幸福を呼ぶフクロウ ーエピローグー
ところで、と突然アリーが切り出し、彼はこの村に来た本来の目的を未だ達成してないことについて、早急な対応を求めた。
「ノームさん、早くフクロウの捕獲用網を作ってくれませんか?」
「……急かすなよ。作るの大変なんだよ」
「現実問題、死人が出ちゃてるんです。また魔王の置き土産だ、なんて噂がたったら、まずいですよ」
「実際そうだろ!クテイリアの野郎が逃して、そのまま放置したんだ。立派な置き土産だろ。お前も日記を見ただろ?」
クテイリアとよばれる人物の日記には、この村でのことが書いてあった。
『●●●●年6月1日。涼しい風が気持ちいいこの村は、ぶどう酒の名産地らしい。ゆとりのある人間が多そうだが、関係ない。悪意の塊みたいな人間は、本音で語らせれば、すぐ殺し合いになる。このフクロウを、その辺の木に停まらせておけば、その内、死人が出るだろう』
『●●●●年6月10日。最近、どうもイチャイチャしたり、結婚し始める人が増えた。発情期だろうか』
『●●●●年6月20日。なぜか夜になると村中の家から、ギシギシと音がする。どうも寝技を掛け合っているようだ。効果が現れたか?』
『●●●●年6月25日。ぶどう酒のテイスティングをしている間に、フクロウが逃げた。なぜノームは生き物にばかり『呪い』を与えるんだ。監視が面倒じゃないか。村の奴らも寝技をかけ合った後は、一緒にスヤスヤ寝ている。意味がわからない。今回の失敗は全部ノームのせいにしよう。そうしよう』
「あいつ、絶対バカだろ!しかも最後は人のせいにしやがった!というか俺にフクロウを譲ったのはお前だろ?アリー!なんであのフクロウは、まだ生きてるんだ?とっくに寿命が尽きてるはずだろ。『呪い』の痕跡を消すだけだと思っていたのに!」
ノームの『呪い』は、それを与えた生物が死んだ場合、その生物が朽ちた場所で残り続け、ものによっては継続して影響を及ぼすことがある。彼らはそれを回収しようとしていたのだ。
「いやー、実はあの頃、ジンクスというものにハマってまして。ある地方では、フクロウは幸福をもたらす存在と聞いたので、なるべく長命なフクロウを創ってみたんです。あなたに譲ったのは、単に友人に幸福が訪れますように、と願ってですね。……まさかこんな用途で使われるとは思いませんでした」
「え!そうなの?いや、すまん」
ノームは若干自分のせいなのかもしれない、と罪悪感を覚え始めていたが、よくよく思い直して叫ぶ。
「いや、違う!やっぱり全部クテイリアの奴が悪い!」