終電
奴らが去った後の道路には無数のタイヤ痕が残っていたし、私の金網に押し付けられた拍子に切った腕の痛みが引いていなかったら、これは夢だって思っていたかもしれない。
でも、全ては現実。・・・何が原因なのかはイマイチよくわかんないけど。
「慶・・・、今の人たちって」
なんだったんだろうね、と、さっきからその場に立ち竦んでいる幼馴染に声をかけた、ら。
「・・・・・・っ!」
ガバッと振り向いた慶に抱きすくめられていた。
「け、い……?」
首筋に熱い息を、鼻先で擦られる感触を感じながら、視界の全てを占領しているTシャツに声をかけた。
「よかった……」
永遠とも思える時間が過ぎた後、呟くようにその男の唇が動いた。
その低い声の響きが、私の心のどこかに優しく触った。
「ありがと・・・・・・、大好き」
それは自然と口をついて出てきた。
彼もまた、ますます腕に力を込めて囁いた。
「オレも」
上を向いてクスッと笑う。
「昨日も言ったけど、見事にスルーされたからな。ハハッ、ざまあねぇ」
笑ったその顔は、いつもの慶だった。
「だだだって、わりとサラッと言ったから嘘なのかな…って思っちゃうじゃん!」
「悪ぃ悪ぃ」
「ホントに思ってるかお前〜〜」
「ハハハハハ・・・・」
笑い声が尻すぼみになったので、どうしたのかと見上げたら。
悲しそうな、切なそうな顔をした慶が頭のすぐ上にあった。
「でもさ、大学、出るまでは待っててくれないかな。迎えに行くから、どこへだって」
そう言って彼は寂しそうに笑った。
それってどういう・・・・・・?
多分そんな疑問が顔に表れていたんだと思う。
「親父の仕事の都合で、来週アメリカに行くんだ。そのまま大学も向こうで行くと思う」
「え・・・・・・・・・」
あまりの驚きに、上手く言葉が出てこない。
そんな優秀なんだ、親子揃って・・・。
私…ううん、待ってあげなきゃ。そんな待てる自信ないけど、声くらいは聞けるだろうから。
きっとその間中待っていられたら、この気持ちが流れの上での出まかせじゃなくって、ホンモノだってのが自分でも分かると思うから。
「…慶と離れるのはヤだけど、しょうがないもんね。・・・待つよ、4年くらい。待てるから」
それだけを、誓うように言って。
体を屈めて私の顔を覗き込んでいる慶に、その唇に口付けた。
「でもさ、来週まで、一緒に居ようよ」
ニコリと笑った顔が少しだけ、赤かった。
ま、私自身そんなに恋愛経験多い方では決して無いので、かなりの確率でワンパターンな物語になっちゃうんですよねー。ははっ
そこんとこ、分かって頂ければ幸いです。