幸福を呼ぶフクロウ ープロローグー
ここはとても温暖で、風の通りがいい。
住む人たちはとても心穏やかで、余裕が感じられる。
周りには葡萄畑が広がり、ぶどう酒を名産品とするこの村では、村人が毎日ぶどう酒をあおっている。
ある日、そんな彼らの目にとんでもない光景が映る。
「なぁ、ミア。お前、大丈夫か?」
そう語りかけた男の足は震え、腰は引け、ゆっくりと近づく様は、明らかに恐怖を抱いていることがわかる。
それもそのはずである。目の前に居るのは夥しい血を服に被った、よく知る女性なのだから。
明らかに、怪我というレベルの血の量ではない。これほどの血が失われたなら正常ではないはずだ。
「ミア、その血、お前のか?怪我してるのか?」
男が血の主を聞く。男はその女性が猟師の娘であり、女性自身も狩猟をすることを知っていた。もしかしたら、動物の血かもしれない。
今まで、こんな血を浴びているところを見たことはないが、その可能性がある。そうであってほしい。
「この血は、……私のではないわ」
それを聞いて男は安堵する。やはり動物の血抜きの際にかかってしまったとか、そういう理由だろう。
「そ、そうか。それで」
「これは父さんの血」
男の話を遮ってその女性は言った。
「魔物が、父さんを殺したの」