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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【生配信】婚約者が裏切り者の様なので断罪してみた!

作者: チィタ

この日、私の婚約者は炎上した。


------------------


「よくも騙してくれたな!聖女メリッサ…いや、魔女メリッサ!!」


ここは、聖教会の総本部・大聖堂。

今日この場では、国の未来を左右する重大な儀式、神託式が執り行われていた。

聖教会教皇をはじめとする教会のトップは勿論、政治にも関わることなので、王族とその側近達も集い緊張の面持ちで儀式に参加していた。


この国は今、北からの魔物の侵攻を受けている。

始まりは突然だった。北の小国に突如として魔物の大群が現れ、応戦の準備をする暇もなく小国は滅びた。

そして、魔物の大群はそのまま南下して、この国に向かって来ていた。必死の抵抗により、国境手前で魔物は停滞し一月半がたっていたがこのままでは、こちらが消耗していくだけなのは明白であり他に手が無い為、神託に頼る他なかった。


神への祝詞を兼ねた賛美歌が終わり、聖女である私が神像の前まで行き跪いて祈る。しばらくして、立ち上がりその場に居る者全てに聴こえるように告げる。


「北西のヤーヌ領から民を避難させなさい。あそこは間もなく悪しき者達によって落とされます。」


静かだった聖堂が急に騒がしくなった。

ヤーヌ領は、この国一番の穀倉地帯で小麦生産の四割を担っている。ここを捨てれば後々民が飢えることになる。

ここに居る者全てが即座にそれを理解したが、神託である以上反論できる者は居ない………と思っていたが。


「何が神託だ!」


一人の青年が声を荒らげた。


「よくも騙してくれたな!聖女メリッサ…いや、魔女メリッサ!」

「…どういう意味でしょうか?ウーノ殿下。」


彼はこの国の第一王子であり、メリッサの婚約者のウーノだ。

メリッサが眉間に皺を寄せて睨みつけると、手に持っていた箱をメリッサに向けて喋り出した。


「見よ国民達!この醜悪な顔を!この様な者が聖女なわけがない!」


司教の一人がウーノの持つ道具に気付き叫んだ。


「殿下!神聖な儀式を録影器で撮影しておられるのですか!?」

「撮影だけではない、今国中の魔晶盤で民たちがこの儀式を見せている。」

「なっ…!?」


録影器は映像記録魔道具で、魔晶盤は各都市の広場などに設置された国王のスピーチや緊急の報せを映像で映す道具だ。

本来、この神託式は神聖な儀式であり、更に機密情報も関係することがあるので、ごく限られた者しか参加が許されないし、撮影して国中に放送するなど言語道断である。


「私のしていることが許されざることなのは承知しています。その罰は後で幾らでも受けるつもりです。だがしかし!この女の悪事を私は許せません!国民の」

「殿下、先程から何を仰っているのですか?」

「黙れ魔女!聖女と偽り私の婚約者に就くだけでなく、魔物に通じてこの国を滅ぼそうとするとは!!」


 ウーノの告発に聖堂に居た者は勿論、放送を見ていた国民にも衝撃が走った。


「本当に、何を仰っ」

「とぼけるな!この間のパーティーで魔物で魔物が暴れたのを忘れたのか!」

「その事件と今回のこと、何の関係が?」


 3か月前、国王の誕生パーティーで突如、空から翼の生えた魔物が襲来するという事件があった。パーティー会場は王宮の庭園で行われており、死者は出なかった者の多数の重傷者が出た痛ましい事件だった。


「あの時、お前も私の婚約者として参加していたが、すぐに教会の仕事があるからと帰りそのあとに魔物が襲ってきた。お前は魔物の襲来を知っていた、だからすぐにあの場を離れたのではないか?」

「…ハァ、ただの偶然です。あの日、教会で職務があったのは教皇様が知っているはずです。パーティーのケガ人の治療で急遽、中止にはなりましたが…。」


 教皇を見るとメリッサの証言を頷いて肯定した。


「だが、魔物が滅ぼしたあの国は直前までお前が訪問していただろ!誕生パーティーの件といい、あの国の件といい、お前が立ち去った直後に魔物が現れるなんておかしいだろっ!」

「…それも偶然です。それに、私の去った直後といいますが魔物から命からがら逃げて伝令を伝えた兵士によりますと、魔物が現れたのはあの国を出て3日後のことです。私が去った半刻後に襲来があったパーティーと同じだというには時間が違いすぎています。」


「くっ…、だがお前が教会近くの森で蛇に話しかけた後、森へ放したという目撃情報があるぞ!お前が魔女だから蛇と会話でき、その蛇を通じて我が国の情報を魔物に知らせていたのだろう!」

「…それはこの子のことですか?」


 メリッサが尋ねると彼女の袖から、真っ赤な眼の白蛇が現れた。


「この子はアスクレピオ、私の使い魔で私と同じ癒しの力が使える神の使いです。この子の餌はネズミなどの小動物ですが教会に持ち込むことが出来ないので、近くの森で自分で狩ってきてもらっているのです。」


 メリッサに悉く論破され、ウーノは苦虫を嚙み潰したような表情をする。だが、負けじと告発を続けようとする。


「まだ、これだじけじゃ…」

「いい加減にしたらどうですか!往生際が悪いですぞ!」


 しかし、それを遮ったのはロック公爵だった。

 彼はこの国で王族に次ぐ権力者であり聖教会の敬虔な信者であり、そして神託にあったヤーヌ領の領主であった。


「ロック公爵、よいのか!?このままでは貴方の領地は…。」

「私は聖教会信者です。領民を守るための神託であれば断る理由はございません。それより殿下、貴方のことです。機密情報も取り扱う神託式を無断で国中に放送し、さらには政治欠かせない聖女を魔女呼ばわりをしてろくな証拠もなく断罪をしようとした。これは立派な国家反逆罪です。陛下、ご指示を。」

「‼…待ってください父上っ!」


 参加者からは「王子としてあるまじき行為だ!」「神託を何だと思っている!」「教会の敵だ!」と大ブーイングが起こり、放送を見ていた国民もみな各地で声を荒げて、王子を非難した。

 一部始終を見ていた国王は、控えていた兵にウーノの捕縛を命じる。


「触るなっ!こんなの私は認めないっ!」


 腰に携えて剣を抜き一心不乱に振り回すウーノ。もはや、この状況を国民に見られているのを忘れていた。


「こうなったら、これを使うしか…。」


 ウーノは懐から指輪を一つ取り出した。指輪は飾り気のない銀色の指輪だがそこに填められた石は禍々しいオーラを放っていた。そしてウーノが指輪を填めると彼の体に変化が起きた。


「ウっウゥ…ヴゥ…、ヴォォォォーーーーー‼‼‼」


 ウーノの体は筋肉でみるみるうちに膨れ上がり、手足には金属を連想させる光沢の長い爪、口は鋭い牙が剝き出しで隙間から荒い吐息が漏れる。


「王子が魔物に…!?」


 聖堂に居た人間は逃げ出そうとしてパニックとなる。ウーノを捕縛しようとしていた兵士は、驚きつつも、魔物となったウーノを包囲していた。


「兵士の皆様!殿下がそこからそのまま動かない様にしてください!殿下はもう理性をなくしています。気の毒ですが、私がここで楽にしてあげましょう…。」


 兵士はその言葉の意味を理解し、逃がさないようにウーノとの距離をジリジリと詰めていく。


『神よ、今ここで悪しき魔を聖なる炎で焼き尽くし給え‼』


 メリッサが唱えると、ウーノの足元に陣が描かれそして黄金の炎がウーノを包んだ。


「ヴォォォォォーーー!オ…ォ…ォ……」


 断末魔が途絶え、黄金の炎が次第に小さくなって消えた。残ったのは炎上した跡のみだった。


-----------------------------------------------


 そして、事件の真相としてあるうわさが立った。

『魔物に通じていたのはウーノ殿下で、神託を授かる聖女が邪魔になり罪を擦り付けようと失敗し、逃げるために魔物となって暴れた。』と、しかしその噂は迫っている魔物の大群の危機感によって忘れられてしまった。


-----------------------------------------------


「うっ…、ここは…?」


 ウーノが目を覚ますと石の壁に囲まれた檻の中に居た。部屋を中央で金属の格子が隔てており、格子の向こうに出入口らしき扉がある。

 自分が何故檻の中に居るのかを考え、思い出した。


「そうだ…、私はあの魔女を裁こうとして失敗した…。」


 奴の断罪の証拠はまだあったが阻止され、捕らえられそうになりメリッサを断罪する際に抵抗してきたら使おうとしていた指輪を使う羽目になった。


「しかし、何だったんだあの指輪…。あれは身体強化の指輪だと聞いていたぞ。」


 メリッサの悪事を調べているときに偶然手に入れたあの指輪、怪しい商人ではあったが指輪の持つ魔力は本物だった為、最終手段として購入したがまさかあんなことになるとは…。

 魔物になっている間、破壊衝動にのまれてしまったが記憶はある。そして、炎に包まれる直前の彼女の顔を…。

 急に扉が開いた。


「あら殿下、目が覚めたのですね。」

「貴様…!」


 入ってきたのは、メリッサだった。彼女は聖女の時には見せない邪悪な笑みでウーノを見つめていた。


「まぁまぁ、落ち着いてくださいな。聞きたいことは沢山あるでしょうが、順に話しましょう…。まずはここは私たちの拠点。詳しい場所は言えないけど、そこの地下牢よ。そして何故殿下がここにいるかというと、あの時炎の壁でカモフラージュして転送魔法でここに送ったのよ。最後に何故こんなことをしたかというと、答え合わせをしようと思いまして。といっても実際、あの日殿下が言ったことすべて正解なんですけど…。」

「やっぱりか…。」

「そう、パーティーの襲撃も北の国が滅ぼされたのも私が召喚の魔法陣を設置したから。北の国の魔法陣は大規模なものだったから発動に時間が掛かったけど寧ろアリバイ作れたからラッキーだったわ。」


 ウーノの予想は正しかった。しかし、それを証明できなかったのが口惜しい。


「貴方があの日、バカやってくれたお陰で私の国民の支持はドンドン上がっていく。少し変なうごっきをしても気にされないから密通が楽になったわ。」

「お前は何が目的だ!国民を危険に晒してまで名声を得たいのか!?」

「名声?フフッ残念だけどそれは違うわ。だけど貴方に教えられないわ。だって貴方はここで死ぬんだから…。」


 そういうと、彼女の袖から使い魔のアスクレピオが這い出てきてシュルシュルと檻に入ってきた。


「なっ…!?」


 そして、アスクレピオはウーノの目の前に来ると次第にみるみるうちに巨大化していき、白い鱗がボロボロと剥がれ落ち、下から黒く光る鱗が見えてきた。

 ウーノは逃げようとするが狭い檻の中、逃げ場などなく丸太のような体に巻き付かれてしまう。アスクレピオの口がクパァと開きウーノに迫る。ウーノは抵抗できずにただ目の前の暗闇を見つめるしかできなかった。


-----------------------------------------------


「もう、終わりましたかな?」


 牢の部屋から出てきたメリッサに声を掛けてきたのは、ロック公爵だった。


「えぇ、殿下のおかげでアスクレピオは満腹よ。とてもご機嫌だわ。」


 チロチロと赤い舌で舐めてくる使い魔に笑顔のメリッサ。少し戯れてから公爵に尋ねる。


「それで状況はどうかしら?」

「つつがなく。現在、王国軍・教会軍は北へ向かい王都の兵力は手薄です。」

「そう。魔法陣も改良が済んですぐに召喚ができるようになったし、そろそろ始めましょうか…。」


そして、メリッサは王国を恐怖に渦に落とす為、詠唱を始めるのであった。


                                    Fin

生配信するバカ王子をざまぁする話を書こうとしたはずが、思いもよらぬ方向に…。

タイトル雰囲気詐欺とか言わないで…(泣)

騙されてくれたらうれしいです。

ご精読ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何のためにメリッサやロック公爵は王子を殺したり、国を滅ぼそうとしているのかを明らかにしてほしかったです。
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