。
「さてと。少し散策でもしようかなー」
目的もなく中庭をぶらぶらと歩く。
パーティーの間外の空気を吸えるようにと、中庭も開放されていているのだが、今パーティーは最高潮だ。外に出ている人はいないだろう。
綺麗に剪定された薔薇のアーチを抜けると、これまた立派な噴水まである。
「中庭というかちょっとした公園だよ、これ。ーーん?」
若干中庭の規模の大きさに引いていると、子供の泣き声が微かに聞こえてきた。
よく見ると噴水の縁に女の子が座っている。
(迷子かな?いや、迷子になるような道じゃなかったしな……。とりあえず1人にするのは不安だし、泣いてる子は放っておけないよね)
驚かせないようにそっと近付く。私が近づいたのに気づいたのだろうか、ビクッと肩を震わせる少女。
なるべく警戒されないように、持ってきていたハンカチを差し出しながら優しく声をかける。
「大丈夫ですか?よかったらこれ使ってください。」
「え?」
少女は私の行動が予想外だったのか、俯いていた顔を上げて私の顔を恐る恐る見る。
(うっわ!すっごい美少女!)
顔を上げた少女の美しさに息を呑む。緩くウェーブがかったプラチナブロンドの長い髪に、涙が溜まっている切長な淡い空色の瞳。可愛らしいというより綺麗という言葉がよく似合う、一言で言えばクールビューティー。
思わず惚けているとおずおずと少女に声をかけられる。
「あ、あの……」
「あ、ああ!ごめんなさい!えっと、その、泣いているのが見えたから、声をかけてしまいました。あの、これ使ってください」
「……ありがとう、ございます」
改めて持っていたハンカチを差し出すと、少女はそっと受け取ってくれた。
(さて、これからどうしよう。ハンカチは受け取ってもらえたけど、知らない相手に根掘り葉掘り聞かれるのも嫌かな……?でも1人にはできないし……。)
私は少し思案し、とりあえず彼女に話を聞く事にした。
「隣、座っても良いですか?」
「え、ええ……どうぞ。」
少女の許可を得て私も噴水の縁へと腰をかける。
しばらくの沈黙。少女は私の渡したハンカチをボンヤリと眺めている。
どう話を切り出そう考えていると、少女がポツリと呟く。
「この猫、可愛らしいですわね。」
猫?何のことだろうと一瞬考えたが、彼女の視線の先にあった私のハンカチを見て刺繍の猫のことだと理解した。
「あー、それ。私が刺繍したんです。あまり上手くないでしょう?」
「そんなことありませんわ。とっても上手です。」
彼女はそう言うと微笑みながら刺繍の猫を指で優しくなぞる。うん、笑った顔も綺麗だ。
私は彼女が笑ってくれた事に安堵しつつ、他愛のない話から始めてみる事にした。
「猫、好きなんですか?」
「ええ。それに犬や小鳥も好きですわ。可愛らしくて、癒されます。」
「それ、すっごくわかります。」
それから暫くお互いの好きな物の話や趣味の話なんかで打ち解けた。お互い同い年ということも分かり、口調も崩れていく。
話をしてわかったが、彼女はとても可愛らしい。見た目クールな感じなのに性格は可愛らしいとか、ギャップ萌えだ。
盛り上がっていた話が一旦途切れたところで、さっき泣いてた事情を聞くならここしかないと、思い切って話を切り出す。
「……えっと、さっき泣いてた事だけど。パーティーで何か嫌なことでもあった?」
上手い話の切り出しかたが分からず、結局ストレートに聞いてしまった。
少しの間があり、彼女は俯きながらポツポツと話し始める。
「……私の見た目、いつも怒っているように見えて怖いって……だから……皆さん……私のこと……」
彼女の瞳にまた涙が溜まっていく。
慌てて彼女を落ち着かせて詳しい話を聞いてみることにした。
彼女の話によるとどうやら他の令嬢や子息達に避けられ、陰口や根も歯もない噂なんかを言われているらしい。しかもその要因が彼女の見た目だという。
たしかに彼女の顔立ちは黙って立っていると少し近寄り難い印象がある。切長の目が余計にそうさせているのかもしれない。
それが子供から見ると怒っているようにみえてしまうのだろう。
そして今日のパーティーでもたまたま自分のよくない話を聞いて、1人ここで泣いていたのだという。
話を聞いてて段々苛立ちが募る。こんな可愛い子を泣かせるなんて!
「……見る目ないね、その人達。」
私の言葉に彼女は、涙を浮かべていた瞳を丸くして驚いた表情を見せる。
「だってそうでしょう?貴女のことを何も知らないくせに見た目だけで判断してさ。本当は可愛い物好きで、甘い物が好きでとっても可愛い子なのに。」
「かわっ…!」
「あと、貴女の見た目が怖いだなんて誰が言ったか知らないけど、私にはとっても綺麗な女の子にしか見えないよ。思わず見惚れちゃうくらいにね。」
思ったことを全部いってから、徐々に冷静になっていく頭で「あれ、今の発言初対面のやつに言われたらキモくない?」と考え始め、焦り出す。恐る恐る彼女の方を見ると顔を真っ赤にして俯いていた。
(やってしまった!)
慌てて彼女に謝る。
「ご、ごめん!やっぱり気に触る事言った⁉︎」
「ち、違いますわ!そ、その、可愛いとか、綺麗だとか言われたことなくて……恥ずかしいだけよ」
照れていただけだと知り、内心ホッとして改めて彼女に向き直る。そして彼女の手にそっと自分の手を重ね、真っ直ぐ彼女を見て伝える。
「やっぱり貴女は可愛い人だと思うし、とっても美人さんだよ。そんな見た目だけで判断して、貴女を悪く言う人達なんて放っておけばいい。きっと貴女の魅力に気づく人は絶対にいるから。」
だから大丈夫、そう言って彼女の手を優しく握りしめた。
それでも彼女はまだ少し不安そうな顔をしている。
「そうかしら……。そうだと、いいのだけれど。」
「というか、貴女の魅力を知っている人はもうはここにいるんだけどね。」
「え?」
「私。私1人じゃ不安かもしれないけど、それでも今は1人でも理解してくれる人がいるって思えたら少しは心強いでしょ?」
「ふふふ、そうね。貴女が居たわ。ありがとう。」
2人で顔を見合わせて笑う。やはり、彼女は笑っている方がずっといいなと思った。
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