第5話 うわき?
唐突な生物との出会いから数分。
俺には妖精という珍しい友達ができてしまったようだ。
「ずっとここに住んでるんだよ。ここ、おもちゃがいっぱいあって退屈しないね」
その妖精は、いつからか分からないがこの秘密基地を根城にしていたらしい。
ずっと使われないまま朽ちてくのは寂しいと思っていたが、まさか妖精に再利用されていたとは思わなかった。
しかし、話しているとどことなく記憶が刺激される。
容姿は全然違うのに、話し方とか言動とかが記憶の中の少女とよく重なるのだ。
そこで俺は、婚約者の女性から聞いたおとぎ話を思い出す。
「んん? どうかしたの? 人間さん」
「いや、何でもない。また来てもいいか?」
いや、そんな事あるはずがない。
「ホント? また誰かと遊べるのうれしいな。やったー」
くるくる飛び回る妖精はかわいらしい。
思わず頬が緩んだ。
俺は再会の約束をしてその場から去った。
その後も俺は、何度かその秘密基地にかよった。
それと同時にお見合い相手とも会いに行く。
なんだか自分がひどくいけない事をしているような気分になってくるのはなぜだろうか。
そんな日常の中。
お見合い相手が、自分の屋敷を抜け出す所に出くわした。
どうやら彼女の本質も、俺とよく似てやんちゃだったらしい。
「どこかお出かけになられるんですか? それだったら一緒に」
「見られたからには、生かしてはおけないわ。死んで」
「早まりすぎないでください!」
ちょうど生け垣から顔を出したところだったのが良くない。
俺は真っ赤になってプルプル震える彼女を眺めるのに、大変な思いをした。