夕食
私を呼びに来たメイドさんに用意されていた高そうなドレスに着替えさせられると、ダイニングルームへと案内される。
扉を開くとすでに公爵様、クラリス様、レイスが揃っていて、テーブルの上には豪華な食事がたくさん並んでいる。
あまりの豪華さに思わず呆気に取られ入り口付近で固まってしまう。
「まあまあまあ!クロエそのドレスとっても似合っているわ!私の目に狂いは無かったわね!」
そんな私にクラリス様は笑顔で駆け寄ると、そのままぎゅーっと抱きしめられる。どうやら、このドレスはクラリス様が選んでくれたらしい。
しかし、抱きしめられるのはいいが少し苦しい。
「あ、ありがとうございます。」
「母様、そろそろクロエを離してあげてください。父様に紹介もまだですし。」
またもやナイスタイミングでレイスから助け舟が出され、クラリス様から解放される。
クラリス様は少し照れた様にはにかむ。
「そうね、私ったらついクロエが可愛くって。」
そんなやりとりをしていると、1人の優しそうな男性が近づいてくる。きっと彼がこの家の主人、アストレア公爵だろう。
公爵様は私の側まで来ると、目線を合わせるように屈み微笑む。
「はじめまして、クロエ。私はクレイド・アストレア。今日から君の父親になる者だ、よろしく。」
低い落ち着いた声と整った顔、さすがレイスの父親だ。彼もゲームの中ではほとんど登場しない立ち絵も無いキャラだったので、どんな人か想像するしかなかったが、私が想像していたよりもめちゃくちゃイケメンである。
「はじめまして、クロエです。こちらこそよろしくお願いします。」
貴族の作法などわからない私はとりあえず深々と頭を下げ、自己紹介をする。
そんな私の頭を軽く撫で、公爵様は優しく言葉をかけてくれる。
「そんな畏まらなくていいよ。今日から家族になるのだから。さあ、料理が冷めないうちに食べようか。」
顔を上げると、公爵様にクラリス様、それにレイスが優しく微笑んで私を見つめる。
一瞬亡くなった両親の面影が重なり、心がふわっと暖かくなる気がした。
公爵家の養子、しかもゲームの攻略対象の妹になるなど面倒くさい事になると気落ちしていたが、こんな優しそうな人達と家族になれるのは、なんだか嬉しくもなってきた。
その後みんなで夕食を食べ、いろいろな話をして時間が過ぎていった。公爵様とクラリス様の人柄のおかげか2人と結構打ち解けられ気がする。
自室へと戻る廊下をレイスと2人歩く。
あの告白で気まずくなるかと思ったが、そんな事もなく話が弾み少し安心する。
広い屋敷だが話をしながらだと、あっという間に自室の前へと着いてしまう。
「今日はお疲れ様。」
「ホントだよ。緊張したぁ。」
はぁ、と思わずため息が漏れる。
今日は嫌でもぐっすり眠れそうだ。
「貴族の仲間入りってことは、覚える事も多そうだよね。マナーとか立ち振る舞いとか。」
「俺もフォローするし。蓮は……いやクロエならすぐ覚える。大丈夫。」
「あはは。やっぱり、2人きりだと前世の名前で呼んじゃうよね。私も気をつけなくちゃ。」
そう、今の私達はもう『蓮』と『秋斗』ではなく『クロエ』と『レイス』なのだ。前世の名前で呼びあっていたら周囲に変に思われてしまう。
前世の記憶があることは2人だけの秘密だ。
「そろそろ俺も部屋に戻るよ。おやすみ、クロエ」
「おやすみ、レイス」
挨拶を交わすと、レイスは自室である隣の部屋へと消えていった。
私も自室へ入り、ソファへと腰を下ろした。
(怒涛の1日だった……)
いろいろありすぎて、笑えてきてしまう。
公爵家の人間になった事で、ゲームの登場人物達と関わる可能性は高くなった。
ただのモブではきっといられない。
私が望んでいた『普通の生活』とはだいぶ違う方向に行ってしまったが、こうなってしまった以上仕方がない。
「よし!」
両頬を軽く叩いて気合いを入れる。
何かあればその都度対処していけばいい。
レイスもいるし、きっとなんとかなるだろう。
若干ヤケクソな感じもするが、正直そう思わないとやっていられない。
こうして公爵家での生活が始まった。
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