第3話 妖精と人間
昔、俺が子供だった頃。
彼女に出会ったのは、秘密基地だった。
当時の俺は、地元にある自然にできた洞窟にこっそり遊びに行くのが趣味だった。
そこを秘密基地と名付けていたのだ。
当然周りにの人間からは怒られたけれど、俺はやめなかった。
だって、その洞窟には彼女がいたから(遠い昔の記憶のせいで美化がかかっているのか、彼女は妖精の様にかわいくて、とても愛らしかった)。
俺と彼女はすぐに仲良くなった、毎日のように遊ぶようになったけれど、ある時を境に彼女はその秘密基地にはこなくなってしまったのだ。
一体何があったんだろう。
お見合い相手からゴミ扱いされた俺だが、それからもめげずに交流を続けた。
彼女は呆れていたが、俺は真面目だった。
変わってしまったけれど、やっぱり俺は彼女が好きなのだ。
だから、その日も会いに行ったのだが、珍しく彼女の機嫌が良かったらしい。
いつもはあまり話しかけてこないのに、今日は違った。
「ねぇ、妖精って知ってる?」
「えっ、はい。妖精っておとぎ話に出てくるあれですよね」
「人間を攫って、悪戯をする妖精。妖精は、後で人間と入れ替わってしまうのよ」
「怖い話ですね。でも別に俺は嫌いな話じゃないですけど」
「そうなの?」
意外そうな顔をする彼女。
俺は幼い頃の思い出を語った。
これで、俺の事を思い出してくれれば、態度が軟化するのではないかと思ったが。
すると、彼女はなぜか沈んだ顔になった。
「人間って、面倒くさいわよね」
俺はその言葉にどう反応していいのか分からなくなってしまった。